ドラゴンと呪い背負いの日常会話
「おぉ黒いドラゴン、かっこいい」
「む? そうか?」
「うん、少なくとも俺は好きだな」
「おぉ存外嬉しいな。
俺たち黒龍は主に毒や闇との親和性が高くてな、あんまり褒められる経験が無いんだ」
「へー、でもそう言う搦手を自在に使えるのって、ある意味真っ正面からのぶつかり合いよりもかっこいいと思うぜ、俺は」
「龍王陛下の盟友殿に言われるとは、誇りに思えてくるな。是非とも俺以外の黒龍と会う時はそいつらも褒めてやってくれ」
「それは、勿論だ。ところでどんな話を俺に聞かせてくれるんだ?」
「そうだな、最近産まれた悪戯っ子の話はどうだ?」
「いいじゃん、是非とも聞かせてくれ」
「わはははは!!!
来たぞ、小さき盟友よ!!!」
「まぁた、アンタらか。てかその手に抱えてんのってもしかして」
「うむ! 酒じゃ!!
お主の話から聞いてわしらで試行錯誤しながら作った酒じゃ!! 共に試飲しようではないか!!」
「うむ! まぁわしの酒が一番じゃがな!!!」
「何を言うわしの水酒じゃ!!」
「はん、大地の恵みを使ったわしの酒には敵わんじゃろうがな」
「あー、はいはい分かったから。
飲んで決めよう、決まらんかったら暴れていいから」
「「「「「うむ!!!!」」」」」
「よう、来たぞ」
「おう、なんか久しぶりだなリーズィ」
「最近忙しくてな、お見合いのセッティングをが何故か俺に回ってくるんだ」
「そりゃ、災難だったな」
「おう、そうだちょっと見ててくれよ」
「おん?」
「フゥン!!! ……どうだ?」
「おぉ!! ドラゴンの羽と角と尻尾が生えてるけど、それ以外はほぼ人間だな!!」
「よし完成したか! これを使えば、お前との交流が楽になるって寸法よ!!!
ついでに何故か流行った衣服文化と食事文化にも対応出来るって訳!!」
「へー、それリーズィ以外も使えんの?」
「慣れが必要だがな、基本成龍なら誰でも使えるぞ。
俺たちは基本的に魔力が関われば何でも出来るし。
まぁクソほど術式ややこしいからもうちょっと改善する必要があるがな」
「なるほどなぁ、それはまぁ頑張ってくれ」
「うむ、食事でもしながら話そうじゃないか。
今日を持って来たのはバハムートだ、稚魚だが味は滅茶苦茶いいぞ。俺が保証する」
「ほう、それじゃあ楽しませて貰おうかな」
「どうも、ようやく会いにこれました」
「うん? その色って事はこの服を用意してくれた蒼龍さんか、その節は助かった」
「いえいえお気になさらず」
「そうか? それじゃあ要件はなんだ?
ようやくって事は何か要件があるんだろう?」
「勿論、人間の服について教えて欲しいのです」
「ん? あぁ種類とか形とかか?」
「そうです、性別で違いがあるのかどうかということであったり、教えてもらった物とは違う衣服があるのかどうかと言うことを」
「おう、いいぞ。
つっても人間時代の記憶は底抜けに薄れてるし、うろ覚えでしかないが、それでもいいか?」
「勿論、あとは私たちで補完します」
「ほーん、じゃあまずは性別での違いだな。
作ってもらったこの服は基本的に男が着る服で女性はドレス、こんな形の奴だったな」
「ほうほう、防御は薄そうですね」
「まぁ人間は一部の奴以外は戦わんからな。」
「そうなのですね、あぁどうぞ続けて下さい」
「あぁ、それでな......」
「どうも、お久しぶりです」
「うん? ヴァイスか、後ろの黒龍は?」
「はいヴァイス・シュテルンです。後ろのは私の旦那ですね、私を勝ち取った勇猛なドラゴンですよ」
「お初にお目に掛かります、我らが盟友よ」
「いいよそんなに畏まらなくて、ヴァイスの旦那ならもっと堂々としてなきゃダメだろうに」
「むぐ」
「あの日の勇猛果敢な姿は何処に置いて来たのです?
