第111話 なにが出るかな?

 始まった『闇のロシアンたこ焼きゲーム』。

 たこ焼きゲームとは言っているが、明らかにたこ焼きじゃない物も交じっている。


「これ、ホットケーキじゃないか?」


 質感からしてたこ焼きではなくホットケーキ。

 生地からは小さなチョコが顔をのぞかせている。

 ソースの代わりに、チョコソースとチョコレートスプレーがかけられている。

 チョコ尽くしだ。


『見るからに甘そうだwww』

『美味しそう!』

『ウチでも作ってみようかなぁ』


「甘いタコ焼きも作りたかったにゃ。でもたこ焼きの生地と相性が悪かったにゃ」

「それでホットケーキを使ったわけか……」


 『チョコたこ焼き?』は見るからに安全そうだ。

 まずはそれを食べてみる。

 

 ぱくり。

 チョコ味のスイーツである。

 無難においしい。


「とりあえずホットケーキたこ焼きは安全な気がするな」


 他にもホットケーキの生地を使ったたこ焼きは残っている。

 まさか、ホットケーキに激辛食材は入れないだろう。


 丈二はホットケーキたこ焼きを食べていく。

 マシュマロ、キャラメル、イチゴジャム、

 よくこれだけのバリエーションを思いついたものだ。


「甘いのはスイーツタコ焼きとして売り出す予定にゃ!」

「見た目も可愛いし、食べやすい。良いんじゃないか?」


 明らかに安全圏のホットケーキはこれで終わり。

 ボーナスステージは終了だ。


『ここからジョージの運が試されるな……』

『普通のたこ焼きの方も、中身楽しみだなwww』


 丈二は一つのたこ焼きにつまようじを差しで口に運ぶ。

 その中身は――。


「……普通のたこ焼きだ」

「い、一発目で引いちゃうのかにゃ……」


『ズコー!!』

『一発目で普通のを引くのは運が良いわwww』

『逆に言うと、ここからは変わり種しかないのかw』


 丈二は次のたこ焼きを選ぼうとする。

 しかし、たこ焼きが巨大な影に覆われた。


「あ、ぜんざいさん」

「がう」


 食べ物があればやって来る。

 お馴染みのぜんざいだ。

 『我も混ぜろ』とテーブルの隣に座り込み、完全にたこ焼きを頂く体勢である。


「え、食べるんですか? なんか、凄く辛いのが混じってるらしいんですけど……」

「がう」


 『構わん』ぜんざいは微動だにしない。

 たしかに、ぜんざいなら多少辛い物は平気そうな気がするが。


「じゃあ、おひとつどうぞ」

「がう」


 ぜんざいにとっては小さなたこ焼き。

 一口でぱくりと食べた。


「がう」

「どうやら、チーズが入ってたみたいですにゃ!」


 ぜんざいはうんうんと満足そうに頷いている。

 美味しかったらしい。


『チーズは定番だよね!』

『もうただのタコパだなwww』


「さぁ、ドンドン食べていくにゃ!」


 丈二とぜんざいは交互にたこ焼きを食べていく。

 ウィンナー、エビ、ツナ、じゃがいも、キムチ。

 癖の強い食べ物もあったが、マズくはない。


「これ、本当に辛いのも入ってるのか?」

「は、入ってるはずにゃ……?」


 そしていつの間にか、たこ焼きは残り三個だ。


「せっかくだから、最後の一つは僕が食べますにゃ」

「え、サブレが食べるのか?」

「闇のゲームの主催者としての義務を果たしますにゃ!」

「まぁ、現状ではただのたこ焼きパーティーだけど……」


『サブレ、男を見せる!!』

『さぁ、誰が当たるのか……』


 丈二とぜんざいは、それぞれたこ焼きを選ぶ。

 そして、残ったひとつをサブレが食べることになった。


「じゃあ、まずはぜんざいさんから」

「がう」


 丈二はたこ焼きをぜんざいの口に放り入れる。


「がう」

「ベーコンみたいですにゃ……」

「つまり、ハズレは俺かサブレになるわけか」


 丈二は自分のたこ焼きに串を差した。

 サブレと目を合わせて、同時に口へと入れた。


「……うっ⁉」


 丈二がうめき声を上げる。


「なんだこれ⁉ ドロッとしたしょっぱい奴が出てきたぞ!?」

「それは、私たち猫族用のおやつですにゃん」


 コック帽猫が説明してくれた。

 まさか、そんなものまで入れていたとは……しかし、マズくはないし辛くもない。

 つまりは――


「ぎにゃー!? 辛いにゃー!!」


 サブレはぐびぐびと水を飲み始めた。

 それでも辛さは収まらないらしく、悶えるように床を転がる。


「だ、大丈夫か⁉ ちなみに、なにが入ってたんだ?」

「そこまで非常識なものは入れてないにゃん。ただのわさびにゃん」

「あぁ、罰ゲームの定番だな」


『主催者の自滅かwww』

『デスゲームっぽい終わり方だなwww』

『サブレ。自滅!!』

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