第9話 プロローグ(2)
「アーラ、ここに居たんだね」
不意に呼びかけられて、声がしたほうを見ると、フリューゲルが近づいてきていた。
「また下界を見ていたんだね。そんなに下界が気になるの?」
「そんなつもりじゃ……」
フリューゲルに指摘されるまで気がつかなかったけれど、また、私は下界を見ていたようだ。
別に、下界を見ることがいけないと言うわけではない。ただ、
それでも、私は指摘されたことがなんだか気恥ずかしくて、思わずぶっきらぼうに話を逸らした。
「それで? 何? 用事?」
「あぁ、そうだった。もうすぐ開花の時間だよ。早くお祝いに行こうよ」
「そっか。もう、そんな時間なのね」
大樹は一年中蕾をつけていて、一日に一つ、ベルの形に似た白い大きな花を咲かせる。
そして、今日も、開花の時間を迎えた。
今日、生まれたのは少女だった。下界の歳でいえば、十代くらいだろうか。
ベルの花から生まれる
だからなのか、
開花の時間は、いつでも静かで穏やかな喜びが大樹の周りを包んでいる。けれど、私の開花のときは、少し違ったようだ。
なぜなら、一日に一つだけ花を咲かせるはずの大樹に、二つの花が咲いたのだ。
そして生まれたのが、赤ん坊の私と、私の隣に立つフリューゲルだった。私たちは、いわば双子
同じ日に二人以上の
そんな、私たちも誕生以降、周りを騒然とさせる様な、白と青の世界に変化を起こすようなことは何も無く、日々穏やかに過ごしている。
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