第89話

 異世界召喚者たちは地下迷宮90階層にやっとたどり着いていた。

 だが地下迷宮90階層には、どこを見てもどこにいっても、そこにいるはずのモンスターがいない。

 オークディザスターがいない。

 ボス部屋なので通常のモンスターも見当たらない。

 なぜオークディザスターがいないのだろうか。

 そんなことを思いながら辺りを探っていたら、冒険者が二人いた。

 帰り支度をしている冒険者が二人もいた。

 その冒険者はおっさんの冒険者だった。

 おっさんの冒険者、おそらく冒険者ランクは低いのだろう、にオークディザスターのことを聞いてみることにした。

「おい、おっさんたち、ここにオークディザスターがいるはずなんだが、そのモンスターがどこにいったかわかるか?」

 というのはリュウノスケ。

「ああ。オークディザスターか。オークディザスターならもう討伐したぞ。紅蓮の炎というパーティーがな」

「「オークディザスターを討伐しただと!?」」

 異世界召喚者たちは、自分たち以外のものがオークディザスターを討伐したことに驚いていた。

 リュウノスケは信じられない思いだった。

 そもそも異世界召喚者以外の人間は、そんなには強くないはずなのだ。

 リュウノスケは言った。

「まじで?」

「ああ。まじだ」

 と、おっさんは言った。

 おっさんのことをよく見ている。

 おっさんの髪の色は白髪だった。

 そしてもう一人のおっさんは背中に大剣を背負っているようだ。

 おっさんの顔には大きな傷がついている。

 リュウノスケはため息をついた。

「はあ……まじかよお。オレたち、せっかくここまで来たのによお……。はあ……もう誰かは知らんが……オークディザスターを倒したのかよ。ショックだぜ」

 とショックを受けるリュウノスケ。

 眼鏡をくいっと押しながら、ショウヘイは言った。

「で、そのオークディザスターを倒したやつはどんなやつなんだ? 紅蓮の炎といったな」

「どんなやつって、別に普通の少年少女のパーティーだよ。ああ。一人獣人の女の子がいたなあ。あとは……おっさんが一人いた。頭が禿げかけたおっさんだ」

「「頭が禿げたおっさんって……それってもしかして……サトウさん!?」」

 頭がはげたおっさんという言葉を聞き、異世界召喚者は驚きの声を上げていた。

 そして全員があのおっさんのことを思い出していた。

 サトウとかいう異世界召喚者のことを思い出していた。

 だがアヤノだけは言った。

「サトウって誰だっけ?」

 と。

 女子高生のミコトは言った。

「サトウさんだよ、サトウさん。あの髪の毛は少なかったけど、いいひとだった……スマホの充電をしてくれた人いたじゃん」

「ああ。あのおっさんね。あのおっさん……まだ生きてたんた」

 というのはアヤノ。

「つうか、あのおっさん、どこかのパーティーには所属してたんだな」

 というのはリュウノスケ。

 リュウノスケは言った。

「なんつうかさ、あのおっさん、軍団長の話では、自分は異世界召喚者にはふさわしくないからって城から一人で出て行ったんだろ? 自分は無能だからという理由で。こんなにすごい冒険者の中に混じって、おっさんが一人厳しい修行にはもう耐えられないとかいって」

 とかいうのはリュウノスケ。

 ショウヘイは眼鏡をくいっと押さえながら、言った。

「まあ……軍団長のいっていたことがすべて正しいとは限らないがな……」

 というショウヘイ。

「なんだよ? 軍団長がオレたちに嘘をついていたということか?」

 というのはリュウノスケ。

「まあそういうことだ。軍団長のいっていたことをすべてうのみにするのは危険だろうということだ。もしかしたらだが……オレたちをこの異世界に召喚したのも……ほかに何か目的があったかもしれない」

 というショウヘイ。

「目的ってなに?」

 というのは女子高生のミコト。

「それについては……まだお前たちは知らないほうがいいだろう。オレもまだすべてがわかったわけじゃない」

 ショウヘイは眼鏡をくいっと押して、言った。

 その会話を聞いていたおっさん二人が言った。

「オレたちはもうダンジョンから出る。お前たちはこれより下の階層にはいかないほうがいいぞ。一度行ってみたことがあるやつならわかるが、これより下の階層には化け物しかいないからな。まあその下の階層にいったやつはいるが……」

 というおっさんは言うと、おっさん二人はダンジョンから出ていった。

 リュウノスケは言った。

「で、どうするよ? オレたちは、あのおっさんたちと同じように、ダンジョンから出るか? それとも紅蓮の炎とかと同じように、ダンジョンの先に進むか? どうする?」

 というリュウノスケ。

「このまま先へ進んでもいいんじゃないの? わたしたち、異世界召喚者なんだし、地下迷宮91階層のモンスターくらい余裕っしょ」

 というアヤノ。

「じゃあさ、地下迷宮91階層に進んでみようか? ちょっとだけでもいいから進んでみようか」

 という女子高生のミコト。

「えー。あたちはもうかえったほうがいいとおもうんですけど……」

 という幼女のミコト。

 女子高生のミコトは言った。

「えー。でもさー、せっかくここまできたんだし。ダンジョンの下層まで来るのって、結構時間もかかるじゃない? それに、ミコトちゃんも久しぶりにおっさんに会ってみたくない? わたしは久しぶりにおっさんに会いたいなー。おっさんにあって、スマホの充電をしてもらいたいっ。おっさんがいなくなったせいで、スマホの充電ができなくなったんだもの」

 という女子高生のミコト。

 幼女のミコトは言った。

「そうですね! あたちもおじさんにあいたいです!」

 という幼女のミコト。

 女子高生のミコトは言った。

「みんな、いこうよっ。先に進もうっ。91階層以下にどんなモンスターがいるのか、みに行こうよっ。ちょっと地下迷宮91階層以下のモンスターと戦ってみようよっ」

 という女子高生のミコト。

 異世界召喚者たちは自分たちが最強だと信じて、地下迷宮91階層の階段をおりていった。

 紅蓮の炎のメンバーがいけるのなら、わたしたちにだってできるのだと、そう思って……。

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