13
コーヒーを口にしてしばらくした後姉さんはバタンと倒れて血を吐き、もがき苦しみ出した。
「・・・ぐゔっ・・・ゔゔぅっ・・。」
そして苦しみながらゆっくりとボクに視線を向ける。
「・・・サトル・・・なんでなの・・・?」
ああ、姉さんに残された時間はもう残り少ないんだから、はきはき喋らないとね。
「なんでって・・・姉さんが全部悪いんじゃないか。ボクに何の相談も無しに父さんと母さんを殺しちゃって。」
「・・・・・気付いてたの?」
「そりゃそうさ。ボクは殺人鬼のサラブレッドだよ?ボクには見えるんだよ、殺人を犯した人だけが漂わせる特殊な雰囲気が。いくら姉さんだからって騙されないよ。」
「・・・そう。」
姉さんは心なしか少し嬉しそうにも見えた。
「ずっと・・・苦しかった・・・誰かを殺したいと思う衝動が自分の中でどんどんどんどん抑えられなくなってきて・・・自分自身が怖かった・・・お父様やお母様には悪かったけど・・・会社が欲しかったのもあるし、自分のこの悍ましい欲求を叶えるためには誰かに迷惑をかけるより・・・二人にって思ったんだ・・・。」
「・・・・・。」
「サトル・・・もしも誰かに殺されるなら・・・サトルがいいって思ってたよ。」
「・・・・・え?」
「だから・・・ありがとう・・・こんなお姉ちゃんでごめんね・・・私達は皆仮初めの家族だったけど・・・それでも楽しかった・・・サトル最後のお願いよ・・・どうか・・・貴方は誰にも殺される事なく・・・自分の人生を・・・幸せに・・生き・・て・・・・・。」
「・・・・・・・姉さん?姉さんっ!!」
思いもよらなかった姉さんの言葉にボクは動揺した。姉さんは父さんや母さんみたいに殺人を半ば楽しむような人間ではなかったんだね。自分の中にも殺人鬼の魂が宿っていると知って心優しい姉さんはどれほど悩んだんだろう。
・・・父さんも、母さんも姉さんも・・・皆死んでしまったね。
もうボクに対して誰も何も言えないし、望めないんだ・・・そう考えた時、言葉では言い表せないくらいの解放感がボクを襲った。
ああ、もう、いよいよどうでもいいかな。
常識とか、理性とか、世間体とか。
この世の中はさ、気にしなきゃいけない事とか、止めてなきゃいけない事が多すぎて・・・ボク、もう疲れちゃった。
父さん、母さん・・・お墓の前で言ったように、ボク、今からちゃんと卒業するね!しっかり見てて!
もう、人なんていつ死ぬかわからないし・・・全部、自分のやりたい事をやらないとね!
そう思って大きく深呼吸したあと、ボクはとりあえずポケットに入っていたハンカチで姉さんの口についている血を綺麗に拭いてあげた。そして開いた目を閉じてあげ、自分が着ている服をゆっくりと脱ぎ始め全裸になった。着ていたワイシャツを細く畳み、姉さんに目隠しをしてあげる。
そしてその後すぐにまだ温かい身体をしていれ姉さんの着ている服も丁寧に脱がし始めた。
ボクはさ、ブラジャーに触るのもその時が始めてだったし、なかなかホックが外せなくて大変だったのを覚えているよ。
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