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 皆様、今日は味噌についてお話ししましょうか。

 皆さんご存じの通り、味噌とは大豆から作られる発酵食品です。


 皆様が良く食べているのは恐らく「米味噌」でしょう。

 此方は、大豆に米麹と塩を混ぜで発酵させたものでして、一般的な味噌は此方になります。


 ですが、実は味噌にも種類はあるのですよ。


 例えば、麦味噌。此方は米麹の代わりに麦麹を使用して発酵させた味噌となります。

 おもに、九州や四国、中国地方で作られている味噌です。


 次に豆味噌。

 こちらは大豆と塩だけで作った味噌になります。米麹や、麦麹は使わず。

 大豆を麹に使用したもので、一番古くから作られた味噌です。

 発祥は愛知。そして岐阜、三重この三県のみで造られており。

 八丁味噌、名古屋味噌、三州味噌、たまり味噌は此方に当てはまるそうです。


 他にも上げたらきりが無い程、あると思いますがソコは割愛。


 さて、そんな味噌の作り方を簡単に記しましょうか。

 と、いっても実はそんなに難しい物ではありません。

 

 ご自宅で味噌を作っている方も多いのではないでしょうか?

 納豆と同じで、材料さえあれば自宅で造れる発酵食品になります。


 まず、最初に大豆を用意し、コレを水に付け吸水させてください。ここは納豆と変わりないですね。

 この作業を、浸漬しんせきと言います。

 時間は平均8時間。大豆は二倍ほどに膨れ上がるはずです。


 余談ですが、味噌の種類によってこの浸漬の時間は変わるようです。

 赤味噌系であるなら3時間から5時間。白みそであるなら、16時間も付け、水替えもするそうです。


 この浸漬が終わりましたら、大豆を蒸煮じょうしゃしてください。

 簡単に言いますと、蒸すように煮る。蒸した後に煮る。

 まあ、もっと簡単に、潰れるまで柔らかく煮るか、蒸してください。

 違いが余りなかったので、難しい事を書きましたが、やっぱり納豆と同じですね。

 因みに蒸煮むしにとも呼ぶそうです。


 此方が終わりましたら、一旦冷やしてから大豆を思いっきり潰してください。

 粉々、いいえ。ぐちゃぐちゃになるまで、徹底的に。拳だろうが、瓶だろうが何を使ってもいいです。


 潰し終わりましたら、この中に塩切した麹と種水を入れて混ぜます。

 前者は塩を混ぜた麹と、後者は水分調整用の水、または大豆の煮汁の事です。


 種水を入れる理由は、風味や甘味、栄養素が加わるからだそうです。

 ただし、必ず入れる必要はないようですよ。


 ちゃんとした塊、耳たぶぐらいの柔らかさになれば十分。


 此方終わりましたら、用意して置いた容器に敷き詰めるように入れてください。

 昔、粘土で遊んだことがあるでしょう?

 あの感覚で、ぎゅうぎゅうに押し付けるように敷き詰めちゃってください。


 後は、落し蓋をして完了。

 コレを5か月から1年程度、常温で暗い場所で発酵させるのです。


 途中で、天地返しと言うものをすれば発酵を促進させる事が出来るそうですが。

 此方も簡単で、味噌を別容器に移し替える事です。ただ、カビも生えやすくなるので、お気を付けを。

 もし、天地返しを行うのなら、発行を始めてから3か月後を目安にしてください。


 そしてカビに関しては、落し蓋の上に重石を乗せれば、生えにくくなるそうな。

 例えカビが生えても、取り除けば食べられますので、カビ=失敗ではありません。


 そして、発酵の種類は。

 「乳酸発酵」から「アルコール発酵」の二つになります。


 さて、では次は醤油の話をしましょうか。

 醤油は、大豆と麹と塩、コレにプラスして小麦が付きます。


 大豆に関しては同じです。浸漬して蒸煮。

 小麦は炒煎しゃせん割砕かっさいしましょう。


 つまり、蒸した大豆と、炒めて砕いた小麦を混ぜ等量配合するのです。

 この混ぜ合わせたモノの中に、種麹を混ぜて、醤油麹を作ります。


 更にコレを食塩水と一緒に混ぜ、アミノ酸を入れ「もろみ」を作った後に6か月から12か月発酵させ、熟成。

 此方もまた味噌と同じく「乳酸発酵」から「アルコール発酵」となります。


 コレが終わりますと、漸く圧搾。

 絞って、漸く醤油が出来るという訳です。

 普通に考えて、一般家庭で造るとなると無理ですね。



 ……さて、次は如何します?

