第128話 すくすく

「おお、目が開き出してきたなぁ……」


 おはぎダンジョンに住む猫が出産してから二週間後。

 子猫たちの成長は良好。すくすくと育ち、目が開きだしていた。

 まだよたよた歩きではあるが、部屋を歩き回って冒険している。


「ぐるぅ?」


 なぜかおはぎは大人気。

 子猫たちはおはぎに突進すると、ピィピィと鳴きながらおはぎを取り囲む。

 まだ目は良く見えないはずだ。玩具か何かだと思っているのだろうか。


 おはぎもお兄ちゃんを発揮して、猫たちの匂いをクンクンと嗅いで体調確認。

 どうやら異常はないようだ。


「やっぱり、猫又の子は成長が早いなぁ……」


 そんな普通の子猫たちと、ちょっとだけ様子が違うのが一匹。

 二つに分かれた尻尾をピンと立てている猫又の子猫だ。

 ぱっちりと目を開いて、まだおぼつかないが走り回っている。

 他の子猫たちよりも、少しだけ成長が早い。


 丈二があぐらをかいて猫又を見ていると、ドタドタと走り寄って来た。

 狩の練習でもしているのだろうか。

 『うりゃー!』と丈二に飛び掛かるが、こてんと転んでしまった。


「よしよし、元気なのは良いことだな」


 丈二がお腹を撫でると、猫又は小さな足を使って蹴って来る。

 パッと手を離すと驚いたように体を広げていた。


 どうやら猫又は遊んで欲しいようだ

 丈二は近くにあった猫じゃらしの玩具を手に取って振るった。

 猫又は小さな手足をバタバタと動かして追いかけ回す。


「結局、なんで生まれてきたのかは分からにゃいんでしたっけ?」


 サブレが子猫を持ち上げて、ティッシュを使ってお尻をぽんぽんと叩いていた。

 ぴぃぴぃと鳴いているが、いじめているわけではない。

 子猫のトイレを手伝っているのだ。


「そうなんだよ。河津先生も聞いたことのない事例だって」


 猫又が生まれた後に、丈二は河津先生を呼んで検査をしてもらった。

 結果として、生まれた子猫たちは魔力を有していたらしい。

 つまり、ただの生物ではなくモンスターに近くなっていた。


 特に魔力量が多いのが猫又の子だ。

 成長をすればダンジョンのモンスターと並ぶほどの魔力を有するかもしれないらしい。


「まぁ、元気に育ってくれればそれで良いけど……前例がない分、トラブルが起きたら大変だからな。しっかりと見守って行こう」

「了解ですにゃ!」

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