第2話 現状把握
圏外の表示になっているスマートフォンを前に、大規模な停電が起こっている状況も考えられる。
「そうか……停電で電波が届かない場合もあるもんな。地震とかで一時的に電気が届かなかった時もあったし……もしかしたらそれかもしれない」
以前、比較的大きな地震が関東で起こった際も、変電所で電力供給システムが緊急停止した影響で停電になった事がある。
その時もこんな感じにスマートフォンが使えなかった事を思い出したのだ。
もしくは変電所で火災等が生じた場合には、地域一帯の電力がストップする仕組みになっていたはずだ。
うーん、そうかもしれないな。
きっと今頃電力会社の人が設備を直している頃合いに違いない。
窓を開けて空気の入れ替えも兼ねて落ち着こう。
「よいしょっと……換気でもして空気入れ替えるか~」
カーテンを開けて窓を開ける。
普段見慣れているアパートからの光景では、目の前に二階建ての一軒家が幾つも立ち
並んでいる静かな住宅街だ。
いつもの変わらない光景……。
そう思っていた……。
「えっ?ナニコレ?」
窓を開けると、そこは異世界であった。
いや、もっと詳しく話すとすれば、異世界としか言いようがない世界になっていた。
周辺にあったはずの家々は朽ち果てているか、もしくは木々を含めた自然に飲み込まれていた。
向かい側の家に関しても去年リフォーム工事をしたはずなのに、室内までびっしりとコケのような植物が生い茂っている状態で、外に至っては木の根に侵食されていて、とてもじゃないか人間が住める状態ではない。
少なく見積って、人が完全にいなくなって放置されたような状態がずーっと続いていたみたいだ。
「い、一体どうなっているんだ?……なんで俺の部屋だけ朽ちていないんだ?」
そう、もし何らかの形で東京のすべての家が朽ち果てた場合、真っ先にこのアパートの部屋も朽ち果てていなければおかしい。
外に顔を出して確認すると、アパートにも木の根みたいなものがびっしりと覆いつくているにも関わらず、俺の部屋がある場所だけが木の根が行届いておらず、周囲の建物みたいに人がいなくなった後の街みたく、朽ち果てていない事に気が付いた。
つまり、何らかの形でこの部屋だけが転移してきたみたいな形になっているんだ。
「どういう事なんだ?この部屋だけ何ともないのか?」
電気が使えない状態が分かってくると同時に、これが夢であってほしいと思った。
そうすれば、夢から醒めれば解決できるからだ。
だが、そうはいかなかった。
ほっぺたをペチペチ叩いても、醒めなかった。
そして……ここが人類が滅び去ったかのような世界だと認識したのは、窓の外に緑色の肌をした小人のようなモンスターが歩いているのを目撃したからだ。
その姿を見て、思わずつぶやいた。
「あれって……ゴブリンじゃないか?」
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