第13話 宝探しをする前に②

選定作業は至ってシンプルだ。

ホテルの位置情報を確認してから食器などを取り扱っているであろう店を複数ピックアップしてみる。


ピックアップといっても、スマートフォンを使ってインターネットが使えない現状では、アナログなやり方で調べるしかない。


東京全体を網羅した地図という事もあってか、どの店があるかという情報も必要最小限ではあるが記載されている。


一昨年に発行されたものなので、店名などは若干異なっている場合もある。

東京は店の出入りが激しいので、雑貨屋が出来ても三ヶ月で閉店なんてことも良くある話だ。


それでも、食器が見つかりやすい場所などを記した地図があるだけでも、有利になる。


終末世界で道路状況がかなり劣悪になっているとはいえ、それでも全く情報が無いよりは遥かに情報を活かせることが出来るので、トレジャーハンターをする上ではこの地図は欠かせない存在になるだろう。


地図の文字を確認しながら、ガラス製食器を取り扱っているであろう場所を赤ペンでマークをつける。


「ここが高円寺駅から500メートル離れた場所にあるから……えー、この辺りだと半径200メートル圏内でガラス製品を取り扱っている雑貨屋が4件、大手ディスカウントストアが1件、ラーメン屋や喫茶店といった飲食店を含めると13件だね」


雑貨屋や食堂、それにラーメン屋などもコップにガラス製を使っていたところも多い。店が荒されていなければそれなりに現存しているはずだ。

現存している可能性が高いのは、飲食店だろう。


雑貨屋や大手ディスカウントストアは略奪行為に遭っている可能性が高い。

これは金目のモノが置かれているケースが多い上に、多くの人が知っているブランド品などを取り揃えているからだ。


一方で、飲食店に関してはレジや金庫以外では盗まれる心配は殆どない。

強いて言えば、荒されていたとしても食料目当てに冷蔵庫や倉庫辺りだろう。


エマは、地図を隣で見ながら13件もガラス製食器を取り扱っている建物がある事を知って驚愕している。


「じゅ……13件もガラス製の食器を取り扱っているお店があったの?!」

「うん、多少店の内容は変わっているかもしれないけど、この地図を見る限りでは近くに13件記載されているね」

「この辺りは一通り探してみたけど、もしかしたら見落としがあるかもしれないわね……」

「最も、駅周辺……さっきゴブリンの縄張りになっている大きな建物が高円寺駅だけど、その周辺はもっとあるだろうね」

「つまり、ゴブリン達が縄張りにしている場所のほうがガラス製の食器が多いって事よね?」

「そういう事だ。とはいえ近場で13件もあるから、少しずつ探していけば必ずあるはずだよ」

「そうね、近くにあるならすぐに拠点に戻る事が出来るから大丈夫ね……それじゃあ、早速行く?」

「ああ、リュックサックに必要なものを詰めてから行こう」


先ずは近場からだ。

エマもトレジャーハンターだから、何かあったら彼女に頼ることにしよう。

近場とはいえ、何が起こるか分からない。

万が一を想定して、水と食料だけでもエマから渡されたリュックサックに入れておこう。


リュックサックに必要なものを詰め込んで準備が完了した。

俺は椅子から立ち上がり、エマと共に部屋を後にする。

ホテルの階段を降りていく際に、エマに護衛をお願いした。


「それじゃあエマ、護衛は頼んだよ」

「任せて、トオルは地図を見て目的の建物の場所を教えて頂戴」

「分かった。俺は戦闘は丸っきり駄目だから、万が一ゴブリンが来たら撃退よろしく」


俺は戦闘に関しては無力に等しい。

よく転生小説やファンタジー小説では、主人公であればそれなりに戦いに強かったり魔法をバンバン湯水の如く使う奴が多いが、俺はそんな能力はない。


体力と戦闘に関してはエマに任せることになる。


最も、エマに関してはガラス製食器が現存しているであろう場所を直ぐに見つける事が出来る俺の存在が一攫千金を獲得する上で必要な存在という認識らしい。


俺よりも力持ちで、命の恩人であるエマの後をついて、ホテルの外にいくのであった。

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