第22話 戦闘
*水花*
かぁん、かぁんと、金属音が鳴り響く。一手でも受け間違えれば、大鎌はあっさりとこの身を引き裂いていくだろう。
「あはっ」
思わずこぼれた笑みを、かき消すように固く唇を結ぶ。笑っちゃだめだ、楽しんじゃだめだ。そう思うのに、目の前で実に楽しそうに、笑いながら獲物を振るうキリクに、つい、つられてしまった。
そんなあたしの葛藤を知ってか知らずか、底意地の悪い表情でキリクは笑い続ける。
「高校で君を見つけた時は驚いたけれど……、特に変わっていなさそうで安心したよ、水花」
「……」
返事はうまく返せなかった。あたしは変わった。変わったはずだ。そう思うのに、言葉にすることに躊躇いが生まれた。
「一応聞くけど、なんで早瀬さんを襲っていたの?」
代わりに口をついたのは、そんな疑問だった。答えを求めていたわけじゃない。相手の刃をかわし、こちらの刃を突きつける。そのゲームの一部としての、軽口にもならない会話。
「なんで、か」
そのはずだったのに、返ってきたセリフには、どこか失望のような色が見えていた。
もしかしたら、自分はとんでもない思い違いをしていたのかもしれない。
そんな嫌な予感が、脳内でスパークする。
あたしは、キリクも、名前を知らないヤバい奴と同じように行動しているのだ、と思っていた。どころか、先ほど見かけた河原の現場も、キリクがやった可能性もあるとすら推測していた。
しかしそれは、どちらも大間違いだったのかもしれない。
だとしたら……?
いや、それならそもそもどうして? どうやって?
「っ!」
肩先に鋭い痛みが走る。そうだ。この相手は、考え事をしている余裕なんてまるでない。
バックステップで距離を取る。
相手が距離を詰めようとする動きを読んで、空中で園芸用の小さなシャベルを生成し、投げナイフのような要領で、目と脚を目掛けて投げる。
狙い通りの軌道を描いた投擲は、刃と柄でそれぞれ器用に弾かれて終わった。しかし、今のは当てるのではなく、距離をとり、仕切り直すのが目的だ。
「余計なことを考えるのは、後!」
大きなショベルを両手で構えて、あたしは改めて、素早く間合いを詰めていく。
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