龍峡外のドラゴンについて
「はい、こちらが服代わりの毛皮です」
「服代わりってか、服じゃね?」
「毛皮の管理をしている蒼龍たちに服の事を伝えたら、何故か興味を持ってこの形にしてくれました」
「なるほど、てかサイズぴったりじゃんすげぇ」
「初回の時に見て覚えていたとのことです」
昨日に続いて今日の相手もヴァイス。
今日は食事の代わりに昨日頼んだ毛皮、と言うかもはや服と呼べる物を持って来てくれた。
三つ穴が空いた物と二つ空いた物、毛皮をそのまま重ねて合わせただけの服と言える様なそうでない様な物である。
下着は要求してない為無いが、まぁ別にいい。
ささっと身につけて、ヴァイスとの話を再開する。
「さぁ、今日は何の話をしてくれる?」
「そうですねぇ、龍峡の外のドラゴンについて話しましょうか?」
「ほう、是非とも聞かせてくれ」
「では、いきますね。私もそこまで詳しいわけではありませんけど」
別にいい、少しでもいいから話が聞きたい。
龍峡がドラゴンの始まりというのは知っているが、外のドラゴンと別物というのは知らんのだ。
「龍峡のドラゴンというのは、純血なんです。
純粋にドラゴン同士で子を成し、高貴で高潔で完全な種族として成り立っているのです」
「確か生物であり自然であるんだったか?」
「そうです、そういう訳で龍峡のドラゴンというのは絶対的な力を持っているのです。
だからこそ基本的に龍峡から外に出ないのですが、たまにこの在り方を嫌うドラゴンが誕生するのです。
貴方に呪い背負いを押し付けた愚物もその内の一匹という事ですね」
「なるほど」
「とはいえ龍峡は龍王の力と共にある。それは即ち生存に必要なエネルギーを自然と取り込み続けられるという事になるのです。それ故に私たちにとって食事も睡眠も全てが娯楽に過ぎないのです」
「ほう、それは興味深いな」
「此処は後日にお話ししましょう。
それで龍峡から外に出るというのは、生存に必要な莫大なエネルギーを取り込み続けなければいけないという事なのです。生物を喰らい、自然を喰らい、そしてドラゴン以外の何かと子を成し、そして死ぬ。
それが龍峡より外に出たドラゴンの生態なのです」
「ほう、つまり龍峡の外のドラゴンはドラゴンでは無いという事だな?」
「はい、私たちと姿形能力が似ただけのトカゲ。或いは亜竜とでも呼ぶべきものでしょうか?
長寿でも無く、絶対の力も持ってない、それが龍峡の外で繁栄し続けるドラゴンの形をしたものなのです」
「なるほどなぁ」
リーズィとも話してて疑問だったが、ようやく納得がいったな。外にいるドラゴンはドラゴンじゃなかった。人間的に考えるなら龍峡のドラゴンは神に近しい存在であり、大地に生きるドラゴンとは別物という事になるな。
リーズィの翼を抉れる様な奴が若くて成長途中なんて言われてるのに、そんな奴らが外で好きな様に暴れてて人間どころか文明が発達するわけがねぇ。
うむ、ようやく納得が出来たな。
「という感じですね。
まぁ極稀に先祖返りとでも言いましょうか? 私たちを殺し得る亜竜が誕生します。
そう言った場合は大陸が傾いたり、堀が焦土に変わったりしますね」
「そんなのがいるのか?」
「居ますよ?
最近で言うとあれですね、大海の中で誕生した亜竜が同族を喰らい尽くした果てに龍峡を襲いに来ましたね。現龍王陛下が相対し、七日間戦い続けた果てにようやく死に絶えましたね」
「リーズィが相手で七日? バケモンじゃんそんなの、怖えな先祖帰り」
「龍峡で産まれていたら次代の龍王に成れていましたね。龍王陛下も思い出深いようで、今でも偶に噛みちぎった頭骨を眺めては思い起こしているみたいですよ?」
「まじ? そりゃあ面白そうだ、今度来た時に聞いてみるかな」
リーズィって戦闘が全く分からない俺でもヤバいって分かるくらいには強いのに、そんなリーズィの記憶に残る様なバケモンって凄い気になる。
と言うか頭骨って、多分加工も何もしてないマジで噛みちぎった頭蓋骨なんだろうな。やっぱスケールが違うよドラゴン。
「さて、今日はちょっと早いですけど帰りますね?」
「おん、興味深い話聞けたから充分よ。
ちなみになんか用事でも?」
「お見合いですね、龍王陛下からの沙汰なので断る訳にもいかないので受けてきます。
まぁ、そろそろ身を固めないといけないのでどの道お見合い祭りになりそうなんですが」
「ほーん、ちなみに幾つ?」
「私ですか? 一万ちょっと手前ですよ。
子供をそろそろ拵えないといけない年齢なんですよねぇ。なので暫くは来れないかもです」
「ほーん、まぁ頑張って」
「はい、それでは失礼しますね」
…………一万で子供拵えるって時間感覚どうなってんだ? いやリーズィが確か何十万数千歳って言ってたから若手といえば若手なんだろうけど。
やべぇなドラゴン、スケールがバグじゃん。
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