第10篇 「そばにいて」っていう呪いで殺した

全部が壊れた、中3の夏。

偶然出くわしたあなたが、私を拾い上げてくれた。


あの時、私を助けるための嘘で、あなたは牢屋に転がり落ちた。


ひどく甘ったるい匂いが立ち込める、薄暗がりの路地裏。

私はあそこに自分の理性と誇りを置いてきてしまった。

けれど身も心も削られた私に真っ赤なバッドは輝いて見えた。


よく晴れた日、あなたの制止も聞かないで抱きついた。

その時、あなたが絶対離れないように鎖を巻いた。

私のそばにいてくれるように。


私といることであなたは孤立していった。

酷いと思うけど、私、嬉しかったよ。


あなたの心を見ないふりをして、非道をわかってそばにいた。

優しいあなたが私を置いていけないように。


私があなたに依存しているうちに、あなたはみるみる弱っていった。


鎖を外そうと持ち上げたら、錆びた鎖があなたの首に食い込んで、

見るのも耐えないくらいに馴染んでいた。


ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい


いつですか、いつ私はあなたを殺しましたか―――


ああ、私は、

とっくの昔にあなたを殺していたんですか

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