第11話、ギャルに乗っ取られる!!!!

 そんなわけで、森に来た。

 街を出る時に、不法侵入していたから門番とひと悶着になるかと思ったらすんなり通れたから驚いた。

 こんなにガバガバ警備で大丈夫なのか?

 スライムながらにちょっと心配になった。

 しかも俺の胸ガン見してたし。

 まぁデカイし?目が行くのは仕方ないけどー?

 とはいえ、これはスライムの一部だ。残念だったな!!!


 さて、ごはん食べながら探しますか。

 そこらの草をむしって食べながら奥へと進む。


 スライムになってから草を食べることが多くなったお陰で、なんとなく草がたくさん生えているだろう場所の予想が付くようになった。

 だてに草を食べているわけではない。


「とうちゃくー!」


 予想通り、たくさん草が生えている所に出た。

 いい感じに日が射して、瑞々しい草達が風に吹かれて揺れている。


 さて仕事だと、紙を手から取り出して絵を見た。

 まずはキロール草。


 しかしこのキロール草、なにやら見覚えがある。

 いや、見覚えがあるだけではないな。

 何ならさっき見たような?


「……」


 今食べてる草だった。


「お前だったのかッ!!!」


 半分食べた草を見つめた。

 これもカウントしていいのか?


「いや、さすがにだめだよなぁ…」


 さすがにね、食べ掛けをね、納品するわけにはいかないしね。

 というよりも、と、持っている草を見た。


「これ、キロール草って名前だったのかぁ」


 まじまじ見てみると、久しぶりに表示が現れた。


[キロール草]


 今さら過ぎて、ビックリもしない。

 むしろちょっと呆れてしまった。

 例えるなら、地震が起きたあとに地震アラートが鳴った時の心境に似ている。


「知ったあとに表示されてもなぁ。せめて何処にあるかを表示するってなら良いのに」


[キロール草を表示]


「ん?」


 視界に収まる範囲の草が光始めた。

 纏まってではなく、普通の草に混じって光る草が生えている。


「…ええ??」


 困惑しながら確認すると、光っているのはみんなキロール草だった。

 なにこれ、こんなに便利なことできたの???スッゴ!!


 ……もしかして最初から出来てたんだろうか?

 俺が知っているからと理解しようとしなかっただけ?


 完全に宝の持ち腐れだった。

 これからはガンガン活用していこう。


「よいしょー」


 土ごとキロール草を飲み込み、土だけは食べて草は残した。

 やっぱり見た目は綺麗な方がいいしね。

 そんな感じで黙々と体に収納していき、目的の15本を余裕で越えた。


「さて!次はバルタ草だ!出でよ!バルタ草!!!」


 しんと静まり返っている。

 あれおかしいな。


「もしかして食べたことのある物しか表示されない感じ?」


 キロール草の紙を収納し、バルタ草の紙を取り出した。

 確認するために紙を見返した。


「…………、これ、食べたことあるな」


 しかも街に入る直前辺りに。

 なら何故光らないのか?


「もしかして此処には生えてないとか?」


 ならば光らないのにも納得がいく。

 だって多分こいつは食べたことあるから、生えているのなら光らない方がおかしいだろう。

 これは確かめるしかあるまい。


「うしっ!移動すっか!」







 街に侵入する際に街を見下ろしていた場所へとやって来た。

 ここにもたくさんの植物が地面を埋め尽くしていた。

 結構食べたはずだけど、もう新しい草が生えてきている。


 さて、確認するか。

 いやその前に。


「んー、と。これかな」


 近くのそれっぽい草をむしって見比べた。

 これだ。

 バルタ草を手に取り、宣言した。


「これはバルタ草!!!」


[バルタ草]


 頭に浮かんだ名称を確認して、テンションが上がる。


「よし!表示された!! バルタ草を表示!!」


[バルタ草を表示]


 点々と草が光始めた。

 やはりさっきの場所には生えていなかったのだ。


「うひひ、これなら薬草収穫のプロになれるぞー」


 それらを収穫していけば、あっという間に依頼内容を達成してしまった。

 あまりにもイージー過ぎる。

 たったこれだけでお金が稼げる上に、スマホも手にはいるなんて最高過ぎる。


「仕事したからお腹すいたな。何か食べてから戻ろう」







 大きい岩があったから、それを半分食べたらお腹一杯になった。

 やっぱり石も美味しいな。

 水分ほしくなるけれど、あのガリガリ感が堪らない。


「でもやっぱりー、個人的にはガラス石が一番って言うかー。………………ん?」


 首を傾ける。

 先程から妙な違和感があった。


 喋る口調が自分の物とは別物のような感じがしたのだ。


 今までの言動を思い返して、血の気が引いた。

 俺、ギャルに汚染せれてないか???


「ひぃぃぃ……」


 か細い悲鳴が出た。


「ギャルに乗っ取られる……こわいッ……!!!」


 今までギャルを利用していたのだけれど、控えた方がいいのだろうか。


「……でも便利なんだよなぁ……」


 今のところデメリットよりもメリットが多いのだ。

 移動速度も早いし、街に入れるし、ギルドで登録も出来た。

 欲を言うなら、ギャルじゃない方が良いけれど、選択肢がギャルしかないから仕方がない。


「いや、装備でギャルっぽさを薄めることは出来るんじゃない?」


 例えば、鎧を着込んだり男装したり。

 そうすればきっとギャルとはほど遠くなるはず。


「ふ、目指すはカッコいい系で決まりだ」


 待ってろよ!絶対にギャルを卒業してやるからな!!!

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