第4話 外出準備

「……よし、必要なものはこれでいいかな?」


15分ほど時間を掛けて、チェックリストを作成して、重要なものから順々にリュックサックの中に詰め込んでいく。

これは生きていく上で必須といっても過言ではない物だ。

絶対に無くさないようにしないと……。


・地図


・サバイバルガイドブック(基礎編)


・ミネラルウォーター入りペットボトル(2000ml)×2本


・絆創膏、包帯、消毒液、風邪薬が詰め込んである小さな救急箱


地図もそうだけど、サバイバルガイドブックにはライターなどを無くした際に火を起こす方法なども記されている。

とある外国人の人が動画サイトで原始的なサバイバル生活を送る動画が大好評であり、その人が出版した本だ。


イラスト付きで分かりやすい解説も記載されているので重宝するだろう。


あと水は生命の源だ。

人間は水分さえ補給することが出来れば二週間近くは大丈夫。

少なくともこの状況で安全な水の確保が出来るか不透明なので、この水が当面の間命を繋ぐ水になるのは間違いない。


それから救急箱。


現在の状態では、ドラックストアといった店は頼ることができない。

こんな終末世界みたいな状態で営業しているとは思えない上に、物資もあるかすら分からない。


なので、この中に入っている絆創膏や消毒液は絶対に無くしてはいけない。

無くした状態で怪我をしたら、最悪の場合ライターの火で強引に傷口を塞ぐハメになりかねない。


俺は真っ先に地図を服の胸ポケット部分にしまい込み、重要なものをリュックサックの奥深くに詰め込む。


そして次に入れたのは嗜好品や食料の類だ。

食料の確保が最重要課題だ。

今あるだけの食料を冷蔵庫や戸棚の中から探し出して詰め込んでいく。


・アルコール度数37度のウイスキー瓶(200ml)×1瓶


・缶コーヒー(180ml)×1本


・のど飴


・板チョコ×1枚


・特定栄養調整食品「栄養ブロックタイプ」×2箱(計4本)


・シーチキン入り缶詰×3つ


・インスタントラーメン袋麺5袋入り×1セット


ウイスキーは一昨日買ったばかりで、まだボトルの封すら開けていない状態だ。

これでレポートを終えた後に一杯やるつもりだったが、それどころでは無くなったな……。

とはいえ、口を付けていないので、綺麗な状態だ。


缶コーヒーは一昨日昼飯を買いに朝立ち寄ったコンビニのくじ引きで当たった景品だ。

そこら辺の自販機で何時でも購入できた缶コーヒーだけど……。

現在の状況では、二度と手に入らない一品になったかもね。


すぐに食べれるのは「のど飴」「板チョコ」「栄養ブロックタイプ」の三つだ。

ただ、この中で一番早く消費期限を迎えるのは板チョコだろう。

のど飴は気分を紛らわすのと、喉がやられた際に風邪薬の代用としても使える。


風邪薬とは基本的に症状緩和のために使う代物だ。

なるべく風邪薬はここ一番という時以外で使うのは控えたいので、のど飴は風邪薬の代用品として使用する。


栄養ブロックタイプに関しては、1980年代から作られている有名な栄養食品であり、長期保存も出来る優れものだ。

災害時でも活躍できるものとして有名だ。

まさに、今みたいな状態の時にピッタリでもある。


ツナ缶とインスタントラーメンに関しては、なるべく食べるのを控えて、ここ一番という時に食べよう。

いきなり食べて、食べるものが無くなってしまったら元も子もないからね。


そして、今後の活動で必要になっていくであろう道具も詰め込めるだけ詰め込んでいく。


リュックサックは10kg程度詰め込んでも、問題ないはずだ。


次に入れていくのは、日用品の類だ。


・筆記用具一式


・ノート×5冊


・歯ブラシ(未使用を含む)×2本


・剃刀×1本


・未使用のタオル2枚


・水筒(空)


・ライター


・携帯式ソーラー充電器


筆記用具とノートは、現在の状況を書き記すことで日記としての役割を担ってくれる。

それに、何かアイデアが浮かべば書き残すこともできる。


歯ブラシは歯の健康を維持するためだ。

虫歯になっても歯医に掛かれなかったら、歯を引っこ抜くしかない。


剃刀に関しては、髭を剃るのに使う。


タオルは顔を拭いたり、いざという時には止血する際に仕えるからね。

包帯の代用品として活用できるな。


空の水筒だが、これは安全な水源などを確保できれば、その水を入れておくことができる。


湧水を飲むのもいいかもしれないが、万が一腹を下したらとんでもなく危ないので、煮沸消毒などをしてから飲むようにしよう。


ライターは100ショップで売っていた一番安いものだ。

夏休みに帰省して墓参りをした際に、線香を焚いた際にポケットにしまい込んで、そのまま家に持って帰ってしまったやつだ。


透明な状態なので、すぐにガスの残量を見る事が出来る。

全然使っていなかったこともあり、残量もかなりある。

火を起こすのには当面困りそうにない。


それにソーラー充電器があれば、パソコンやスマートフォンのバッテリーが使用不可になるまでは何度でも充電ができる。


充電ができるのが太陽光が当たるという条件があるが、それでもこの状況下では唯一の電力供給をしてくれる装置だ。

壊さないように慎重に扱おう。


そして最後に、食べたり飲んだりする際に必要な道具を詰め込んでいく。


・塩


・胡椒


・普段使っている箸


・来客用の割り箸


・ステンレス製マグカップ


・ミニサイズカセットコンロ


・ガスボンベ缶×1本


・片手鍋


塩と胡椒に関しては、味付けを行う上で使うつもりだ。

何にも味気ないのは辛いからね。


カセットコンロは、冬場に鍋をする際によく使う。

といっても、大きな土鍋ではなく一人用の小さなやつだ。

片手鍋を使って、その中に具材を詰め込んでからスープを入れて一人用の鍋で食べる際によく使っている。


台所にあるIHヒーターも使うことはあるけど、基本的に鍋料理をする際には片手鍋でだいたい事足りてしまうからね。


自分では沢山入れたつもりではあったが、これだけ入れてもリュックサックの中にまだ余力があったので、途中まで書き終えた論文のデータが入っているノートパソコンもついでにリュックサックの中に入れておく。


お気に入りの絵師さんが描いた作品が沢山詰まった思い出の品だ……これだけは譲れない。


リュックサックの中に入れるのはこれでいいだろう。


それから、左手には太陽光で充電可能な腕時計を装着する。

日時までは把握しきれないが、現在の秒針は9時45分を指している。


ズボンのポケットにはスマートフォンを……。

まぁ、スマートフォンはあまり役に立たないかもしれないが、無いよりはずっといい。

いざとなればライトの替わりにもなる。


あとは……あまり考えたくはないが、万が一という事も想定すると武器が必要だ。


台所で普段使っているステンレス製の包丁を手に取る。

包丁という料理にも使える万能刃物が、今の俺にとって唯一武器といえる道具となった。


「これが唯一武器になり得るとはね……」


包丁をしまおうとしたその時、玄関のドアに複数の足音が近づいているのに気が付いた。

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