第二話  始業式。早速ロッカーへ荷物を置きまくろう

 今日は始業式。僕の中学三年生が始まる。

 黒色の学生服装備の僕が登校すると、同じく男子は学生服装備・女子は紺色のセーラー服(青色リボン付き)&スカート装備・全学生共通学校指定紺色セカバンセカンドバッグ装備者が、続々と集まってくる。

 げた箱とかがある玄関ポーチに、クラス分けの大きな張り出しがあったため。

 僕は三年二組だったから、げた箱を探して、上靴も持って帰っていたのをカバンから取り出して履き、教室に向かい、黒板に出席番号順で席の場所が書かれてあったので、自分の席を探して座った。

 正方形のつるつる木の板が敷き詰められてある床。背もたれと座るところが木だけど鉄パイプなイス。机も木っぽく見えるけどつるつるしてて、下はやっぱり鉄パイプなの。を机の上に置いた。

 英語の辞書や国語の便覧とかの、学校に置きっぱ置きっぱなしにしておく物を早速持ってきていたから、重かった。そしてそれに耐えるセカバンの耐久力、さすが。

 設備はお馴染みだけど、それらの物を改めて眺めてしまっているのは、ちょっとどきどき? うれしい? うきうきしているからだろうと思う。

(だって結依ちゃんと同じクラスだもんね!)

 なんていうか……結依ちゃんはおとなしい感じの女子なのに、僕には結構声をかけてくれたり、旅行のお土産をくれたりするし、遊ぶことも多いし。

 だからこう……もっと結依ちゃんを楽しませてあげられたらな~なんて、勝手に思っちゃっててさっ。

(でも別に、結依ちゃん友達少なそうっていうわけでも、ないんだよねぇ)

 う~ん。やっぱり僕が勝手に思い上がっちゃってるっていうだけー……なのかな?

 今日は早めに来たこともあってか、結依ちゃんはまだ来ていないみたいだ。便覧とか後ろの白いロッカーに置いてこよ。

「おはようさん。道森も同じクラスだったな」

「ああ矢鍋やなべ、おはよう」

 矢鍋やなべ 桂太郎けいたろうは、小学生のときからしゃべっている男子の友達だ。

 身長は高め。ま、まぁ僕は男子の平均より少し下なんだけどね。

 矢鍋は父さんが塾の講師っていうこともあってなのか、成績はいいみたいだ。そんなに友達同士で成績の話をすることも、多くないけどっ。

 そんな矢鍋も、英語の辞書をロッカーに入れていたみたいだった。

「この前、父さんが大きなバックギャモンのテーブルをもらってきたんだ。奥茂おくしげ六場ろくばも誘うつもりなんだが、道森も来るか?」

「大きなバックギャモンのテーブル? ああうん、見てみたいかな」

「じゃあとりあえず土曜日でどうだ? 他のやつらも、その日で大丈夫そうならさ」

「うん、わかった」

 ということで、早速土曜日に、矢鍋のところへ遊びに行くことになった。

 矢鍋とは、テレビゲームもするけど、アナログなボードゲームとかをよくしていることが多いかな。

 僕は自分の父さんがきっかけでバックギャモンを知ったけど、周りの友達に知っている人が全然いない中、矢鍋が知っていてびっくりしたなぁ。

 さっき名前が挙がった奥茂おくしげ 桃次とうじ六場ろくば 徹人てつひとも、小学生のときからの男子の友達。僕の家でより、矢鍋の家で遊んだ回数の方が、ずっと多い。

「あいつらは……まだ来ていないな。土曜日でいいか、聞いておくよ」

「わかった」

 そうして矢鍋は、自分の席に戻っていった。

 ちょっとのおしゃべりタイムだったが、じわじわこの教室に、新しいクラスメイトが集まってきているようだ。

 音楽や技術や家庭とかのプリントをとじるファイルとかも入れて……

「おはよう、雪忠」

「ああおはよう、瑛那えな

 引き続きロッカーへいろいろ入れていたら、新居堂にいどう 瑛那えなが声をかけてきた。

 瑛那は小学校が別だったから、中学校に入ってから知り合って、クラスと委員会が一緒だったことから、しゃべるようになった女子。

 身長は……僕が負けているウッウッ。ということで女子の中では高め。きっと三年生になっても抜かせないんだろうなぁ……。

 髪は肩を越すくらいだけど、いつもひとつに三つ編みでくくってる。なので、遠くからでも瑛那がいることがよくわかる。

 なんでいつも三つ編みにしているか聞いたことがあって、それは『小さいときからこうしていたのが、今でも続いているだけよ』だって。

(……僕は男子だから、中学三年生で急成長! とか……あったりしない? わからないけど)

