第130話 養殖計画
「うぉ、デカい湖だ……」
驚きの声を上げる丈二。
その眼前には大きな湖が広がっていた。
そこはおはぎダンジョンの中。
マタンゴたちが住んでいる森の隣だ。
猫族からダンジョンに湖が出現したと報告を受けて見に来ると、確かに広い湖が出来ていた。
「なんで急に出てきたんだ? これまでダンジョンが広くなる時は新しいモンスターが仲間になったときのはず……いや、猫たちは増えたけど、こんなデカい湖を作るほどの魔力は無いはずだし……うーん」
丈二が唸っていると、ふらりとぜんざいが現れた。
「がう」
『子供たちも成長している』と言って、ぜんざいは湖の浅瀬に足を浸けると、ちゃぽちゃぽとかき混ぜる。
水浴びをしているのだろうか。
「おはぎやきなこの魔力が普通に成長した結果……ってことですかね?」
「がう」
ぜんざいは深くうなずいた。
どうやら、モンスターが増えなくてもダンジョンが広がることもあるらしい。
あくまでもモンスターたちの成長によるものなため、そう頻度は多くないだろう。
「しかし、湖が増えるのか……これは運が良いかもしれないな」
生活が安定してきた丈二ダンジョン。
しかし、ちょっとだけ不安な部分も残っている。
それは食糧問題。具体的には動物性たんぱく質が足りていない。
現在ではクーヘンを始めとする犬猫探索隊が、ダンジョンを探索してお肉も取って来てくれている。
しかし、それでは問題が起きて犬猫探索隊が動けなくなった時に困ってしまう。
お金はあるため買ってしのいでも良いが、どうせならダンジョン内で生活を支えられるようにしたい。
「せっかくだし、魚の養殖にチャレンジしてみるか!」
「それは良いアイディアですにゃ!!」
すぽーん!
なぜか、ぜんざいの毛から飛び出してきたサブレ。
空中で一回転を決めてから、丈二の前に着地した。
「採れたての魚を焚き火でパリッと焼けば、それだけで美味しいのですにゃ!!」
「おぉ、確かに美味しそうだな……やっぱり猫族は魚が好きなのか?」
「さぁ? 僕は好きですにゃ。お肉が好きな子も居ますにゃ」
どうやら猫族が魚好きという事ではないようだ。
そもそも、猫が魚好きという説も根拠はないらしいし、単にサブレが好きなだけなのだろう。
「まぁ、養殖はやってみるとして……問題は魚をドコから入手するかだな。やっぱりモンスターの方が繁殖力強そうだし向いてるか?」
問題としては『食用に向ている魚のモンスター』となると、カウシカのように誰かが管理している可能性が高い。
ダンジョンの持ち主と交渉しなければ魚の入手は難しいだろう。
西馬を紹介してもらった時のように、仲介が必要かもしれない。
「にゃふふ……実は当てがあるんですにゃ」
「え、サブレに当てがあるのか?」
「モンスターレースに参加してた兎束さんですにゃ!」
「え、兎束さん?」
丈二家で開催したモンスターレース大会。
それに参加していた選手の一人が兎束だ。
だが、彼女と魚に何の関係があるのだろうか。
「実は大会が終わった後も、SNSで連絡を取ってるんですにゃ。なんと、彼女の実家はダンジョン主。まさにお求めの魚モンスターも居るらしいにゃ!」
「おお、いつの間に……」
丈二も知らぬ間に人脈を広げていたサブレ。
美少女とSNSで連絡を取っていたらしい。
「兎束さんなら、牛巻さんの写真でも送れば了解してくれるはずにゃ」
レースが終わった後の打ち上げで、兎束は牛巻に迫っていた。
どうやら彼女は女性に興味があるタイプだったらしい。
確かに牛巻の写真を送れば良い返事を貰えるのかもしれないが。
「盗撮は良くないから、ちゃんと牛巻に許可を取ろうな」
「うにゃ。分かりましたにゃ! とりあえず僕の写真でも送っとくにゃ」
どうやら、サブレはモフモフのお腹を見せつけるように撮った写真を送ったらしい。
喜ぶ人は喜ぶだろうが、サブレはそれで良いのだろうか。
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