第11篇 耳に蓋

耳には蓋があるのだろうか

喧騒に包まれたこの教室で、君以外の声が全部潰れてしまうんだ

僕が一番遮断してほしい声は綺麗に通すくせに

先生の声なんてまるで聞こえない


ばふっと音がして、白粉が飛んできた

目をやると君がチョークの粉をはたいていた

僕の視線に気づいて、君は申し訳なさそうに笑った


気づいていたんだよ、僕

君の出す音じゃなければ耳に届かないから


君が鼻歌を歌う

僕以外は気づいてもいない声


僕と君を繋ぐ、全て


君の声

ふとすると小鳥のハミングみたいで

気づいたら小川のせせらぎで

怒ったときにはガラスになる

笑ってるときは世界でいちばん美しい楽器の音色のよう


ああ、その声が聞きたいから

僕は耳に蓋をしたんだよ

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