約束の時間-A
シャンシャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャンシャン
ひんやりとした空気。
シャンシャンシャンシャンシャン
手と手を擦り合わせながら、白い息を吐く。
シャンシャンシャンシャンシャン
白いタイルが敷き詰められた広場一帯の真ん中、
ツリーの前に僕は立っている。
行き交う街ゆく人々。
お父さん、お母さんと手を繋ぐ子供。
イベントに向かう感じの女の子達。
犬と一緒に来ている、お爺さんとお婆さん。
皆、幸せそうな笑顔。
ツバのついた帽子を被った、オシャレなカップルが通り過ぎる。
途端に、自分の服装が気になった。
紺のスラックス。
淡い色のシャツ。
ニットベスト。
ダウンジャケット。
ショルダーバッグ。
バイトして貯めたお金で買った。
1人でお店に行って、店員さんに薦められるまま買ってしまった。
普段しない格好は服が浮いているような気がして、恥ずかしかった。
でも新調した眼鏡だけは自分で選んだ。
枠が銀色で細く、丸い形。
とても気に入っている。
制服以外で会うの、初めてだ。
学校では、毎日見てる。
待ち合わせしているのは、
同じクラスで、僕の前の席の女の子。
彼女とは、実は1年からクラスが一緒だったらしい。
僕はあまり人付き合い良くないし、友達も多い方じゃないから、知らなかった。
あと、女子ってなんだか苦手で、クラスの子でも避けてた。
でも…
授業中、
長い髪が風で揺れるのが気になった。
授業中、
黒板を向いた時の鼻先が気になった。
授業中、
足をクロスしているのが気になった。
いつの間にか、気になって、気になって、
授業中だけじゃなく、お昼休みも、放課後も、彼女を意識していた。
友達と話している時の笑顔が1番可愛い。
1度だけ話した事があった。
消しゴムを落とした時、拾ってくれた。
「これ、君の?」
「うん、そう」
「そう。良かった。その消しゴム、消しやすいよねー」
そう言って彼女は、僕に向かって笑顔を向けた。
ある時、彼女にサッカー部の先輩が告白したらしいと聞いた。
急にただ彼女見ていただけの、自分が情けなく思うようになった。
彼女ともっと話をしてみたい。
彼女の笑顔をもっと見ていたい。
欲が出た。
今日は友達伝手で彼女に約束を取り付けた。
シャンシャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャンシャン
彼女は来てくれるだろうか。
シャンシャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャンシャン
もうすぐ、約束の時間。
シャンシャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャンシャン
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