第41話 細井の暗躍 細井視点①
王宮にて。
「さ、西園寺くん、また影山が動いたようだ。雨宮がやられたらしい。つ、ついでに
僕は窓際にいる西園寺くんに向かって、事態を報告していた。
「そうか。俺の国で勝手なことばかり……目障りなやつだ」
彼はそう言いながら、ゆっくりとこちらを振り返る。そして目があった瞬間、思わずそらしてしまった。彼の目が苦手だった。全てを見透かされるような目。
「ど、どうやら雨宮の話では、影山は透明になる能力を持っているらしい。し、知らないうちに監視されていたと言ってた」
「へえ、透明人間か。それは便利そうだな、是非欲しい能力だね。居場所はわかってるのか?」
「ぼ、冒険者ギルドに所属していて冒険者ランクはC、近くの宿を長期契約してる。あ、じゅ、獣人地区によく出入りしているみたいだよ」
「そうか。しかし雨宮を倒すとは、彼、なかなかやるね」
「そ、そうだね。正直ビックリしたよ……郷田、姫宮に続き、ま、まさか雨宮まで」
「そろそろ目障りになってきたね」
「さ、西園寺くんがそういうなら、誰かをけしかけてみるよ」
「おいおい、俺は別に何も言ってないぞ?」
僕が顔を上げると、ニヤリと笑う西園寺くんと目があった。その表情はとても同い年の人間のものとは思えないほどの違和感だ。
「ぼ、僕も目障りだと思ってたところなんだ。ずっと前からさ。だから、透明人間なんだったら、いっそのこと存在自体を消しちゃおうよ。へへ」
「まあ、まかせたよ。ところで雨宮はどこに?」
「あ、ああ。地下牢にいるよ。もしかして、
「もちろん。ちょうど雨宮のような能力が欲しかったんだよ。単純な身体強化能力ほど優れている能力はないよ」
「た、確かにそうだよね。いいなあ。西園寺くんの才能がうらやましいよ、ほんとに」
「……細井くん、君には感謝しているよ。これからも側にいて俺をサポートしてほしい」
彼が嬉しいことを言ってくれたので、僕は涙が込み上げてきそうになった。
「さ、西園寺くん! こんな僕を頼ってくれて嬉しいよ。
「郷田か。ふふ、彼は体格には恵まれていたが、乱暴で品がなさすぎる。リーダーとしての資質は皆無だったね」
「そうだね。西園寺くんとは格が違いすぎるよ」
「いいかい、細井くん。人間は生まれ持っての才能で全てが決まる。ほとんどの人間はゴミクズのような才能しか持っていない。だからこそ、この俺のような人間が必要なのだ。才能溢れるリーダーが世界を導き統べる必要があるのだ。なあ、細井くん、俺と共に素晴らしい世界を作ろうじゃないか」
「う、うん!」
僕は西園寺くんの言葉に圧倒され、力強く返事をした。
「ふふ、影山。まずはお手並み拝見といこうか」
そう言って窓の外を見つめる西園寺くんは、言葉で言い表せないほどの不気味さがあった。
僕は嬉しかった。この男が何をやってのけるのかを一番近くで見届けることができるのだから。
まあ、まずは手始めにクラスメイトを何人か影山にぶつけてやることにした。
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