第155話 秘密基地

「こんな所に秘密基地を作ってたのか……」


 猫又がスイカ泥棒の犯人だと分かった後、丈二は猫又に連れられてマタンゴたちが住んでいる森へと入った。

 森の奥、傾斜が付いている所に小さなほら穴が開いていた。

 ほら穴の奥に懐中電灯の光を当てると、子猫たちにあげた玩具や、猫族たちが食べているおやつの空袋が散らばっている。

 どうやら、猫又の秘密基地らしい。

 集めているのは猫又にとっての宝物なのだろう。


 そして猫又が集めたであろうお宝の中心には、大きく育ったスイカが鎮座していた。

 見たところ目立った傷もない。


「ほわぁーー!!」


 隊長はスイカを発見すると駆け寄って、ヒシっと抱きついた。

 スイカの方が隊長よりもずっと大きいため、抱き着くというよりも壁にすがり付いているようだが――ともかく感動の再開である。


「しかし、猫又もよくここまで運んできたな……」

「みー?」


 猫又が秘密基地にしているほら穴は畑からそこまで距離が開いているわけではない。

 しかし、猫又が小さな体で運んできたと考えると凄いことである。


「みぃ!!」

「なんだ!?」


 猫又の尻尾から青白い炎が吹きあがる。

 とっさに避けようとした丈二だが、すぐに気づく。この炎は不思議と熱くない。

 二本の尻尾から燃え上がる炎は、そのままスイカへと伸びると巻き付いた。


「ほ、ほわぁ!?」


 そして炎と共にスイカが持ち上がる。ついでにスイカにしがみついていた隊長も。

 どうやら、青白い炎を使って物を掴んだりできるらしい。


「なるほど……この力を使ったのか……」

「みぃ!!」


 ドヤ顔を決める猫又。まるで『どうだ!!』と自慢しているようである。

 確かに凄い力ではあるが、今回はスイカを盗むのに力を使ってしまっている。

 とても褒めるわけにはいかない。


「確かに凄いけど……物を勝手に持ってきちゃダメなんだ。このスイカだって隊長の大事な物なんだぞ?」

「みぃ?」


 猫又は叱られていることが分かったのだろうか。

 まるで媚びるようにお腹を見せて、ごろごろと転がった。

 たぶん、ごまかそうとしているのだろう。

 そんな猫又の態度に、ブチギレた大根が一匹。


「ほわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「みぃ!?」

「うおぉ!? 耳が!?」


 ほら穴に隊長の絶叫が響き渡る。マンドラゴラの絶叫は、そこらの大型モンスターの咆哮よりも強力だ。

 隊長の絶叫が収まった後でも、丈二は耳がキンキンする。


「みぃぃぃぃぃ!!」

「ほわぁぁぁぁぁ!!」


 隊長の絶叫に、猫又は脱兎の如く逃げ出した。

 しかし隊長も逃がさない。『待てやこらぁぁぁぁぁ!!』と追いかけて行った。

 行ってしまった隊長を見送ると、寒天の頭に座っていたこわがりが手を上げた。


「ほわぁ」

「そうだな。とりあえず、スイカを畑に戻しておくか」


 その後、丈二たちはスイカを畑に戻した。

 マンドラゴラたちの魔法によって、スイカは再びツルにくっ付いて元通りとなった。

 これで、まだまだ大きく育つだろう。


 ちなみに、隊長に散々追いかけ回された猫又は、以降は畑に近づかなくなっていた。

 隊長の雷は良く効いたらしい。

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