第7話 俺様の活躍② 郷田視点
「ぎゃーはっはっは! 愉快愉快!! 酒はうめぇな! 異世界には法律なんてないから飲み放題だぜ!」
俺様たちは冒険者ギルドの酒場で盛り上がっていた。一週間前に、獣人地区の家から奪った金で連日豪遊していた。
「ねーねー、郷田! そろそろ金無くなっちゃうんじゃなーい?」
「ああん? よし、ケンタ! お前、どっかの家から金を奪ってこいよ」
「キャハ! いいねそれ! ケンタ行ってこいよー。ノリでさー」
マリエもいっしょになってケンタをけしかける。
「無茶言わないでよー。今回の獣人地区の一件で町中に兵士がうじゃうじゃいるんだからさ」
「ハハ、バレやしねえよ。ビビってんのか? 目撃者のネズミ族の親父もぶっ殺したことだしな」
「キャハハ、あの親父最後までイジ張ってたよねー。ちょーウザかった!」
「ねーねー、僕たち、つかまったりしないかなあ? 大丈夫かなあ」
ケンタが情けないことを言い出した。こいつビビりすぎ。
それを聞いたマリエがケンタにこう言った。
「ちょっと、ケンタ。もし捕まったとしても
「ええー!
二人の会話に嫌な名前が出てきたため、俺様は話をぶった切った。
「っけ! 黙れお前ら! 誰が
「あの野郎……。なんの能力かはわからねえが、すぐに王宮に入り込みやがったな。マジで腹立つぜ」
「ねえ、郷田。とりあえずさ。今はおとなしく、クエストでも行ってお金稼ごうよ?」
「だあぁー! わかったよ。飯も食ったし適当にダンジョンもぐるぞ!」
掲示板の前へ行くと、人だかりができて盛り上がっていた。何やらとびっきり報酬のうまいクエストが出たらしい。
「ダンジョンの探索クエストだ! これはすげえダンジョンだぞ!」
「すっげえ! 幻のお宝が眠るダンジョンが発見されたらしい!」
「誰が最初に挑戦するんだ? やっぱりAランクのパーティーか?」
「早いもの勝ちだろここは! オレたちが行くぜえ!」
ボガッ! ドガッ!
俺様は雑魚どもを蹴散らして掲示板の前に進みこう言った。
「そうとも! これは早いもの勝ちだ! だから俺様たちが行くことにするぜ? 文句のあるやつはいるか? ああぁん?」
コブシを前に突き出し、周りを見回した。その場にいた冒険者たちは下を向いて黙っていた。
「よーし! じゃあこのダンジョンのお宝は俺様が独り占めだ! ギャハハハ!」
俺様たちはさっそくダンジョンに行き探索を始めた。そして、すぐにあることに気がついた。
「おい、ケンタ! マップはねえのか? どっちに進めばいいんだ? 」
「未探索のダンジョンだからマップはないよ?」
「ああん? なんでねえんだよ!」
「だって誰も入ったことないんだもん。そりゃないよ。だから慎重に進んだほうがいいね」
「……ふーん。そうか。じゃあ、ケンタ。お前が先頭な」
「ええええ! なんで僕が?」
「お前、火ぃ使えるじゃねえか! その火の魔法で先を照らしながら進めよ」
「もう、わかったよ……」
ケンタを先頭にして、俺様たちはしばらくダンジョンを進んだ。すると、分かれ道でケンタがこう言った。
「右と左、どっちに行く?」
「さっきは右だったしな。左だ! と見せかけてまた右だぁ! 行け! ケンタ!」
「なんだよそれぇ」
「キャハ! てきとーすぎ、ウケる」
しばらく進んだものの、特に代わり映えのしない洞窟内にだんだんと飽きてきた。
「ねーねー、ヒマじゃん? 誰かなんか持ってないのー? グミとか」
マリエがそうこぼした。
「そんなもんあるわけねーだろ。てかケンタ? 食い物とかないのか?」
「ないよ? 水しか」
「あ? マジか。俺様も何も持ってないぞ。マリエは?」
マリエの方を見ると両手を宙でブラブラさせている。全員手ぶらだった。
さっき酒場でたらふく飲み食いした後だったし、食料を持ってくるという発想は誰にもなかった。
「くそ、マジかよ! 食料なんもねーのかよ!」
「一応、水なら人数分あるけど、郷田。どうする? 進むの?」
ケンタはビビっているようだ。コイツはいつもそうだ。基本的には俺様がいなきゃ何もできねえクズ。
「ねー! 郷田。戻ったほうがよくない?? 食べ物なんもないんでしょー?」
マリエがもっともなことを言ってきたが、二人とも何も考えてないくせに俺様に意見してくることに妙に腹が立った。
「……進むぞ。あそこまで威勢のいいことを言って来たってのに手ぶらで帰れるかよ。笑いもんだぜ。水があるなら大丈夫だろ」
俺様たちはダンジョンの奥へと進むことに決めた。
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