第4話

 勇者というのは本当に強い存在なようで、味方の勇者たちは異世界のモンスターを簡単に倒しているようだった。

 ダンジョンに住むオオトカゲをものの見事にたった一撃で倒している勇者リュウノスケ、勇者ショウヘイ。

 ギャルっぽい見た目のアヤノもなんだか楽しそうにオオトカゲを倒しているし、なんだか勇者というのは野蛮な生き物に見える。

 幼女はといえば、モンスターを見て「きゃああああ、こっちに来ないで」と悲鳴を上げてはいるものの、やっていることはモンスターのオオトカゲの虐殺である。

 クラスのアイドル的存在であるミコトでも、オオトカゲとはレベルの差がありすぎるのか、オオトカゲなんてものは相手にならないとでもいうように、敵を一撃で倒していた。

 そしておっさんであり、勇者でもあるはずのオレだけがちょっとおかしい。

 みんなが一撃で倒すことができるはずのモンスターも、このおっさんであるオレには、一撃でオオトカゲを倒すことさえできないのである。

 あれ?

 勇者ってのは異世界の人間の何倍も強かったはずじゃなかったのか?

 そのオレの疑問はほかのメンバーも感じているようで、「あいつは勇者なのに、どうしてオオトカゲを一撃で倒すことができないんだ?」という目線で、高校生たちはオレのことを見ていた。

 そんなことを聞きたいのはオレのほうなのだが。

 ステータスにのっていた数字が低かったのが原因なのだろうか。

 だがスキル、まぶしい光を使うと、オオトカゲの攻撃が全く当たらなくなるので、オオトカゲを倒すのは意外にも簡単だった。

 敵がいい感じに攻撃をミスってくれるので、オレは敵の攻撃が当たらないのを確認しながら、一撃、二撃、三撃と、攻撃力が低いなりに、敵を攻撃していけばいいだけだった。

 というか、このスキル、まぶしい光はオレの頭が激しく点灯するので、正直なところ、このスキルは恥ずかしいという理由であまり使いたくない技だった。

 なんつうか、このスキルを使うと、女子高生の二人がふふふと、男子高校生の一人がにやにやとした顔でこちらを見るのである。

 そんな笑いをこらえながらこちらを見るのはやめていただきたい。

 幼女は子供だからであろうか、

「おじさん、すごい光だったね。まぶしかったよ」

 ということを言ってくるし、何だよこのスキル。

 異世界に来たのにどうしてこんなスキルしか使えないのか。

 しかも決してオレははげているというわけじゃないのに、女子高生の二人がオレの頭を見て、こんなことを小声で、聞こえるか聞こえないかくらいの声で言ってくるのである。

「はげてるよね」

「あれ、どう見ても、はげだよ」

 みたいなことを。

 いや、はげてないよ!

 確かに最近は前髪が寂しくなっては来たけど、これははげてきたわけじゃないよ。

 少し前髪が寂しくなってきただけである。

 くそっ。

 そしてほかの勇者は豪快に一撃でオオトカゲを倒しているというのに、なぜオレだけが、地味なスキルで、オオトカゲの目をくらませるようなスキルをわざわざ使ってから、地道に敵を倒さなければならないのだろうか。

 そしてショウヘイだけが眼鏡をくいっと押さえながら、意味ありげな、少し感心をしたような顔をして、こちらを見ているのはなぜなんですかね。

 きりっとした顔でこちらを見てくるの、やめてほしいんですけど?

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