異世界に召喚したくせに、無能という理由で追放ですか? そういうのなら仕方ありません。出ていきます。

@lili032

第1話

 目が覚めるとそこは異世界だった。

「あ? なんだここは?」

 オレはどこにでもいる普通のおっさんである。

 年は四十。

 最近では髪の毛が怪しくなってきた。

 だから気にしているのは髪の毛がこのまま大丈夫かどうか、それを毎日鏡を見て、今日もまだ大丈夫だな、とチェックするのが毎日の日課になっていたのだが……。

 どうしてしまったというのだろうか。

 そこはいつもの家ではなくて、城である。

 城の謁見の間に、王様の格好をしたおっさんと、王様の格好をしていなければ、見た目はオレとあまり変わり映えのしない見た目である、周りにはまるでファンタジー小説で、ゲームで出てくるような、鉄の鎧に身を包み、そして手には槍を持っている、なんだか怖そうなものたちがいるのである。

 夢でも見ているのであろうか。

 夢だったらこの夢をもうちょっとの間だけ楽しんでおこうなんて思っていたら、王様であろうものが口を開いた。

「ようこそ、勇者様方」

 勇者様方?

 この異世界にきたのはオレだけなのかと思っていたが、どうやらそんなことはなかった。

 周りを見渡してみれば、なんだか男子高校生と女子高生がオレのほかにもいたようである。

 男子高校生は柄の悪いなんだか不良のようなやつと、なんだかまじめそうなやつ、なんだかおどおどしているな、それと眼鏡をかけて頭のよさそうな奴の三人がいる。

 そして女子高生は二人いる。

 髪の色を茶色に染めている女子高生と、クラスのマドンナ的な存在なのだろうか、やたら可愛い女の子が一人いる。

 そのマドンナ的な少女の周りはキラキラと輝いているように見えるのは、オレがおっさんだからだろうか。

 それともマドンナというのは、キラキラというものを身体から発するものなのだろうか。

 うーん。

 女勇者と言うやつだろうか。

 つうか、勇者の数多すぎないか。

 勇者が一人や二人ならともかく、一人、二人、三人、四人いる。

 さすがに四人とか五人とかは勇者が多すぎるだろうと思いながら、男子高校生でもなく、女子高生でもない、という少女に目が留まった。

 彼女も勇者なのだろうか?

 というか、少女といっていいのだろうか。

 少女というか、むしろ幼女である。

「ふええええええ。ここ、どこ? なんであたち、こんなところにいるの? あたち、おうちにかえりたい」

 という幼女。

 どうやら三才から七歳くらいの女の子のようである。

 おうちに帰りたいとはかわいらしいものである。

 夢にしてはずいぶんリアルな感じだなあと思っていたら、異世界の王様がこう言ったのである。

 お前たちは元の世界には戻れないと。

 お前たちは魔王を倒してからでないと、元の世界には戻ることができないと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る