装備創作と泉の精霊

初めて精霊を見たが、まぁただの不思議生物だな。

それほど気にすることでも無いし、加工作業を始めることにしよう。どっちからやろうかな?

んーーーーーーーーー、早急に用意したいのは手加減するための武器だな。そっちから作っていこう。


「よいしょっと、武器から作っていこうと思うが何か希望する原石はあるか?」

「……えっと、オブシディアンってありますか?」

「あったはず...あるな、大きいのが。二つ見つかったし俺もこれで作ることにしよう。

ほら、加工の仕方は分かるだろう?」

「ありがとうございます。何か形とかに制限ってありますか?」

「特に無いぞ。追加で欲しかったら言ってくれ」

「はーい」


さてと、俺はどうしようか。

使いたい武器も特に無いし何を用意するかな?

手に馴染むのはクワか棍だが、流石にそれらを持ち歩いて旅はしたく無いしな。

………よし、籠手にしよう。

他の魔法原石を埋め込んで色々な形に変化させられるようにしつつ、普段は籠手と装飾という形だな。

うむ、そうなって来ると見た目に拘りたいな。籠手はドラゴンの手をイメージにしつつ、小さめで尚且つ肌に密着するようにしつつ、指先は手袋の様に薄い膜で包まれる形にしよう。

幾つ武器を作ろうか....見た目的には十本は用意したいんだが、そんなに思い浮かばないな。

まぁ武器種は後でいい、先に使う原石を選ぼう。取り敢えず青のタンザナイト、赤のルベライト、黄のスファレライトは使おう。んーーー、スキャポライト黒味が強いな、アメジストにしておくか。それから白はムーンストーンにしよう。

………色が見つからんな、あとは何色にする?


「何を悩んでるんですか?」

「見た目に拘りたくなってな、装飾にする原石を選んでいるんだが、見つからなくてな」

「へー、タンザナイトにルベライト、スファレライトにアメジスト、ムーンストーンですか...

ふむふむ、これは悩みどころですねぇ」

「だろう?」

「んーー、こうなったら、今のところ綺麗系が集まってますし、実用的な物にしてみたら如何ですかね?」

「ほう、それは良いな。ところで何かあったか?」

「あ、私も見た目に拘りたくなったので追加が欲しくてですね」

「何が欲しい?」

「死ぬほど綺麗なのが欲しいです」

「ならカースダイアだな、色は?」

「普段なら黒を希望してましたが、大元と被るのでそうですねぇ...赤と白を二つずつ下さい」

「良いぞ」


魔法空間から呪いの影響を強く受けた原石、その中でも最上のダイアモンド。それに俺の血と魔法を織り交ぜて作り上げられた、特殊な魔法原石。

下手に扱うと呪いに侵食される異常特性を持っており、龍峡でも普段使い出来ない代物になってしまったので俺が全て管理している。

グレイスにも以前なら渡すつもりは無かったが、種族的にも呪いに対する親和性を高める為にも渡しても良いだろう。最悪飲み込まれても引き上げられる。


「ほら」

「ありがとうございます」

「おう、あまり変に動かすなよ爆発するから」

「はーい」


さて、じゃあ俺も取り出すか。

実用性的にはミスリル、オリハルコン、ヒヒイロカネ、アダマントで最後の一つは何にする?

