第14話
マズルフラッシュで周囲が白く染まる。
突然の発砲で、ウルカが即座に振り返りまひるを抱きしめて床に倒れた。
「吉田!?」
冬弥がナイフを抜くと、吉田は発砲をやめた。
「壁だ! 壁に擬態してる!」
吉田がそういうと、彼女が撃った北側の壁がどろりと溶けた。
「スライム!?」
「反応が微弱すぎてわかりにくかったけど、どうやら勘が冴えてたみたいだ」
ふっ、と銃口から立ち上る煙を吹き消す吉田。
「そ、それはいいですけど、このあとはどうするんですの!?」
「あちゃー、大きな反応が近づいてきてるよ」
「どうするんだいリーダー!? 逃げるか、それとも!」
「目的地は目と鼻の先だ! 戦おう!」
冬弥が叫ぶと、背後の棚が吹き飛んだ。
冬弥が振りかえるとそこには両腕に回転ノコギリを装着した木工加工用ロボットが、砂埃の向こうから姿をあらわした。
猫背気味の胴体部分から伸びる平たい鉄板をつけただけの二本足。胴体の上には、長方形の箱のような頭部が乗っている。
箱の前面には、赤外線センサの赤い光が怪し気に輝いていた。
「魔物じゃなくて機械か! 残念!」
「な、なにが残念ですの!?」
「冬弥くんは魔物を食べるんだよ!」
「マジですの!? ドン引きですわ!」
「うっ……思い出しただけで吐き気が……」
やいのやいのいわれながらも、冬弥は
ロボットが回転ノコギリを振り下ろしてくるも、冬弥はナイフで受け止める。
金属がこすれ合う音が鳴り響き、白と橙の火花が飛び散った。魔力で刀身を強化しているとはいえ、長時間削られるのは不味いと判断した冬弥は、手首を返して跳ね上げる。
木工加工用ロボットは殴りつけるように両腕を突き出してきたが、冬弥はナイフではじき返していく。
「もう一体も来ましたわ!」
「耐えてくれ! すぐにこっちを片づけていく!」
まだ距離があるからか、吉田のサブマシンガンが火を噴いた。
火薬が弾ける音と空薬きょうの転がる音が入り混じる。
そこへまひるの持つクロスボウの重々しい風切り音が加わって、まるでオーケストラのような一体感を生み出していた。
「射撃止めー! 距離を詰めて接近戦に持ち込みますわ!」
ウルカの合図で発砲を止めるまひると吉田。
三人は通路の奥から赤外線センサを光らせてやってきたもう一体の木材加工用ロボットに向かっていく。
「まてまてまて! 俺がやるから……うおっと!」
よそ見をしていると、回転ノコギリが胸の前を通過して学ランを切り裂いた。
後ろに飛びのいて確認したが、幸い体にダメージはない。
冬弥は再びロボットに向かって駆け出した。
両サイドから猛烈な勢いで回転するノコギリが迫ってくる。
冬弥はスライディングで躱し、ロボットの足の間を潜り抜け、背後に回り込む。
胴体部分を駆けあがり、長方形の頭部と胴体のつなぎ目部分にナイフを突き刺した。
つなぎ目には赤黒いぶよぶよしたものが詰まっており、びゅびゅ、と赤褐色の液体が漏れ出してくる。
これは機械の体に侵入したスライムだ。
冬弥は力任せにナイフを押し込み、メイン・コンピュータを搭載した頭部と回転ノコギリが接続された胴体を繋ぐ配線を切り裂く。
赤外線センサの光が消失し、木材加工用ロボットは両膝を床につけて沈黙した。
「みんな! ----うわ!?」
もう一体のロボットに向かおうとしたところで、謎の振動がホームセンターを揺らした。
床が崩壊をはじめ、どんどん崩れ落ちていく。
「うわ、揺れてるよ!?」
「床が崩れますわ! まひる!」
「まずい、崩落するぞ!」
まひる、ウルカ、吉田が、木材加工用ロボット共に床の下に落ちていく。
「みんなああああ!」
冬弥が彼女たちのもとへ駆け寄ろうとするも、荷物が重くて本来の速度が出せない。
やがて冬弥の足元も崩れ、奈落へと落ちていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます