12
ボクはその日父さんと母さんの墓参りに来ていた。墓石の前で両手を合わせる。
「父さん・・・母さん・・・殺されるって・・・一体どんな感じだったの?今まで沢山の人を殺めてきて・・・自分達がまさか大切に育ててきたつもりの優秀な自分の娘に殺されちゃうなんて・・・どんな気持ちだった?」
ボクは知っていても特には何も言わなかった。だって、ボクの人生には何の迷惑もかかって無かったからね。
父さんは敵対する会社の重要人物を陰で次々と殺してしまう殺人鬼だった。
母さんはモテる父さんが大好き過ぎて寄ってくる女性に嫉妬心を爆発させてすぐに刺し殺しちゃうような殺人鬼だった。
でも父さんはそうやって自分と同じように邪魔な人を殺す事で排除するっていう同じ思想を持っている母さんが好きだったんだと思う。類は友を呼ぶというか。だから夫婦仲はかなり良かったよ。
でもさ、皮肉だよね。
おじいちゃんもおばあちゃんも自分達がトップに立つために邪魔で殺したのに、自分達も存在が邪魔だって理由で姉さんに殺されちゃった訳だから。
「父さん・・・母さん・・・汚れた姉さんにはさ、そっちに行ってもらおうと思ってるんだ。弔い合戦してあげるよ。大丈夫、二人の子供だもん。きっと上手く出来るよ。その前に一つ卒業したい事があるんだけどね・・・上手いこと卒業出来ればいいなあ・・・ま、とにかく、見守っててよ!」
たぶんその時ボクは心からの満面の笑みでとても幸せそうに墓地を歩いていたと思う。
不思議だよね。
なんだかそういえば、ボクって赤ちゃんの時以来涙は出ても悲しいとかあんまり本気で思ったことないのかも。
人間として必要だったものが生まれつき備わってなかったのか、それとも父さんや母さんに育てられていく過程の中で知らず知らずの内に消えていったのかは今はもう確かめようがない。
手始めにとりあえず姉さんと仲良く談笑していた馬鹿な男を睡眠薬で眠らせてロープでグルグル巻きに拘束し、身動きが取れないようにした。そしてそれから会社裏の雑木林にあらかじめ掘っておいた穴に放り投げて土をかけ、生き埋めにしてみた。
苦しそうにモゴモゴ動く姿が芋虫みたいで本当に気持ち悪かったな。ボク、虫は苦手なんだよね。人を上手く埋めるためにどのくらいの広さや深さが必要かはその時に学んだんだ。
・・・これでよし、次は姉さんの番だね!この時間だと今頃はまだ会社で事務作業してるんじゃないかな?
ボクは姉さんが好きなコーヒーを淹れて颯爽と姉さんの元へと向かった。
「姉さん!」
「あら、サトル、どうしたの?」
「疲れてるんじゃないかと思ってコーヒー淹れてきたよ!一緒に飲もう!」
「・・・そうね、今丁度仕事もひと段落したところだったわ。わざわざありがとう。」
今でもはっきりと覚えているよ。
真っ赤な口紅を塗った姉さんの唇を通り抜けて、ボクが淹れた毒薬入りのコーヒーが姉さんの身体の中に入っていった瞬間を。
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