第47話 いざ、王宮へ


 おれと月見里とジュリアンの三人は、ナイトの背中に乗り込み王宮の上空に飛び立った。


「透明化発動!」


 おれの体に触れているみんなも同時に透明化した。これでバレずに城内に潜入できるだろう。


「まずは中庭に降りて、城内を見て回ろう」とおれが言うと、


「ねえ、何もこんな真っ昼間から入らなくても、せめて日が落ちてからのほうがよかったんじゃない?」と、月見里が言う。


「攫われたターニャが心配だ。事態は一刻を争うんだ。それにどうせ透明化するんだから昼も夜も関係ない」


 そんなことを言ってる間に、すでに中庭に降り立っていた。


 おれたちは手を繋ぎながら城内をゆっくりと進んだ。すると広間に出た時、突如として違和感に襲われた。


「なにか妙は気配がするな」


 そう言って辺りを見回していると、広間の中に二つの影が現れた。見覚えのある顔。クラスメイトの桜坂と篠塚だ。


「影山、お前たちがいるのはわかっているぞ」と、桜坂が大声をあげた。なぜだ。奴らには透明になっているおれたちの姿が見えているのだろうか。


「おとなしく出てきなさいよ! それっ!」と、篠塚は持っている杖を振るった。


 それと同時に不穏な風があたりに立ち込めたかと思うと、透明化が解除された。


「なんだ? 透明化が、いったいどうして……」


「ふ、ワタシの能力は、異端の魔女オッド・ウィッチ。能力を無効化する暗黒波動を生み出せるのよ」


 篠塚は自慢げにそう言って、杖を振るった。


 こちらの能力を封じる能力。確かに篠塚の能力は強力だ。


「けけけ、影山、悪いがここまでだ。侵入者は殺せと命令されてるんでな」


 桜塚の手になんとマシンガンのような物が現れる。信じられない。この世界に銃火器など存在しないはずである。


「いい出来だろ? 気に入ってんだよ。俺の能力、違法鍛冶屋ギルティスミスは、想像しうるどんな武器でも作り出すことができるのさ」


「な、なんだってんだ? お前たち、どういうつもりだ?」


 おれは二人に対してそう言った。


「はっ、お前たち、反逆者なんだろ? 西園寺の命を狙ってるそうじゃないか。そうはいかねえぞ」


 桜坂はおれたちを睨みつけながら叫ぶ。


「何を言っている!? 仲間が何者かに攫われたんだ。おれたちは助けに来ただけだ! お前たち、西園寺の仲間なのか? やつのことを何か知っているのか?」


「うるせーな、おしゃべりは終わりだ、まとめて殺しちまうぜ」


 そう言って、桜坂はマシンガンのひきがねに指をかけた。


 カチッ! カチッ……。


 だが、マシンガンの弾は発射されなかった。何かが詰まったような音を出している。


「あれっ……、おかしいな。どうなってんだ?」


「っは! だっさーっ! おかしいな〜っだって、聞いて呆れるわ」


 おれの後ろで月見里が毒づいている。おそらく彼女が何かしたようだ。


「な、月見里……、糞メンヘラ女が、俺の武器に何かしやがったのか?」


「ばーっか、あんたの手のマシンガンよーく見てみ?」


「な、なんだこりゃ!? カビが、カビだらけで詰まってやがる!?」


「きゃははっ! 黴菌王かびゑんゑん発動! どーっだ! ミミの闇魔法はモノにだってかけれるんだから!」


 元々メンヘラで有名な月見里だが、戦闘においてはいつも頼りになる存在だった。


「ちょ、ま、待て! まず、お前ら能力が使えないはずだろうが! 篠塚! どうなってる!?」


 桜坂は、隣にいる篠塚を責め立てる。


「ワタシの能力はちゃんと発動してるわ! 現に透明化は解除されてるし! なんで!? なんでミミには効いてないの!」


「篠塚のばーっか! ミミは闇魔法を操る能力者だよ? デバフを向こうにする術だってちゃーんと身につけてるんだからっ!」


 さすが月見里、闇に対抗にするには闇だな。


 その時、ジュリアンが桜坂と篠塚に向かって走っていく。


「ジュリアン!」


「私には能力などないから、能力無効など無意味! はあああ!」


 確かにそうだ。ジュリアンは元々、生粋の剣士である。能力など使っていないのだから能力無効のデバフなどは意味がないのである。


「くそっ! 剣士もいたのか! 違法鍛冶屋ギルティスミス! 二本刀デュアルソード!」


 キン! キン!


 桜坂はマシンガンを捨て、新たに能力を使い両腕に刀を出現させ、二刀流でジュリアンと剣を交える。


「ふ、いい剣だな。東の国のモノか。容赦せんぞ!」


「影山くん、ここはミミとジュリアンに任せて、先に行って!」


「そんな、いいのか!?」


「カゲヤマー! ここは私たちがなんとかする。先に行けえい!」


「よし、月見里、ジュリアンさん! 任せた! 行くぞ、ナイト!」


 おれとナイトは二人に任せて、先に進むことにした。

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