第44話 神獣ナイトとの誓い
「おいおい、僕が喋れることってそんなに驚くことなのかい? この世界にはいろんな種族がいるじゃないか。僕はただの神獣族さ」
おれとターニャは、顔を見合わせた。ターニャは目をパチパチとさせている。
「ナ、ナイト。お前、神獣って……ただの猫じゃないんだな……なあ、ターニャ、神獣ってけっこういるのか?」
「いや、涼介……ボクも初めて見たよ……神獣って絵本の中の話だと思ってた」
ターニャの驚きぶりからしても、神獣が伝説上の生き物という認識なのはこの世界の住人も同じようだ。
「そんな驚かなくても……僕は君たちにとても感謝してるんだよ。命を助けられたことにね。だからこれからもいっしょにいたいんだ。リョウスケ、ターニャ、よろしくね」
「そ、それはもちろん。なんか、不思議な気分だ」
「こちらこそ、よろしくね。ナイト」
おれたちは改めて挨拶をかわし、あれこれと話をした。どうやら神獣は生涯を
「僕のご主人はリョウスケだ。契約を結んでくれ。生涯にわたり君を護ろう」
「わかった。ナイト。おれもお前と共に生きることを誓うよ」
「涼介ってほんとにすごいね。まさか神獣まで従えちゃうなんて」
ターニャがおれの側に寄ってくる。なんだか照れてしまう。
「ところで神獣って他の動物とどう違うんだ?」
キレイな毛並みに整った顔立ち。見たところ、神聖な気配が漂っているものの大きい猫といった感じが否めない。
「うーん、そうだね。僕ができることと言えば空を飛ぶことと魔法を操るくらいなんだけどさ」
「えええ!? 空飛べるの!? 翼もないのに!?」
「なぁに、空を飛ぶのに翼なんていらないよ。ほらっ」
ナイトはそう言うと同時に、空中に浮遊していた。重量の影響など全く受けてないかのごとく、空を駆けまわり、空中を縦横無尽に走り回る姿を見せた。
「ナイト! すごいじゃないか! 本当に空を飛べるんだね」
「そうだよ、涼介。背中に乗ってみるかい?」
「い、いいのか!」
「もちろん、ターニャもいっしょにどうぞ!」
「ボクもいいの!?」
おれとターニャはナイトの背中に乗り空へ飛び立った。
「すごいじゃん! 空を飛ぶのってこんな感じなんだね!?」
おれの背後でターニャが歓声をあげている。もちろんおれも感動していた。
「ナイト。魔法も使えるって言ったよな!? どんなものなんだ?」
「なぁに、僕の使える魔法なんてたいしたことないよ。単純な強化魔法さ。いつか使う機会があればご主人にかけることになるよ」
「そっか。なぁ、そのご主人ってのやめないか? リョウスケでいいよ。名前で呼んでくれ」
「そう? ボクはご主人って呼び方いいと思うけどね。おもしろいし」
ターニャはそう言って苦笑いしている。
「じゃあリョウスケって呼ぶことにするね」
「ああ、頼む」
そんな会話をしながら町の上空を飛び回っていると、いつもは遥か向こうに見えていた城の全貌が見えることに気がついた。この大きな町の中心にそびえ立つ城、その上空には暗雲が立ち込めているように見える。
「なぁ、ターニャ。城には行ったことあるか?」
「ボクはないよ。普段から城に近づく人はめったにいないよ。兵士が目を光らせているしね」
「そうか」
城の上のほうにある小窓から、誰かがこちらを見ている。向こうもこちらを注目している気がした。向こうはおれのことを知っている。なんだかそんな気がした。
「あれは……」
「どうしたの? 涼介。城に誰かいた?」
「いや、知った顔がいたような気がしたんだ」
「え、王宮に知り合いがいるの?」
「どうやらそうらしい」
あれは西園寺だった。久しぶりに見たが間違いない。なんだかヤツとは近いうちに会うことになるような、そんな気がした。
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