 今はお互いかがんでいる状態だけど、一月二月で身長負けていたんだから、四月で逆転しているなんてことは……ないさ……。

 なんて言ってるけど、そこまで身長気にしてるわけでもないんだけどさっ!

(だってその分結依ちゃんとの目線の高さが近くなるっていうことだしっ!)

「今年も同じクラスになったわね」

「てことは、瑛那とは三年連続同じクラスだったってことかぁ」

「そうなるわね」

 振り返ってみたら、なんだかんだでしゃべる機会があった瑛那なのであった。外で遊んだことはないなぁ。

 あ、僕は今日置ける物すべてを、ロッカーの中に入れちゃった。

「今日だけで、そんなに持ってきたの?」

「え? ああ、うん」

 瑛那が僕のロッカーをのぞき込んだ。

(近いっ)

 なんで女子って、近づいたら僕はどきどきしてしまうんだろう。ひょっとして僕、人見知りとか……? そんなことないと思ってるけど。

「あーえとー、荷物入れたし、こ、今年もよろしく」

「こちらこそ、よろしく」

(やっぱ近いっ)

 そののぞき込んでいた距離のまま、こっちに向いてよろしくされたので、近ぁーい!

 かがんだまま後ろへ一歩二歩すり足。瑛那が立ち上がり、自分のロッカーへ向かったのを確認すると、僕もそこで立ち上がり、自分の席へ戻ることにした。

(はぁ~……でも瑛那とはしゃべることなんて、慣れているはずなんだけどなぁ……)

 小学生のときの僕って、どうだったんだろう。あんまり女子と近くにいて、なにかを意識することなんて、あったかなぁ……

(……すいません結依ちゃんにはやっぱり意識していたと思います)

 でもなんていうか、小学生のときって、単純に一緒にいて楽しいからまた次も一緒にいたいーっていう感じで、今みたいな、顔を合わせるたびに緊張しちゃうだとか、他の女子とでもなんだか緊張するときがあるというか、んむむ~……。

(そんな結依ちゃんと、今年は同じクラスだー)

「うおあわぁ!?」

 僕が考え事しながら席を戻ってそのままイスに座ったら、なんと結依ちゃんが僕の席の前で立ってお出迎えしていたようだった!? 気付かなかった……。

 結依ちゃんは少し目をまばたきさせていたけど、いつも僕に向けてくれる笑顔モードになった。

 久しぶりの制服結依ちゃん。銀色のネームプレートも早苗結依の黒い文字が神々しい。

「お、おはよっ」

「おはよう」

 昨年はクラスが違ったけど、それでも遊んでた。でもでもやっぱり同じクラスの方がいいに決まってるよね!

「今年は同じクラスだね」

「うん」

 えーとうーんと、

「こ、今年もよろしくっ」

 さっきの瑛那戦で使った戦法を、こっちでも使ってみた。

「よろしくお願いします」

 あぁぁ頭少し下げられちゃったよ。

「よ、よろしくお願いします」

 ので僕も頭を下げておこう。

 よし。では頭を上げて。あれ、結依ちゃんその場に立ったまま?

「あ、えーと、結依ちゃんもロッカーに荷物置きにきた?」

「うん」

 お、おぅ。

「じゃ、じゃあ……どうぞ?」

 両方の手のひらを上に向けて、どうぞどうぞポーズ。

 結依ちゃんはまたちょっと笑顔してくれて、今度こそロッカーへ荷物を置きにいったようだ。

(結依ちゃんと同じクラスなんだなぁー)

 中学三年生は、いい一年間になりますようにっ。

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