第7話 生命の巨塔
N
優志=勇者ミオン
ラデク
サラー
ピノ
マーカス
村人A(男)
村人B(男)
村人C(女)
————
N「ラデクくんを無事に帰すって、メルルさんと約束したのに——。
幼い頃からラデクの面倒を見ていたサラーさんの気持ちは——。
優志の心に、怒りの炎が燃え上がった。
優志の右手に、白い光が輝き始める——!」
優志「……〝ドルチェ〟ッ!」
N「白き魔法弾が優志の右手から放たれる!
魔法弾はピノを的確に捉え——直撃。火花が炸裂する」
ピノ「ぴのーーーーッ⁉︎」
N「〝ドルチェ〟をまともに喰らったピノは、レンガの山を転がり落ち、地面にぶつかった」
優志「……許せないです。サラーさんに謝ってください!」
N「優志は涙を流しながら立ち上がり、ピノに言い放った。だがピノは前歯を出しながら悔しげに地面の上を飛び跳ね、言い返す」
ピノ「……よ、よくもやったなぴの! お前たちもすぐにサイクロン・ジェット・キャノンでぶち殺してやるぴの! ファイヤーぴの! どっかーーーーん‼︎」
N「サイクロン・ジェット・キャノンの砲身が、今度は優志へと向けられる。
が、その時——!
優志のポケットの中にあった2つのゴールデン・オーブが、眩い光を放つ——!
優志「うわっ! 何ですか、これは!」
N「その光は弧を描き、倒れているラデクを包み込む。そして、太陽のように輝く——!」
優志「ラデクくん⁉︎」
N「光が消えると——何とラデクは、元気な姿で立っていたのである。怪我も、完全に治ってしまっている」
サラー「ラデク……? ラデクーーーー!」
ラデク「サラー? ……? 僕、生きてたの……?」
N「サラーはラデクのもとに駆け寄り、きつくきつく抱きしめた。
サラーの巨大なおっぱいに、またも顔を挟まれるラデク」
サラー「ラデク……うわーん……良かったよーー」
ラデク「サラー……息ができないよ……でも、みんな無事で良かった!」
N「ラデクを生き返らせたゴールデン・オーブの光は——今度はエネルギーを溜め始めたサイクロン・ジェット・キャノンの方へと向かって行った。
光が、サイクロン・ジェット・キャノンに直撃! 爆裂音と共に、何度も火花が炸裂する!」
ピノ「ぴのー⁉︎ サイクロン・ジェット・キャノンが‼︎」
N「激しくスパークしながらサイクロン・ジェット・キャノンは崩壊していき、地響きが起こるほどの音を立てて爆発した」
優志「す……凄いです。これがゴールデン・オーブの力……」
N「信じがたい光景に、優志は両手を握りしめた。
ピノは悔しげにその場を跳ね回りながら、捨て台詞を吐く」
ピノ「お……覚えてるぴのーーーー‼︎」
N「そしてピノは、一直線に空へと飛んで行ってしまった」
♢
優志「じゃあ、ゴールデン・オーブを塔に戻しましょう」
N「優志は崩れた塔に向かい、2つのゴールデン・オーブを取り出した」
優志「でもこれ、どうすればいいのでしょう? また元の大きさに戻るのでしょうか……」
ラデク「ミオン様、奪われる前と同じように、塔の右と左の両脇に置いてみたら?」
優志「分かりました。やってみましょう」
N「優志はラデクに言われた通り、ゴールデン・オーブを1つずつ、崩れた生命の巨塔の左右両脇にそっと置いた——。
すると!
2つのゴールデンオーブは輝きながら、みるみるうちに巨大化していく!
次の瞬間——塔の根本に、たくさんの植物の芽が顔を出した。それは瞬く間に茎となり、葉を茂らせ——塔の根本はみるみるうちに、ジャングルと化す!」
ラデク「うわわ、何だこれ! 凄いぞ!」
優志「ちょっと離れて見てみましょう、ラデクくん」
ラデク「うん!」
N「崩れ落ちた塔のレンガが宙に浮かび、みるみるうちに塔が修復されていく。
そればかりか、生命の巨塔全体が赤い光を帯び始め、さらにムクムクと巨大化していく。
塔の根本のジャングルはボーボーと茂っていき、塔の右脇と左脇にある巨大なゴールデン・オーブは、黄金色の輝きを放つ——」
サラー「綺麗ねー。あれが生命の巨塔の、本来の姿なのねー」
ラデク「すっげえ! すっげえや! やったな、勇者ミオン様!」
優志「……ああ。命がけの旅が、ついに報われたんですね」
N「完全に修復された生命の塔はルビーの如く真っ赤に輝き、高さは約50m、横幅は約15mにまでムクムクと巨大化。左右のゴールデン・オーブも同じく巨大化し、より一層、黄金の輝きを増していく。
やがて塔の上部が、卵のような形に膨れ上がる」
ラデク「……ん? 見て、ミオン様! 先っちょから、何か出てるよ!」
優志「本当ですね!」
N「そう——卵形に膨れ上がった生命の巨塔の先端から、乳白色の〝生命の水〟が、勢い良く噴き上がったのである。
病を癒す〝生命の水〟が、恵みの雨のように降り注ぐ——」
マーカス「勇者ミオン様ー! よくやってくれました! 生命の巨塔が見事、修復されましたな!」
優志「マーカスさん! ……そのコップは……?」
マーカス「ほれ、皆様のぶんのコップです。〝生命の水〟をコップに溜め、お飲みください」
N「優志、サラー、ラデク、マーカスはコップを
そして優志はマーカスに言われた通り、ごっくん、と乳白色の水を飲み干した」
優志「……ぷはあー! これは美味いです! 身体に沁み渡りますね! ……あれ? 痛みが消えました……!」
N「優志の脇腹の鈍痛が、嘘のように消えて無くなってしまった。
同じように、サラー、ラデク、マーカスも、ごっくん、ごっくん、ごっくんと、〝生命の水〟を飲み干す」
サラー「あらー、すごく血の巡りが良くなった気がするー!」
ラデク「すっげえ! 喉と胸が、楽になった!」
マーカス「おおーう、腰の痛みが消えました。娘にも、早く飲ませてやらねば!」
N「次々と、持病が治っていく——。
その後、森の出口から、コハータ村の住民たちが、歓声を上げながらやって来た。
みんなコップを掲げ、降り注ぐ〝生命の水〟を汲み、飲み干し始める。
ごっくん
ごっくん
ごっくん——」
村人A「腹痛が治ったー!」
村人B「髪が、また生えてきたー!」
村人C「不安と鬱が……吹き飛んだわ!」
マーカス「万歳ー! 生命の巨塔、万歳ー!」
N「噴き上がる生命の水に、太陽の光が射し込み、大きな虹が架かったのだった——」
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