第51話 西園寺との対峙
ドガ!
背後から、西園寺の顔面に思いっきり拳を入れた。
会心の一撃だ。完全に入ったと思った。だがヤツはこちらに振り向くと同時に、右手でおれの体を振り払ってきた。
「ぐわあぁ!」
ヤツは軽く振り払っただけの仕草をしていたが、おれの体は10メートルくらいふっ飛ばされた。ダメージもハンパない。口の中に血の味が広がる。
「クソッ! なぜ、こんな力が……」
「フフ、これは雨宮くんの能力、
雨宮の能力まで使えるのか。これはいよいよヤバいな。身体能力が数段上をいっているということは、いつでも殺せるのか。今は遊ばれているだけってことだ。
ゴリッ。
起き上がろうとすると、体の下に何かがあることに気がついた。
ネット弾で捕縛されたナイトの方に目をやる。
「ナイト! 大丈夫か!?」
「僕は大丈夫、気にせずにそいつをボコボコにして!」
「へ、言われなくてもやってやるぜ! よーく見とけよ。ナイト!」
おれは精一杯の強がりを見せると下半身にグッと力を込める。
「クソ、うおおおおぉ!」
おれは起き上がると同時に駆け出し、西園寺に向かっていった。
「おらああぁ!」
「さっきより動きがいいじゃないか」
ヤツはフェイントを数回混ぜたおれの左フックを難なく避けた。そして、右の脇腹にヤツの拳がめり込む。
ドゴッ!
「グホッ!!!」
鈍い痛みと共に、おれの体はまたしても宙を舞う。
ズザザザー!
吹っ飛んだ先で、強烈な痛みに悶えるも、狙い通りの方向に吹っ飛んだことに安堵した。
「西園寺……」
「どうした? 命乞いでもする気か?」
西園寺はゆっくりと近づいてくる。
「バーカ、誰がするかよ……。おら、もう一発!」
おれは勢いよくヤツに飛びかかった。
ドン!
そして、ふっ飛ばされる。もう少しだ。チャンスを待った。
「おらああぁ!」
ドガ!
ズザザザー!
「いってー!」
動こうとすると胴体が痛む。あばら骨が何本か折れている気がする。
広間の上をチラリと見る。
「今だ!」
おれは、側に落ちているガレキの破片をヤツの上空めがけて投げつける。
その破片は、ちょうどシャンデリアを吊るしてあるロープにヒットし、シャンデリアが落下した。
そう、シャンデリアは西園寺の真上にあったのだ。
ガシャーン!
派手な音を立てて落下したシャンデリアはヤツの体を完全に押しつぶした。ヤツを完全に覆い隠すくらいデカかったので、よく見えなかった。
「よっし! ドンピシャ!」
「フハハハハハハ!」
グシャグシャになったシャンデリアの下からヤツの高笑いが聞こえる。
「少し、おもしろかったぞ。影山くん。少しな」
ヤツの体を潰していたはずのシャンデリアが浮き上がり、吹っ飛んだ。そしてほぼほぼ無傷の体でヤツが起き上がるのが見えた。
「残念だったなあ。こんなものが落ちてきたところで今の俺の体にはキズ一つつかなかったよ」
そう言ったヤツは、ようやく異変に気づく。
「ん? 影山くん、どこにいった?」
「ここだよ」
おれはヤツの目の前にいた。透明化した状態で。
そして、左手で西園寺の口を開け、右手に持っていたガレキの破片を突っ込んでやった。
「グホァ!」
大きく目を見開き、慌てるヤツの顔面を思いっきりぶん殴る。
「オラァ!」
グシャ!!!
鼻が潰れ、歯が何本か折れる音がした。ヤツの体は盛大に10メートルほど吹っ飛び部屋の壁にめり込んだ。
「おっし! 効いた効いた。やっぱすげーなこれ」
おれは体に埋め込んだ魔石を見た。さっき倒した細井の体から出たもので、合計で8個、この部屋の中にガレキに混じって落ちていたのだ。それをコッソリと拾い集めて体に埋め込んだ。
「立て、西園寺! 勝負はここからだぜ?」
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