第6話 ICカードの中身
綾香嬢は道路わきの畑の中で突っ立っている。
二人の男に銃を向けられて無表情だった。
何を考えているのか読み取れない。
さらにもう一台の車がやって来て止まった。
三人の男が加わる。
襲撃者のうち俺に銃を向けている男が、伸びている男に視線を向けて口を開いた。
どうもこいつが一行のボスらしい。
「メチャクチャな野郎だぜ。やっぱりタダの書店員じゃなかったってわけだ。ホアンの野郎が寄ったのも偶然じゃなかったってことか。まあいい。アイツから受け取ったものを渡してもらおうか?」
「何のことか分からねえな」
ボスはチラリと綾香嬢の方を見る。
「あんたには9ミリじゃ力不足かもしれねえが、全弾食らって立っていられるかな? それにあっちのお嬢ちゃんはそうはいかないだろう? 綺麗なお顔を吹っ飛ばされたくなかったら、とぼけてないでカードをさっさと渡しな」
「クレジットカードは持たない主義なんだ。死んだ爺さんの遺言でね」
「とぼけるんじゃねえ。さっさとアンラッキー7を渡すんだ」
綾香嬢が声を出した。
「スグル。なんだかよく分からないわ。でも、もういいでしょ。渡しちゃって終わりにしてよ」
ボスは薄く笑う。
「ほら。お嬢ちゃんもああ言ってるぜ」
俺はパンパンになったズボンのポケットから苦労して財布を引き出した。
財布の中からICカードを取り出す。
「そう。それだ。こっちに投げろ」
俺はカードの端を指で弾いた。
くるくると回転して男から1メートルほどのところに落ちる。
ボスは油断なく銃を構えながらICカードを拾い上げ満足そうな顔をした。
俺はそいつに質問する。
「一つだけ教えてくれないか。こいつは何だ? アンラッキー7とか言っていたが。このままだと夜も眠れねえ。それを知るために世界の果てまで追いかけちまうかもしれないぜ」
ボスはICカードをしまうと鼻で笑った。
「そうだな。折角だから教えてやろうか。こいつの中には強力なコンピュータウイルスが格納されている。世の中のパスワードをすべて8桁の7に強制的に書き換えちまうのさ。どんなシステムでも入り放題ってわけさ。世界のゲームチェンジャーだよ」
「あんた達、間抜けな七人組のことかと思ったぜ」
俺の嫌味をスルーし、新たに加わった男達二人が地面に伸びている男を担いで車に運び込む。
ボスは綾香嬢側の二人に命令した。
「さて、そのお嬢さんは脱出するまでの人質になって貰おうか。そして、こちらのゴリラには……」
ボスを含む四人の腕が真っすぐ伸ばされる。
四丁のサプレッサー付きグロッグの銃口が俺に向けられ、銃声が響いた。
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