カースダイアも悪くはないが、俺との親和性が高過ぎて一回使えば砕け散ってしまうので無しだ。

そうなって来ると、実用性の面での候補が無いな。

………仕方ない、候補が見つかるまではただのダイアモンドにしておくか。見栄えが少し悪くなるが、それはまぁ仕方ない。


『あの、少しよろしいですか』

「うん?」



───────────────────────



「何の用だ精霊?」

『いえ、何をしているのかなと思いまして』

「あぁ、武器を作っている」

『武器、ですか?』

「何分素手だの魔法だのは慣れ過ぎていてな。

加減をしても無差別に殺しかねないし、最悪周辺の環境を捻じ曲げかねないのでな。

その為にも手加減用の武器を作っている訳だ」

『そうなのですか? でしたらその石は一体何なのでしょうか、初めて見るのですが』

「魔法原石だが、知らんのか?」

『はい』

「そうか...」


精霊だから知っている物だと思っていたんだが。

…………あぁ、そういえばリーズィが言っていたな。シアンティが考案してそのまま形にしたと。

そらたとえ精霊でも知らないか。龍峡に外から誰かが来て、外に伝えていくということも無いだろうしな。

ならば知らなくて当然だな。


「お前のいるその泉の底に沈んでいる翡翠、あー緑色の石があるだろう? その手の石は魔法との親和性がかなり高くてな、その親和性を活かして魔法をその石自体に混ぜ合わせる。この時石と魔法の割合が半分半分になるように調整して、それぞれの因子が均等に別れているようにする。それから、混ぜたそれ単体じゃ結合性が緩いから土や岩で膜を張って完成だな」

『ふむふむ、それでどうやって武器が出来るのですか? 見たところ簡単に形を変えているようですが』

「言ってしまえば魔法原石は魔法だからな。個人の魔力をしっかりと認識させれば、その個人の思うような形になる。此処にミスリルがあるだろう?」」

『ありますね』

「これを、そうだなこうやって魔法を纏わせながら作りたい形を考える。

取り敢えず、一旦これは剣にでもしておこうか。

すると、ほらこんな風に剣に形が変わる。ミスリルと魔法だけで、作られたから純度はかなり高いし、砕けても魔法を纏わせればこの形に変わるのさ」

『おぉー、素晴らしい技術ですね。

これは貴方が考案したのですか?』

「いや? 俺の友人が考えたんだ」

『なるほど、龍も在り方を変え始めたのですね』

「あぁ」


もっと詳しく話せばかなりややこしいんだが、覚えていないので話せない。そもそも、この話を何時間も続けてられん。色々とやらねばならん事があるしな。

…………んん? あれ、今こいつ龍って言わなかったか?


「お前、龍を知っているのか?」

『? えぇ勿論。彼らには長い間、私たちの本体が果たせねばならないはずの責務を、ずっと負わせてしまいましたから。

貴方のおかげでようやくその責務に終止符を打つ事ができましたが』

「………俺を知っているのか?」

『勿論、貴方は現龍王と同じく最も神に近しい存在ですよ? 端末とはいえ知っておりますとも。

私はそこまで俗世に触れていないので、その魔法原石を含めてほとんど知りませんが』

「……そうか」


…少しばかし、話がしたいな。

ただの神の端末というだけならば興味は無かったが、俺のことを知っていて、精霊が俗世に触れる事ができるのならば、幾つか聞きたい事がある。

取り敢えず、籠手を仕上げてしまうか。先に武器の形を決めておきたかったが、どうでもいい。

どうせ思い通りの形になるのだし、この精霊に話を聞く方が最優先対象だ。

……籠手の形は出来たし、何処に埋め込むか。手首の周りでいいか。

此処ならば変に干渉せずに変形...出来るな。

よし、どっちをどうするか。まぁ右手を実用性メイン、左手を見た目メインにしておくか。右手は少し小さい装飾を派手目にしておいて、左手は地味目にしておけば、うむ見栄え的に悪くは無いな。



「よし、完成だな」

『お疲れ様でした。

そこまで武器に詳しい訳ではありませんが、素晴らしい完成度ですね』

「感謝しよう....すまん、名前は何だ?」

『名乗っていませんでしたか?

フロイリヒ、迷い森の泉にて霊石を託せる英雄を待つ精霊です。気軽にフロイリヒとお呼び下さい』

「そうか、俺はドラコーだ。

あっちで試行錯誤しているのは、グレイスだ」

「はーい!!」

『なるほど、ドラコー様、グレイス様どうぞ何も無い場所ですがごゆっくりどうぞ。

提供出来る物は水と泉の底にある石と、あとは私がお話に付き合うくらいしか出来ませんが』

「十二分だ、話に付き合ってもらっていいか?

何分知らん事が多いのでな、色々と聞きたいんだ」

『私が知っている事で良ければ構いませんよ』



「私も一緒した方がいいですかー?」

「お前はじっくりと調整してからでいいぞ。参加したければ参加しても構わんが」

「じゃあもうちょっと後で参加しまーす。

………んー、もう少し均等に流したいなぁ」

「おう、存分にやるといい」

『仲が良いのですね』

「夫婦だからな、仲が良くて当然だろう?」

『そうなのですね、それは良い事です』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る