第111話 エピローグ(7)

「それで? あなたは、もしかして何か進展があった?」

「すごい! さすがはセンパイ。やっぱりわかるんですね」


 女の子は、嬉しそうな笑顔を見せる。そんな私達の親し気な様子に、男子生徒は痺れを切らしたように口を挟んできた。


「おい、この人って、前に言ってた……?」

「そう。ココロノカケラの事を教えてくれた人」

「……じゃあ、やっぱり……」


 彼らの会話に私は眉尻を下げ、困り顔を作る。


「あらー。やっぱり言っちゃったか……。誰にも言わない約束だったでしょ?」


 私の指摘に、ココロノカケラの少女は、えへへと笑って見せる。


「ちょっとヒントを出しただけだよ」

「もう。そういう事じゃないんだよ。……まぁ、仕方ないか。じゃあ、あとは……」


 私は隣に並ぶフリューゲルをチラリとみる。フリューゲルも困ったような驚いたような顔をしていたが、私の視線に気が付くと小さく微笑んだ。


「まあ、言ってしまったものは仕方がないよ。僕たちの存在を信じるのかは別として、彼らがココロノカケラである彼女と交流を持てる、素直な心の持ち主であることには変わりないし。それに、彼女の状態からみて、間もなく彼女は昇華するだろう。そうなれば、関わっていた彼らの記憶からも、今日のことは消えてしまうだろうしね」


 私はフリューゲルの言葉に頷いてから、男子生徒と女子生徒へ視線を向けた。


「彼女から、どうやって聞いているか分からないし、そのことを信じるかどうかは、きみ達に任せるよ。私は、肯定も否定もしない。ただ、きみ達にはあまり時間はないよ。それだけは信じてほしい」


 私は自分の存在云々よりも、仲良くなったらしい彼らに残された時間が少ないことを知ってほしくて、真剣な表情で語り掛けた。


 私の想いが通じたのか、彼らは困惑しながらも私の訴えを信じてくれる。あまりに素直に信じたので、こちらが拍子抜けしてしまうほどだったが、彼らには別れの時を大切にしてほしいと私は思った。傍らを見上げると、フリューゲルも同じ気持ちなのか、こくりと頷き私の背を押した。


「時間がないって……そんなの、まるで……」


 男子生徒は、その言葉の意味を察したようだったが、その先は口にしたくないという風に、頭を振り俯いてしまった。そんな彼に、私は言葉を投げる。


「時間がないというのは、言葉の通りだよ。ココロノカケラは、強い思いがこの地に残って、形を成しているものなの。だから、その思いが遂げられれば、無に還ることになる」

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