第21話、英雄になったぜ!!!!

 テクテクとのんびり歩きながら森へと戻る。

 途中で大雨が降って水分補給をし、暇だからとヤクジシ達のエステをしたりとそれなりに楽しく過ごし、ようやく森へと到着した。

  

「かえったぞお!!!」

  

 ビガロが声を掛けると、長やみんなが茂みから飛び出してきた。

  

「おお!おおお!!みんな怪我はないか!?」

「みてのとおり、ピンピンしてるぜ!それもこれも、ラムスががんばってくれたからだ!!

 こいつはエイユウだぞ!!」

「いやぁー、褒めてもエステしか出来ないぞう」

  

 それにしても、ヤクジシ達のキラキラした視線を総取りって言うのも悪くはない。

 まるでスターの気分だ。まぁ、スターではあるんだけど。

  

  

  

  

  

「あっははははは!!!楽しいねぇ!!」

  

 ヒノコを倒した英雄として宴会を開いてくれた。

 今まで貯めてきた食料の半分を俺に贈呈し、秘伝のお酒をプレゼントしてくれた。

 スライムでも少しだけだったら酔うらしい。

 ステータスを見てみたら、[毒状態]と出ていた。

 笑う。

  

 やんや、やんや、と夜も更けていき、みんなで雑魚寝。

 フワフワ達に囲まれて空を見上げる。

 木々の隙間から星を眺めながら、目を閉じた。

 いつもはソロ活しかしてないけど、ここ数日こうやって大勢で寝て思った。

 誰かと一緒に行動するのも悪くはないかな。

  

  

  

 翌朝、俺は街へ、ヤクジシ達は平野へ帰ることになった。

  

「ぐずっ、ほんとにほんとに、ありがどうなぁー!」

「うははっ、顔ベショベショじゃん。こっちこそありがとね!」

  

 泣きじゃくるヤクジシ達を撫でていき、最期にビガロの頭を撫でる。

 このフワフワともお別れか。

 なんか寂しいな。

  

「これ、こんかいのヒノコをたおしてくれた“おれい”だ。」

  

 ビガロに見たことのない程に綺麗な石と、何でも治るらしい丸薬を貰った。

  

「いいの?こんなに綺麗な石。お宝とかじゃないの?」

  

 石と言うよりも、もはや宝石だろう。

 角度を変えれば色がくるくると変わる。

 オパールに似ているけれど、中の色がこんなにも変わるのだから違うかもしれない。

  

「いいんだ。おまえは、おれたちのスミカをとりもどしてくれたんだ。これが“さいだい”のおれいだ。うけとってくれ」

「わかった。大切にするね」

  

 これは食べずに取っておこう。

 俺にとっての勲章だ。

 ……ちょっとは舐めるかもしれないけれど。

 丸薬も俺には必要ないけど、何かに使える日が来るかもしれないし。

  

「じゃーねー!!!」

「げんきでなぁー!!」

「またあおうねー!!!」

  

 ヤクジシ達と手を振り合い、俺は久しぶりに街へと戻った。

  

「ご無事でしたか!?」

「へ?」

  

 そういえばこんなに長く街から離れたことなかったかも。

 というか門番さん凄い心配してくれているじゃん。

 門番の鑑かよ。

  

「依頼で遠出してただけですよぉー!んじゃ、ギルドに報告言ってくるんで!」

  

 それでは!とギルドへとスキップ混じりで向かった。

  

  

  

 ギルドへと到着した。

 ギルドは相変わらず柄の悪い奴らがたむろっていて、治安が悪そう。

 これこれ、懐かしいな。

 受付の人でさえ懐かしい。

  

「こんちゃーす!依頼完了の報告に来ました!」

  

 受付の人がこちらに気が付いて驚きの表情を見せた。

  

「ラムスさん!無事だったんですか!」

「ん?」

  

 同じような台詞、本日二度目。

 なんだろう、俺そんなにひ弱そうに見えるのかな。

 そう思いながらも現在の自分の姿を客観視して納得した。

 そうだよね。こんなピチピチギャルが数日森から戻ってこなかったら心配するよね。

 ありがとうよ!!!!

 でもこれだけは言っておこう。

  

「問題ナッシング!だって俺こう見えて強いしー!」

  

 受付さんに暖かい視線と微笑みを向けられた。

 信じてないなこれ。

 まぁいいや。

  

「んでー、ヤク…ホビラット達がここに居着く原因になったヤツを退治してきたので、これー買い取りとかしてくれますか?」

  

 そう言って、草原で捕獲したヒノコをホビラットから貰った袋から取り出した。

 取り出した風に見せ掛けて手から吐き出したんだけどね、

 中には草を詰めて偽装工作してたから、ヒノコを出しながら草を取り込んで違和感の無いようにした。

  

 なんでそうしたかって?

 ヒノコは重いし、何より体内に入れてたほうが草から調合した痺れ毒でおとなしくさせられるから便利だったから。

  

 よいしょとヒノコをカウンターに置くと、ギルド内がざわついた。

  

「?」

  

 なんだ?

  

「うわ!え!?これラムスさんが一人で討伐したんですか??」

「そうです。討伐ってか、生きてるから捕獲だけど」

「捕獲!!??」

  

 さらにどよめき立つ。一体何なのだろう。

  

「これはミラージュクス、別名カゲロウキツネと言いまして捕獲高難易の魔物なのですよ!」

「へぇー。そうなんすねぇ」

  

 道理でめんどくさいと思った。

  

「あの…本当に一人で狩られたのですか?」

「? そうだけど?」

「本当の本当に?」

  

 あれ?これ疑われてる??

 はっとして辺りの気配を探れば、みんなこっちを見ている。

 しかも、この感じは疑われている。

 間違いない。

  

 うーん、でもここでギャル系特殊スキルを見せるのもなぁ。

 なんか良い方法は…。あ。

  

 ポケットからヒザマズキソウを取り出した。

  

「これを使いました。あと──」

  

 マドロミ草、肉食獣が好む匂いを発するフェルル草、食欲が増すググフク草も置いた。

 これらは全て、今までの依頼の次いでで集めたものだ。

  

「これを細かく刻んで、鶏肉に混ぜ込んで団子にしておきました。勿論疑われないように遠くからずっと待ち伏せしてたんですけど」

「……なるほど?」

  

 あり得なくはない話だ。

 でも過去にもそれをした人はいるはずだけど、今回はたまたま成功した、という事で納得してくれた。

  

「買い取りもさせていただきますね。少々お待ちください」

  

 受付さんが、買い取り専用の人を呼びにいく間、俺は体内で麻酔の草団子を作成してヒノコの口に突っ込んだ。

 これでまだしばらくは起きない。

  

  

  

  

  

「始めてでこれとは、すんばらしい!高く買い取らせて頂きますよ!」

  

 このミラージュクスは捕獲の状態が良いので、良い値段で買い取ってくれた。

 やったぜ。

  

「明日、確認する職員を派遣しますので午前にはギルドにお越しくださいね」

「はーい」

  

 明日職員とホビラットが本当に居なくなったのかを確認してから報酬が渡されるらしい。

 とはいえ、今俺の手にはヒノコ、ミラージュクスの買い取りで得た大金がある。

  

「今日は奮発しよーっと!」

  

 頑張ったご褒美だ。

 気になっていた甘味を食べ尽くすぜ!

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