次代の龍王格を正面から打ち破ったあの姿は」
「へぇ、何か面白そうじゃねぇか。
是非とも聞かせてくれ、その勇猛果敢な姿を見せた時の話を。最近そう言う話はあんまり聞かないからさ、久しぶりに聞かせてくれ」
「えぇ、勿論です。今日は旦那の紹介とその話をしに来ました。婚姻の儀は結び終えましたしね」
「……そうですね、では話しましょうか。
人型になっておきましょうか? 話し難いですし少々狭いですしね」
「そうしましょうか」
『ウムヴァン・トランス』
「ん? おぉ、スムーズに変身したな。
という事はリーズィの研究は完成したという事か」
「おっと、そうですね。龍王陛下が原型を作り簡易化して、更に老龍が手順を簡略化して完成しましたね。
とはいえ詠唱が必要なので、もう少し改善出来るとは言っていましたね」
「そうなのか? 最初にリーズィが見せて来た時は地面が抉れて空が捩れて、そりゃもうごちゃごちゃだったぞ?」
「そうらしいですよ? 老龍の皆さんはそう言ってましたし、龍王陛下も同意していましたし」
「ほーん、まぁいいや。
今日は取り敢えず聞かせて欲しいな、ヴァイスの旦那さんのかっこいい姿って物を」
「えぇ、さ貴方から話して下さい? 私は所々補足を挟みますから」
「…分かりました、では戦いの始まりから。
俺は搦手が得意で、同種の中でも卓越した実力を誇っていると自負していますが、今回の戦いでは搦手を全て捨てて真正面からの突撃だけを使いました」
「ほう? ブレスも魔法も無しで?」
「はい、飛び上がって加速しての突撃だけです」
「ほうほう、かっこいいじゃねぇか」
「………ありがとうございます」
「あら照れてますね」
「そうみたいだな、褒められ慣れてねぇんだなお前らって」
「……黒龍ですので」
「おん? 今日は初めましてだな。
どうした、そんな辛気臭い雰囲気出して」
「……うむ、一つ聞いても良いか?」
「いいぞ、事情がありそうだしな。言ってみな」
「ヤケ酒という物に付き合ってくれるか?」
「……あぁなるほど、お見合い敗北者か。
いいぞいいぞ!! 存分に付き合ってやるよ!!」
「あぁ、頼む。酒は取り敢えずあれだけあればいいのか? どれだけ持って来ればいいのか分からんので、取り敢えず家にあるだけ持って来たんだが」
「んー、まぁ充分じゃねぇかな? つってもお前がメインだぞ、浴びる様に酒飲んで、酔い潰れろよ。
リーズィが酔い潰れたんだから、お前だって酒で酔い潰れるだろ。それがヤケ酒って物だぞ」
「………そうさせて貰おう」
「あんな負け方をするとは思わなかった!!」
「くくく、そりゃお前らが想定してくる事を想定されるのを考えなかったからだよ」
「しかし、あんな無様な負け方。
俺はもう、俺が情けない! 父に顔向が出来ん!!」
「あぁ、そういやお前は一番最初に地面に叩きつけられたんだったか。そりゃもう災難だったな。
まぁ、彼奴は最初からお前を狙っていたらしいがな」
「しかしだな」
「終わった事を悔やんでんじゃねぇよ。お前さんが次代の龍王候補なんだろう? だったら次、そんな無様を晒さない様にどうするかだ」
「何?」
「お前は赤龍、圧倒的な力を振るう赤龍だろう。
そんなお前が、一番得意とするのは何だ?」
「俺が得意とする事………爪と牙による攻撃だけだ。
ブレスは父に敵わず、魔法は彼奴らよりも不出来だ。
この人型になる魔法とて、会得するのに三日も掛けてしまった。彼奴らは半日で会得したのに」
「そりゃもう仕方ねぇな。だったらお前はその得意とする事を伸すしかねぇな。
だってお前はそれで負けたんだから」
「そうだな.....」
「なぁ、俺はどうすればいい?」
「おん? あぁどう鍛えればいいって事か?」
「そうだ、俺はどうすればもう二度と無様を晒さないで済む? どうすれば絶対になれる?」
「知らんな」
「な!?」
「お前のことはお前が一番よく分かっているだろ。
お前はもう何が足りていないのか分かっているだろ。
だったらそこに他人の意見、特にお前らの様に絶対の力を持ってない俺に聞いてんじゃねぇよ」
「……だが」
「目を閉じて、頭の中で考えてみろ。
お前が考える絶対、お前が考える最優をさ」
「………………………あぁ」
「何が見えたよ」
「先代龍王、俺の、祖父の姿が」
「じゃあそれがお前の目指す先って訳だ」
「……あぁ、そのようだ」
「もう分かったみたいだな、じゃあ酒を飲むか」
「そうだな、飲もうか」
「こっからはヤケ酒じゃない、祝杯だな」
「シュクハイ? 何だそれは」
「祝いの杯、ようは新しい旅立ちを祝うんだよ。
ほら、お前が目指す先を見つけた祝いにだ」
「………そうだ、な。それじゃあ、祝杯だな」
「おう、それじゃあ酒の瓶を寄せてくれ」
「こうか?」
「乾杯」
「..あぁ、乾杯」
______________________
どうも作者です
主人公の呪い背負い兼龍王の盟友としての日常の一幕を少しだけピックアップ。
次の話は時間が数百年程経ちますので、経過した時間ではこんな感じに主人公とドラゴンたちは過ごしてたんだなって思って下さい。
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