2章 悪の天才とモンスターレース
第63話 猫の集会に突撃してみた
「皆さん、こんにちは! サブレですにゃ!」
一週間ほど前。
動画投稿サイトに新しいチャンネルが開設された。
名前は『ねこサブレちゃんねる』。
丈二の所に住んでいる猫族やコボルトたち。
彼らが開設したチャンネルだ。
カメラマンは、コボルトがカメラを担いで。
編集も猫族の一人が、牛巻から教わってやっている。
丈二たちはアドバイスこそしているが、基本的な運営は彼らでしている。
丈二が運営しているおはぎチャンネルからの誘導。
そして喋る犬猫たちが作成している動画と言うこともあって、現在話題になっている。
チャンネルのタイトル通り、メインの出演者はサブレ。
彼が様々なことに挑戦するのがメインコンテンツになっている。
『サブレちゃんキターー!!』『今日は何をするんだろうか』『こないだの納豆チャレンジの動画は面白かったな』『サブレなら何やっても面白い!』
例のごとく。
公開直後のリアルタイムチャットも盛り上がっている。
「今回は、猫の集会に突撃してみようと思いますにゃ! 近所の猫たちの反応に期待ですにゃ」
『ケットシーが猫の集会に出るのか……』『普通だな?』『喧嘩にならないか心配!』
サブレは喋りながら土手沿いを歩く。
少し寂しげな夕日がサブレを照らしていた。
ちなみにサブレたちだけで歩き回るのは危険なため、少し距離を開けて牛巻が付いてきている。
サブレたちが向かうは橋の下。
そこでは猫たちが集まっている。
なにをするわけでもない。
まばらに散りながら、ただゴロゴロとしているだけだ。
『カワイイ』『野良猫って見かけても、なかなか近づかせてくれないよなぁ』『マタタビ持参してくしかないなwww』
「居ましたにゃ。さっそく突撃にゃ!」
サブレは近くの猫に近づく。
白と黒のマーブル模様の猫だ。
人間なら逃げていたかもしれないが、相手は見た目はただの猫。
なんだコイツはと、怪訝な目を向けてくるが逃げる素振りはない。
「まずは、どうして集まっているのか聞いてみようと思いますにゃ」
サブレはにゃーにゃーと話しかける。
それに対して、マーブル猫は『にゃん』とぶっきらぼうに答えた。
「なんとなく。だそうですにゃ……この猫は気難しそうだにゃ。他の猫とも話してみるにゃ」
『警戒されてるなぁ』『猫にも色んな性格が居るしね』
サブレは集会の中心地に近づいていく。
そこにはどっしりと構えた黒猫が居た。
片目には薄っすらと傷がついている。
擬人化したらアウトローな見た目になるだろう。
黒猫はギロリとサブレを睨む。
あまり、よそ者を歓迎していないらしい。
「あの猫は止めといたほうが良さそうにゃ」
『ボス猫だ!』『なんだこのラスボス感www』『ヤの付く職業の人みたいだ』『怖いwww』
サブレが黒猫にビビっていると、近づいてくる猫が居た。
他の猫たちよりも小柄だ。
独り立ちしているようだが、まだまだ幼いのだろう。
幼いゆえの好奇心か。サブレを気にしている。
「お、この子なら仲良くなれそうにゃ!」
サブレはカメラに向かって合図をする。
すると、カメラマンはなにやらゴソゴソと始めた。
そしてサブレに向かって手を差し出す。
その肉球にはドライフードのおやつが握られていた。
サブレはそのおやつを受け取ると、猫に向かって差し出す。
「仲良くなるにはおやつが一番にゃ」
『猫による猫への餌付け』『もしかしてこれ、擬人化したら事案なのでは……?』『止めろwww』『でもサブレはイケ猫だし、イケメンが子供におやつあげてるのはただの微笑ましい光景だから……』『※』
やや事案染みた作戦だったが、効果はあったらしい。
小柄な猫は、サブレにすりすりと体を寄せる。
しかし、サブレは少し恥ずかしそうにしていた。
「ちょっと、やめるにゃ。いきなり積極的すぎるにゃ」
『人間で言うと、どういう状況なんだ?』『猫の研究者じゃないから分からん』『猫じゃないから分からん』『恋人居たことないから分からん』『なにも分かんねぇじゃねぇか!』
その様子を見ていた猫たち。
彼らもゾロゾロと集まってくる。
「な、なんですにゃ?」
「にゃおーん」
「え、『俺らにも寄こせ』ですにゃ?」
猫たちはジリジリとサブレたちに近づいてくる。
その眼は鋭く輝いていた。
腹を空かせた猫たちの執念が見える。
今にも襲われそうだ。
『やる気だwww』『サブレちゃん逃げて!』『飯への執念かwww』
「分かったにゃ! あげるから並んで欲しいにゃ!」
その叫び声に納得したのか。猫たちは大人しくサブレたちの前に並んだ。
ただのおやつ配り動画になった。
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