第12話、天職である!!!!
クエスト内容を余裕で達成し、ギルドに戻った。
とりあえず、あのお兄さんの所に行けば良いのかな。
「クエスト終わりました。薬草は何処で出せばいいですか?」
お兄さんは驚いた顔をしていた。
「え、もうですか? 早いですね」
「意外と近くにあったので」
「そうなのですか。ここでいいですよ」
「はーい」
じゃあと、手から取り出そうとし──
ハッとした。
やっべ無意識こわい。
バカか俺は。手から出したら人じゃないってバレるじゃないか。
しかもこんな冒険者の巣の真ん中で。
川の中の惨劇その②になるところだ。
慌てて手を下ろし、ポケットから取り出す振りをしながら薬草を取り出してカウンターに乗せていく。
「12、13、14、15本っと。これで以上です」
二種類別に並べた。
我ながら美味しそうなものを選んだから自信がある。
しかしお兄さんは妙な顔をしていた。
なんだろう。
草は間違えてないはずだけど。
「僕ポケットから取り出す人、初めて見ました」
ああ、そっちか。俺もです。
「うん。良いですね。凄く良いです。それでは、今回の報酬をお渡しします」
机に銀色のコインが3つ置かれる。
「3シルビアです」
「ほお」
「状態が凄く良かったので、満額になります」
「へぇー、ありがとうございまーす」
何円なんだろう。
お金をポケットから体に収納する。
せっかくなので、草系のクエストをもう何件か受けることにした。
やっぱり草系のがいいよな。
次のクエストは草刈りにした。
結構な敷地に生えた雑草を何とかしてくれと言うものだ。
ちなみに雑草の処分は自由でいいらしい。
「スイパラじゃん」
剣を取り出してザクザクと草を切り刻んでいく。
たくさん栄養を吸っているみたいで、音が良い。
「よいせ、よいせ」
レンタルしたショベルで土を掘り返す。
途中、脚から摘まみ食い。
この体で動くと、お腹空くんだこれが。
「ふぅー。こんなもんかな」
ある程度かき集めて山にした。
途中で結構摘まみ食いしたから量は半分くらい。
ふむ、そのまま丸飲みにしたいところだけどここは街の中だ。万が一街の人に見られたら騒ぎになる。
でもお腹空いたから食べたいな。
「んーーー……、あ!」
良いこと思い付いた。
端に畳んで置いておいたマントを広げて中に雑草を詰め込んでいき、それを背負った。
人に見付かるのが不味いのならば、人がいない所で食べれば良いじゃない。
街を出る時に門番に呼び止められた。
「おや?どちらへ?」
バレたか?
内心冷や汗を掻きながらも笑顔で返した。
「森の奥に雑草を撒きに行くんですよぉ。これを重ねて置けば良い肥料になるので」
嘘である。
「そうですか。お気をつけて」
「はーい!」
バレたかと思った。
森の奥へと入っていき、誰もいない所で俺が食べて穴を開けたところへと半分隠した。
これで夜食べに戻れば良し。
今ある半分はすぐに食べた。
うん。美味しい。
あとは厄介な根っこをどうにかした方が良さそうだけど、流石にスライムに戻るのも見付かったら大変だし、手を突っ込んで地道にモグモグしても時間掛かるし。
そのまま残すのは勿体ない。
「部分的に戻れないかな??」
そうしたら出来ることが広がる。
「やってみるか」
ふぬぬぬぬぬ、と、唸りながら力を込める。
唸れ俺の右手……、じゃなくて戻れ俺の右手!!!!
デロリンと突然右手がピンクに戻ったと思ったら形が崩れて伸びて落ちた。
「お? おおー!」
肘から先がスライムに戻った。
ちゃんと感覚もあるし、動かせるし、土も食べれる。
戻れ戻れと念じると、ゆっくり形が変わって腕になり、色が人のものになる。
「なんだやれば出来るじゃーん」
これをもうちょっと人の形を維持したまま器用に戻れるよう調整してみる。
すこし難しかったけど、慣れれば結構出来た。
スライムの事矮小生物だとバカにしていたけど、可能性の塊じゃないか。
「ふぅ、あとは誤魔化し用の道具だな」
適当な木の枝を手で齧って落とし、そのまま不要なところだけを溶かして加工していく。
筒状に空洞にし、形を整える。
「デデーン!できたぁー!ハンディ掃除機モドキ」
見た目はハンディ掃除機だが、持ち手の所に穴が開いていて、そこから掌を戻して下へと伸ばし、接している土を堂々とモグモグする。
俺ってば頭が良い。
「さて、続き続き」
街に戻った。
もちろん掃除機は収納したままだ。
門番に「お帰りなさい」と挨拶された。
なんだろう。妙に優しい気がする。
気のせいか。
「掃除開始!」
ハンディ掃除機モドキを地面に付けて進んでいく。
はしっこの方からモグモグモグモグ。
折り返してモグモグモグモグ。
「うーん……」
思ってたより美味しくないな。しかも美味しくなくてモチベーションも上がらないからかめんどくさくなってきた。
「止めた。やっぱりガバッとやりたい」
ハンディ掃除機モドキを放り投げ、端っこのほうに座る。
こっちのが早いし楽だ。
足裏を戻して土に戻り、表面のすぐ下をバレないように、土を動かさないように体を広げていく。
土ごと飲み込んで、ゆっくりゆっくり。
「こんなもんかな」
体に土と石と根っことが溢れてる。
その中で根っこだけを溶かして食べて、土は溶かさずに吐き出していった。
端から見たらサボっているけど、ちゃんとお仕事しているのだ。
しかし。
「……モヤシ食ってるみたい」
始めて知ったよ。
根っこって美味しくないんだな。
位置を少しずつ変えながらやること一時間。
土地全ての根っこの除去が完了した。
「終わりましたー」
「早いですね!!!!」
お兄さん声でかい。
あまりにも大きすぎて、他の人の視線を集めてしまっている。
しかしお兄さんはそんなことはお構い無しで続けて言った。
「一応念のために確認に行っても良いですか!?」
あれ?雑な仕事してたと思われてる?
失礼な。
「いいですよ」
疑うならば見るが良いさ。俺の仕事振りを。
大きな石も全部取り除き、しっかりと整えられた美しい土地がそこにあった。
「魔法ですか?」
「それ褒められているんですか?」
「褒めてますよ」
「魔法じゃないけど、裏技使いました」
想像以上だったらしい。
お兄さんは思わず依頼人を呼んだらしく、綺麗にされた土地を見て依頼人は感動していた。
「素晴らしい!!!君は凄いな!!!」
依頼人は素晴らしい素晴らしいと俺を褒め称え、なんと報酬金上乗せされた8シルビアが俺に支払われた。
機会があればまた頼みたいと言われたけど、どうしようかな。
手には二つの依頼で手に入った3シルビアと8シルビアがある。
銀色のコインが11枚だ。
これ、いくらなんだろうな。
二件終えたところで日が暮れたので、今日のお仕事はこれで終わり。
「いくらなのか分からないけどこれで買えるかな。とりあえず行ってみるか!」
お金を仕舞い、俺は武器屋へと脚を向けた。
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