 清酒の話でもしましょうか?濁酒どぶろくでも良いですよ?

 それとも、もっと簡単な甘酒の話でもしましょうか。



 ……いえ、思い切って、麹の話をしちゃいましょう。



 麹とは、蒸した穀物類に麹菌を付着させ増殖させた加工品の事を言います。

 今回は簡単に米麹の説明にしましょう。

 作り方は簡単。


 洗ったお米を1日浸漬。

 これを1時間程、蒸煮させます。

 蒸す工程が終わりましたら、冷却。

 ここにを入れて、種付けをし。


 これを室温28度から32度。湿度70%から80%の室内に1日寝かせます。

 コレを床入れと言います。


 床入れが終わりましたら、床もみ。盛り。仕舞いをし、翌日には出来上がるそうです。

 この作業を「製麹せいぎく」と呼び、麹で造られた発酵食品を「醸造じょうぞう」と呼ぶのです。


 ――え?今までより適当だ。適当が過ぎる?

 ええ、そうでしょうとも。ぶっちゃけ、昔読んで本のままに書いていますから。


 だって、この作業に私は入れませんから。


 皆さん。私が当たり前に麹、麹と言っていますが、謎な部分があるでしょう。

 当たり前に出て来て一切説明していないモノがあるでしょう。



 ――『種麹』っていう、存在がね。




    ◇




 「種麹とは、米など穀物に麹菌を培養させ、胞子に纏わせた後、乾燥か冷却させたものです。芽を出したその姿が白い菌糸で伸びていく姿で、それはまるでモヤシの様だと言われており。種麹を作る店を種麹屋は『もやしや』とも呼ばれ……ていたそうです」

 「……へぇ」


 「分かりますか、パーシバルさん」

 「いや?」


 「ちなみに麹菌とは、二ホンコウジカビとも呼ばれており、学名アスペルギルス・オリゼー。このアスペルギルスと言う名の付くものは毒性を持つ個体が多いです」

 「じゃ、お嬢。ついに本当に毒にまで手を付けるって事か」


 「ですが、オリゼーはその中でも毒を持たない存在です。そして、このオリゼー。麹菌ですが、平たく言ってしまえば、カビです」

 「お嬢、遂にカビ迄食べる気になったかぁ………」

 

 

 ハロー、こんにちは、皆さま。

 今日はお日柄も良く、太陽が暖かい、日本で言うと10月上旬の一日です。

 私が『酢』を始めて造って、あっという間に2ヶ月程が経ちました。


 一気に日数が過ぎている?仕方がありません。皆さんも大して面白くもない私とお父様の話を聞きたくないでしょう。

 簡単に言えば、あの後。お父様には私の『発酵食品造り』は認めてもらい。『酢』も広まってきております。


 私事と言えば、一ヶ月前に白ブドウからジュースを作り、更にソレをアルコール発酵させて、またそれを酢酸発酵させて見事に白ブドウ酢を造り上げる事が出来たことぐらいです。

 先日には、村の赤ワイン作りも楽しんで参加させて頂きました。


 そちらが気になる?いえ、今回は別の試みを行いたいので、私のワイン作りはすっ飛ばさせて頂きます。


 さて、話は戻って。隣で小煩い助手君が何やら騒いでいますが、今日はそんなパーシバルさんに頼んで今年のお米を貰う手筈になっています。


 ご安心を。お父様のお許しを得てから、パーシバルさんの田んぼの一つ借りる形で買い取り、ちゃんと収穫を手伝ったうえで、お米を貰う事になっているのです。世話に関しては「お嬢がいるとジョシュアが後々面倒だから良い。その分の給金は貰っている」とか言われまして追い出されましたが。


 ま、なんにせよ。今日は取れたてのお米を貰う為に此方にお邪魔している次第にございます。



 何故お米に拘るのかって?

 はい、簡単です。

 私、『味噌』を作ってみたいのです。


 その味噌作りに欠かせないものは何でしょう。

 ――はい、その通り『麹』ですね。

 コレが無いと何も始まりませんから。



 だから、今回は『麹』を作るために『種麹』造りを始めたいと思うのです。



 「――で、その種麹とやらは、どうやって造るんだ?」


 当たり前の様にいらっしゃるジョシュア様が問いただしてきました。

 ええ、最もですね。ここで、早くも一番の問題が発生するのです。

 私はまじまじとジョシュア様を見つめ言いました。



 「分かりません」

 「――は?」

 「いえ、違いますね、――今回一切自信がありませんの!」



 此方が今回の大問題となります。

 いや、本当に。



 ――『種麹』って、どうやって造るんだよ。



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