第9話 喋る猫
あらすじ
N
優志
稲村誠司
稲村愛美
——
あらすじ「ここまでのあらすじ——。
腹痛で倒れ意識を失った
目が覚めたら、優志は救急病棟にいた。胆石症と診断されたのち、症状が落ち着いたので病院から帰ってきた。
帰宅後、子供の頃に読んだ〝9匹のねずみの家族の絵本〟を開いた優志は、大学生の頃に見た〝ねずみの絵本の世界に行き、9匹のねずみの家族と暮らす夢〟を見たことを思い出す。
過去を懐かしみながら、9匹のねずみの家族の次男〝チップくん〟とまた話したいと思い、絵本を閉じる優志だった。
その後優志は、ニュースで謎の新型肺炎が発生したという記事を目にする」
————————
N「12月23日——。
胆石症の手術を宣告されたものの、その日以来は痛みもほとんどなく、優志の体調は日に日に体調も良くなっている。このまま治るんじゃないかとすら思えるほどであった。
やはり、夢の中の異世界〝オトヨーク島〟における健康の象徴〝生命の巨塔〟を直したからであろうか。そもそも、あれはただの夢だったのだろうか——。
しかし最近の優志は、夢自体を全く見ていないのであった」
優志「……また、あの世界に行けるものなら行ってみたいです。勇者として戦うのも……なかなか面白い体験でした。ラデクくん、サラーさん……いい子たちでした。また会いたいです。今夜こそ、また会えるでしょうか。会えますように」
N「優志はそう口に出して願うと、電灯を消し、眠りについた」
♢
N「朝——。
残念ながら、その日も夢を見ることはなかった。
仕事はその日も休み。優志の体調が快復するまでは、しばらく休ませてもらうことになったのである。クリスマスで繁忙期なので、休んだことを申し訳なく思う優志だった。
仕事を休むようになってから、優志は寝たいだけ寝て、好きなアニメを見たりして、のんびりゆったりと過ごした。「ああ、何と穏やかな日々なのか」と実感する優志。今までいかにストレスを溜めていたかを、大いに実感したのだった。
母が送ってくれた野菜を、鍋にしたりして食す。ジャンク食品ばかり食べていた優志には、その美味しさが染み渡った。
これからは、身体にしっかり気を使おうと決意した優志だった」
優志「運動もしなきゃな。……外はまた吹雪ですか」
N「外は、猛吹雪。優志が住んでいる地域では積雪は年二回程なのに、この年は毎日のように雪が降る。異常気象である。それに……」
優志「……また揺れた。最近ほんとに多いですね」
N「地震も、頻発している。震度3〜4の揺れが、ここ最近毎日2〜3回起きている。
近年は以前になかった現象や事件が、増えてきている。「地球も病気にかかってるんじゃないか」と、優志は思ったのだった。
せっかくのんびり過ごせるようになったのに、不穏なニュースを見るたびに心がざわつく。こんな時は、友人と話すに限る——そう思った優志は、以前にイベントで使うBGMの作曲を依頼してきて以来仲良くなった、7つ歳上の
稲村から返事が来て、夜に電話をすることになった。
優志はベッドに寝転びイヤホンをつけ、通話ボタンを押す——」
稲村誠司『……もしもし。おー飛田くんー、久しぶり。元気?』
優志「いなちゃん、久しぶり! いやあ、一回倒れて病院送りになったけど、今は元気だよ」
稲村『おいおい、大丈夫かよー。この歳になったら体は大事にしなきゃ。ストレスとか溜まってたんじゃないか? 誰かに話とか聞いてもらうだけでも全然楽になるよ?』
優志「いやあ、聞いてもらいたいけど、みんな自分のことで精一杯でさ」
N「同級生のように仲の良い稲村と話す時間は、あっという間であった。気付けば時刻は0時を過ぎている。身体を気遣うため、優志はそろそろ話を切り上げ、眠りにつこうとしていた。
——が、その時、稲村は話題を変える」
稲村『そうだ、あの時ついででうちの娘に勉強を教えてくれてありがとうな。受験、受かったって』
優志「おー!
稲村『娘も、ありがとうございましたって言ってたよ。また飛田くんと話したいってさ。LINE送らせていいかい?』
優志「ああ、もちろん。じゃあ私も身体も大事にしなきゃいけないから、そろそろ寝るよ。遅くまでありがとうね」
稲村『ああ、俺も話せて楽しかった。お大事にな!』
♢
N「翌日、久々の晴れた日。
散歩から帰ってきたら、優志のスマホにLINEの通知が来ていた」
優志「……あ、いなちゃんの娘さんからですね」
N「優志はトークルームを開き、稲村の娘、愛美からのメッセージを確認した。
名前が〝Aimi(沢山の絵文字)〟になっており、トークルームを開くと今風の音楽が流れる」
稲村愛美『飛田先生、お久しぶりです! 先生のお陰で合格できました! ありがとうございます(*´ω`*)』
N「優志は、絵文字をたくさん入れると〝オジサン構文〟になってしまうことを気にして、絵文字顔文字を一切入れずに、「おめでとうございます。努力が実りましたね」とだけ返した。
数分後、返信が来る」
愛美『はい! ありがとうございます!
あ、聞いてくださいよ! 前にうちのガレージに猫が来てたって話したじゃないですか』
N「優志は黙々と、「はい、ムーンとかゴマとかって名前の猫でしたよね」と、返す。
1分経たずして愛美から返信が来る」
愛美『最近大きな地震があったじゃないですか、ケージに入れて避難所へ行こうとした時、ゴマが、言葉を喋ったんですよ』
N「愛美が何を言っているか理解出来ない優志は「え?」とだけ返す」
愛美『そしたら今度はケージの中が虹色に光って、ゴマと、一緒にいた白い子が消えちゃったのね……。
せっかく懐いてくれたのに、どこ行っちゃったんだろうって』
N「優志は何と返したらいいか分からず、既読放置したままベッドに寝転がった」
優志「……おかしなことばかり起きますね、本当に……」
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