第17話 魔王登場

N

優志

ラデク

サラー

魔王ゴディーヴァ

ヴィット

サクビー

サーシャ



N「空中に映し出されたスクリーンに、〝魔王ゴディーヴァ〟が姿を現した。



魔王ゴディーヴァ『聞けぃ、人間ども! ……ワシこそが魔族の王の中の王、〝ゴディーヴァ〟である。我々の目的は、魔族の復活と繁栄である。全ての世界を支配するのは、我々魔族である……。邪魔な人間どもを根絶やしにするため、これから魔族による血の祭典が始まるであろう。ワハハハ……』



N「魔王ゴディーヴァが笑い声を上げると、スクリーンは薄らぎ、消滅した」



優志「……あれが……私の倒すべき魔王……ですか。私などに、そんなことが出来るのでしょうか……」



N「優志は手を震わせながら、下を向く。

 その様を見たヴィットは、魔剣を優志の方へと向け、声を響かせた」



ヴィット「クッフフフ……お前のような、若さを失った勇者など怖くはない! 魔族が世界を支配するために、人間どもは滅ぼさねばならぬのだ! サーシャ、やれ!」


サーシャ「オホホホ、面倒ですが仕方ありませんわね。ボk……ワタクシに任せなさい」



N「サーシャが桃形の飛行物体の中へ戻ると、桃形の飛行物体は空高く飛び上がる。直後、飛行物体の下底部——桃形の割れ目の隙間にある円形のハッチが開かれた」



ラデク「何だ、何をする気だ!」


優志「ラデクくん、待ってください!」



N「そして何と——!

 生命の水を噴き上げる生命の巨塔の上部から桃形飛行物体が覆い被さるように、ズブズブと音を立てて、桃形飛行物体の底部へと、塔の先端が挿入されていく——!」



ラデク「ああ! 生命の巨塔が!」



N「生命の巨塔の上半分が、桃形飛行物体の中へと入り込んでしまった」



サーシャ「今からボ……ワタクシが、生命の水を全て、いただきますわ。オホホホホ……」



N「桃形飛行物体はゆっくりと上下に移動しながら、生命の水を吸い取り始めた。桃形飛行物体の底部から乳白色の生命の水が溢れ出る。上下運動による摩擦で、挿入された生命の塔の外壁の一部が崩れる」



ラデク「何てことするんだ! やめろー!」


サラー「ラデクー、ダメー! こっちに来なさーい!」


優志「ラデクくん、相手は魔王軍幹部です。今の私たちでは絶対勝てないです。今の私たちにはどうにも出来ないんです……辛いですが、我慢してください!」



N「塔の根本ねもとの左右にある2つのゴールデンオーブの金色の輝きは、みるみるうちに失われていく。

 それをただ見ているしか出来ない、優志、ラデク、サラー」



ヴィット「いいぞサーシャ! もっと激しくだ!」



N「ヴィットが言い放つと、桃形飛行物体の上下運動はさらにスピードアップする。

 ズコーンバコーンと音を立て、上下に激しく動く桃形飛行物体。崩れる塔の外壁。乳白色の生命の水が、塔の周囲に飛び散る。生命の水が地面にしみ込んだ部分からは、植物の芽が顔を出す。

 やがて桃形飛行物体は、底部から溢れ出た生命の水を滴らせながら浮上。ボロボロに崩れた生命の巨塔の上部が露わになる。

 桃形飛行物体は、底部のハッチを閉じた」



ヴィット「クッフフフ! これでこの近辺の人間たちは病気になり、滅びるだろう」


サクビー「さらばだビー! 悔しかったら強くなって、ぼくちゃんを追いかけてくるがいいビー!」


サーシャ「オッホホホホ……! それではごきげんよう」



N「幹部たちは笑い声を上げると、それぞれの飛行物体ごと姿を消してしまった」


 ♢


N「生命の巨塔の上部は完全に崩れ落ちていた。

 そして——。

 約50メートルの高さを誇っていた生命の巨塔は、みるみるうちに小さくなっていく。2つのゴールデン・オーブも金色の輝きを失い、あっという間に手のひらサイズのただの鉛の玉になってしまった。

 生命の巨塔は、高さ5メートル、横幅2メートルにまで縮こまってしまい、周りに生えていた植物は枯れ、腐り落ちてしまった。

 もう塔から乳白色の生命の水は、湧き出ることはなかった——」



ラデク「うっ、ゲホッガハッ……!」


優志「大丈夫ですか、ラデクくん!」



N「ラデクは突然咳き込み、膝を折る。優志はすぐに駆けつけ、ラデクの背中をさすった。

 直後、優志の後ろでドサっと音を立てて、サラーが地面に倒れてしまった」



優志「サラーさんも! しっかり……! うぐ……」



N「サラーを介抱しようとした優志だが、優志自身も——脇腹の痛みが再発」



ラデク「勇者ミオン様……ガフッゲホッ……〝ワープゲートの素〟で……村に戻ろう……!」



N「ラデクは手に持っていた虹色の玉——〝ワープゲートの素〟を地面に投げた」

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