第13話 お礼がしたい
やがて
そしてゆっくりとカーディガンを脱いでワイシャツ姿になると、モデルのように引き締まった体のラインが見て分かった。さらに出ているところはしっかり出ているという、まさに理想の体をしている。
「…………え、ちょっ!? 何してるの!?」
暑かったから脱ぎ出したのかと思ったが、絶対におかしい。
桜島さんは俺の言葉に聞く耳を持たず、頬を赤く染めたままワイシャツのボタンも外し始める。
俺は直視することができず、とりあえず後ろを向くことにした。今すぐこの教室から出たいが、残念ながら教室の出入口の方を見ると桜島さんを直視してしまう。
やはりどうすることもできず、八方塞がり。
どうしようかと必死に頭を回転させて悩んでいると、タイムリミットになってしまったようだ。
「……
「いやいやいやいや! 無理だよ! 頼むからボタンを留めてくれ!」
「大丈夫です。一つだけ留めてますから問題ありません」
「いや、問題しかないけど!? なんで急に脱ぎ始めたの!?」
「既成事実……じゃなくて、お礼をしたいと思いまして」
おい。今やばい言葉聞こえてきたけど気のせいか? 気のせいだよな。気のせいであってくれ。
「……お礼? お礼でなんで脱ぐんだよ」
「男の人はこれが一番喜ぶと本に書いてあったので」
「その本今すぐ捨てた方がいいよ!?」
何が書かれてるんだよその本。悪影響すぎるだろ。
一体誰がそんな本買うんだよ……いたわ、すぐ後ろに。
「……頼むから早くボタンを留めてくれないか」
「……私の体は魅力的じゃないってことですか?」
「魅力的だとは思うよ。でも、ダメだよ。男に簡単に裸を見せるなんてよくない」
「藤山くん……」
「自分の体を大切にしてほしい。襲われてからじゃ遅いだろ」
ストーカーの件があったのに、どうしてこんなことができるのだろうか。不思議でたまらない。
直接目を見て話していないため、どんな顔で彼女が俺の言葉を聞いているのかは分からない。
だが、本当に気をつけてほしいと思う。
男なんてみんな獣である。桜島さんのようないい体をした女の人を見れば、理性を失い襲ってしまう奴ばかりなのだ。何かがあってからでは遅い。
「……すいません。軽率でした。これからは気をつけます」
「分かってくれればいいんだよ。分かってくれれば」
「でも、ちゃんとお礼をさせてほしいんです。ストーカーから助けていただいた上に、勉強も教えてもらって……私は何もお礼をできてません」
律儀な人なんだな。
まさに完璧美少女。みんなから一目置かれ、学校中で人気になるのも分からなくはない。
「……じゃあ、まずは服を着てくれないか? 話はそれからにしよう」
「…………あ、すいません。ちょっと待っててください」
それから一分ほど待ち、ようやく面と向かって話せるようになった。カーディガンまでちゃんと着ている。
最初は何をされるか分からず冷や汗が止まらなかったが、なんとか何もされず終わったため安堵のため息をついた。
「で、お礼のことなんだけど、やっぱり気にしないでほしい。別にお礼してほしくてやったわけじゃないし、人として当たり前のことをしただけだから」
「それでは私の気が済まないんです。なので何かお礼させてください!」
「そんなこと言われてもな……」
困ったな。
お礼したいと言われてもして欲しいことなんてないし、欲しいものがあるわけでもない。
本当に気にしなくていいんだけどな……。
「あ! いいこと思いつきました!」
どうしてだろう。すごく嫌な予感しかしない。
「藤山くん、よく
「ああ、よく知ってるね」
きっと桜島さんももらったことあるはずだし。
「お菓子、好きなんですか?」
「うん、好きだよ。甘い物は世界を救うからね」
「ふふ、決めました」
「……え?」
「今度私もお菓子作ってきます。とびきり美味しいお菓子を作って、藤山くんの胃袋掴んじゃいます」
とてもやる気な桜島さん。
俺にとってはすごく嬉しいことだが、海佳に見つかると面倒なことになりそうだ。絶対に見つからないようにしよう。
「それは嬉しいな。じゃあ、楽しみに待っとくよ」
「はい! 楽しみにしててください!」
斯くして、俺は桜島さんに今までのお礼としてお菓子を作ってもらうことになった。
その後は桜島さんと別れ、海佳たちの部活が終わるまで時間を潰し、みんなでテストの打ち上げをしたのだった。
一応桜島さんも誘ってみたが、やはり用事があるということで残念ながら断られてしまった。
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