ダブルベッドに死体がひとつ(その24)

杏奈のマンションの管理会社のサーバーにハッキングして、全63戸の入居者リストを手に入れた。

リストといっても、世帯主の名前、生年月日、家族構成、勤務先、電話番号、入居日、所有と賃貸の区別のいたってシンプルなものだが・・・。

303号室は、やはり杏奈の会社が所有者になっていた。

区分は賃貸で、居住者は浅村杏奈の名前のみが記載されていた。

真向いの305号室がやはり杏奈の会社の所有になっていて、リストには賃貸居住者の名前の記載はなかった。

つまり空き部屋ということか?

ファミリータイプの分譲マンションなので、家族で暮らしているのがほとんどで、目論見とちがって怪しげな独身者はいなかった。


これを最後にしようと思い、殺人のあった日の防犯カメラの朝8時から午後6時までの映像をもういちど丹念に見直してみた。

もはや見慣れた映像だが、ひとりだけ作業服に作業帽の男が朝の11時ごろに入って行く姿が見えたが、帰って行く映像が見当たらなかった。

夜の12時まで延ばして見てみたが、やはり帰る姿はなかった。

気になったので、可不可にもう一度見直させた。

「建設作業員でしょうか。たしかにそうですね。帰るところの映像がありませんね」

「どこかの部屋でリフォームの作業をしていれば、いくら遅くなっても夜の12時までには帰るだろう。それか、ここの住人が前の夜どこかで作業をして朝帰りしたのだろうか?」

「そうでしょう」

可不可は気のない返事をしたが、

「それと、もうひとつ不自然なところがあります」

急にモニターの画面に鼻を寄せてつぶやいた。

「午後3時過ぎのところで映像が2か所で途切れています」

可不可の指摘したところをスクショして拡大すると、明らかに編集したあとが見てとれた。時刻表示が15:12:33のあとが飛んで15:14:33になっていた。

目を皿のようにして見ると、そのあとの15:22:51が15:24:51に飛んでいた。

「それぞれ2分間飛んでいるね」

「ある人物が、あなたと同じようにハッキングして、防犯カメラの映像からじぶんが出入りする映像を消去したのではないですか?」

「ある人物とは?」

思わず可不可と顔を見合わせた。

・・・おそらく、同じ人物を思い浮かべたはずだ。

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