2-1
『私ね、この作者として、出来るだけ自分の考えた
最後、別れる時。ユーリ嬢は、それは綺麗な笑顔で、そう言葉を言い切った。
自分もコレから困難が待ち受けていると言うのに、おくびにも見せない。素晴らしい笑顔。
彼女は「ジュリアンナ」と「ユーリ」。
どちらも心から愛しているのだろう。どちらの幸せも心から願っているのだろう。
それだけは痛いほどに伝わった。
だから、私も微笑む。
『ええ、ユーリさん。ありがとう。―― 貴女も絶対に自分だけの幸せを掴んで』
激励の言葉には物足りないかもしれないけど。この言葉を、最後に彼女に送ったのだ。
◇
さて、納豆は皆ご存じだろうか。
大豆に納豆菌を付着させ、発酵させた。日本発祥の食べ物である。
と、言っても。世界各国にも類似した食べ物はあるそうだが。
色んな成分が含まれていますが、特にビタミンが豊富。ビタミンB₂にビタミンK。
ビタミンKは骨粗しょう症予防になるそうな。
あの良く見る一パックには、沢山の栄養が詰まった。自然栄養食品というわけ。
作り方は簡単だ。十二分に煮詰めた大豆と、納豆菌。「納豆」があれば良い。
煮詰めた大豆に、納豆を混ぜ込み、数か所穴を開けたラップを被せて。
40度の温度をキープして1日、2日発酵させると納豆が出来る筈。
簡単に記せばこう、もっと詳しく書くとややこしくなるので割愛させていただこう。
それに、これは現代のお手軽納豆の作り方です。
当たり前の様に「納豆菌」と「納豆」を出してしまいましたからね。
此処は現代じゃなくて、異世界。乙女ゲームの世界。
それも18世紀から19世紀程のヨーロッパモデルのゲームの世界です。
つまり、納豆を作るには、「納豆菌」から手に入れなくてはいけないのです。
いえ、此方は簡単だったのだけど。
私は追放された元悪役令嬢、ジュリアンナ・フランソウワーズ。
追放されて早一週間。
早速ですが、貧血を少しでも良くするために、この納豆作りを作らせて頂きます。
「では、納豆作りを開始しましょう」
私は胸を張って、材料と向き合っています。
用意するものは大豆。此方では、似た等らしきものだけど。
準備に関しては、現代と変わりありません。
まず、この大豆。
水に浸して、一晩置いておきます。
水の量を多めに入れておくのが良いでしょう。
一晩経てば、水を吸い大豆は大きく膨らんでいるはずです。
次に此方を、蒸していきます。
普通の蒸し器で十分です。
大豆が簡単につぶれるぐらいまで蒸します。
「よし、次の準備ね!」
これで、大豆の下準備は終わりです。
蒸している間に次の準備に取り掛かりましょう。
納豆に一番欠かせない物。
それは勿論「納豆菌」こちらです。
え?「納豆菌」なんて簡単に手に入る物じゃない?
――ふっ、ふっ、ふっ。
実は、簡単に手に入れられる物なんですよ。
「ここで、藁を用意します!」
私が、取り出したるのは「藁」
稲穂や麦、イネ科植物の茎を乾燥させたアレ。
家畜の飼料に用いられている、アレです。
田舎の田んぼ。
稲刈りが終わった後、小さな屋根の様なモノが並んでいるのを見たことありませんか?
ああして干され、乾燥した物を「藁」という訳です。
藁であるならなんでも良いと思うかもしれませんが。
「稲わら」をご用意ください。この世界でもお米が流行っていて良かった。
どうして稲わらかと言いますと。
この稲わらが、何より重要な「納豆菌」そのものだからです。
と、言うのも実は「納豆菌」
納豆の名を持ってはいますが。
その実は「稲わら」に多く生息する
なので、納豆とは、この稲わらに存在する菌を大豆に付着させて発酵させると言う事に成ります。
まずは、この稲わらを
藁の入れ物ですが、良く納豆の宣伝で見る。藁の容器にするのです。
「……たしか、真ん中を折るのよね。」
――私も何分初めての出来事なので。昔見た本のままに簡単に作ります。
必要な分の藁を手に取って、ソレを半分に折る。
そして、長さを調節しつつ、端を糸紐で縛り上げ、余分な部分は切って置く。
これで、藁苞は完成。
次に、この藁苞を熱湯で殺菌しましょう。
100度であるなら、納豆菌は死滅致しません。120度の熱湯で初めて死滅するそう。
むしろ、納豆菌の他に雑菌などが含まれている可能性が高いため、この作業は大切です。
熱湯殺菌が終われば、藁苞の準備は完了。
ちょうど、大豆の準備も完了したので。ここからが本番です。
と、いってもやはり簡単なのですが。
まず、藁苞の真ん中を広げ開けます。「入れ物」いう言葉を意識して穴を広げましょう。
次に、この中に熱湯殺菌をしたスプーンを使って、開けた藁苞の真ん中に、大豆を限界まで中に敷き詰める。
はい、これで。納豆の下準備は完全に終了なのです。
問題は、この後。
「これで、後は40度の環境で一日発酵させれば――」
これ、之よね。
問題はどうやって、40度を保つ環境を作るか。
ヒーターとかないし、そもそも温度計もない訳だし。ここからは感と知識で――
「ジュリアンナ!なにをしている!!」
――ここで、私の名を怒号のごとく叫ぶ存在が現れた。
私は、見つかったと頭を抱えて。声をした方角を見た。
ああ、40度よりも以前に大きな問題があったようだ。
私の目に映るのは見目麗しい殿方が一人。何故かこちらも私と同様に頭を抱えている。
ため息が零れる。
私は、私の為に「納豆」を作りたいのですが。
それを邪魔する存在が、今まさに目の前に現れたのです。
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