第17話 明からに、デカくなってるよな……コレ


「明からに、デカくなってるよな……コレ」

「うん……」


 そう、うちのダンジョン、埋蔵金ダンジョンである。

 外からの見た目は、まるで大きな大きな木だ。

 しかし、それが毎日水をやることで、どんどん大きくなっている。

 いや、もはや最近は水をやり忘れていても大きくなっていっている。

 すでに、高層マンションくらいの大きさにまでなっていた。


「これいったいどこまで伸びるんだ……」


 さすがに、伸びすぎて怖くなってきた。

 これ、もしかしたらこのまま際限なく大きくなリ続けるんじゃないのか。

 ていうか、横幅も多少大きくなっているから、そのうち家にまで浸食してきそうな勢いだぞ。

 大木というより、世界樹みたいになってきている。


「これ、そろそろやばいよな……」

「うん、だね……。倒れてきちゃったら大変だし……」


 俺と美玖は大きな大木を、パジャマ姿で下から見上げながら、ため息をこぼす。

 倒れてこないでも、影がデカくなっていってて、日照の問題とかで、近所からそのうち苦情がきそうだ。


「これ、どうやったら止まるんだ……?」

「わかんないけど……もしかしたら、ダンジョンを攻略したら止まるのかも……? とりあえず、このダンジョンの一番上にいってみないとだめなんじゃない?」

「まあ、たぶんそうだよなぁ……」


 さすがに、上まで攻略したらなにか止める手段が見つかると信じたい。

 そうじゃないと、このままだと家がつぶれる。

 果ては、日本中がこの木で埋め尽くされる。


 まあ、ということもあって、俺はよりいっそうダンジョンを攻略しようと思った。

 ダンジョンの成長速度がはやいから、追いつけるかは微妙だけど。

 これは一刻もはやくダンジョンを攻略して、なにか手がかりをみつけないと。

 まだまだこの埋蔵金ダンジョンはわけのわからないことだらけだ。

 なにか新しく知るには、ダンジョンを攻略するしかないだろう。


 俺は、朝ごはんを食べて、さっそくダンジョンを攻略しに向かった。


あやめさん、おはようございます」

「お、おはよう……矢継早くん」

「俺今からダンジョンを攻略しにいくんですけど、いっしょにどうですか?」


 一人より、二人のほうが攻略も捗るかと思い、俺はあやめさんにも声をかける。

 しかし、アヤメさんは


「いえ、やめておくわ。私は一人で潜るから」

「そうですか……じゃあ……」


 あやめさんは少しつんけんした口調で、俺の誘いを断った。

 昨晩あれだけ酒を飲み交わし、意気投合したと思っていたから、てっきりいっしょに着いてくるかと思ったのだけれど。

 一晩明けて、あやめさんは出会ったときと同じような感じの、つんつんした態度に戻っていた。

 もしかして、ツンデレさんなのかな……?


 とりあえず、俺は一人でダンジョンに潜ることにした。



 ◇



【埋蔵金ダンジョン――F2】


 俺はさくっとダンジョンの第一階層を突破し、2層にきていた。

 なるべくなら、今日はまだまだ深くに行きたい。

 だから、ビーストモードもネメシスフィールドも温存してきた。


 幸い、まだ脅威となるモンスターとは出会っていないから大丈夫だ。

 ビーストモードが使えない代わりに、俺は瞬間移動を多用する戦法を覚えた。

 瞬間移動を多用すれば、相手の攻撃をよけつつ、ヒットアンドアウェイで、初心者の俺でもなんとか戦える。

 まあ、多少の時間はかかるがな。

 瞬間移動で近づき、近距離から射撃。

 そしてすぐに離脱。

 それを繰り返すのだ。

 武器を最新型のカスタムAKに変えたおかげで、火力もかなり上がっていた。

 おかげで、俺はゴブリンを何体か蹴散らすことができた。

 しかもビーストモードとネメシスフィールドは温存してだ。

 これはかなりの成長といってもいいだろう。


 そして2階層。

 俺は、ゴーレムと対峙していた。


「っく……」


 ゴーレムは初めて会った敵だ。

 身体が大きく、射撃をしても簡単に当たる。

 しかし、当たるだけで、射撃をしてもびくともしないのだ。

 これはなかなか骨が折れる相手になるぞ……。


「ゴゴゴゴゴゴゴ!!!!」

「っく……!」


 俺はゴーレムの攻撃を、瞬間移動で避ける。

 ゴーレムはその巨体にもかかわらず、かなり動きも素早い。

 巨大な岩の塊が、ものすごいスピードで距離をつめてくるものだから、なかなかに恐怖だ。

 俺はひっしに攻撃をよけつつ、射撃で牽制する。

 しかし、こちらの銃弾を消費するだけで、これといった決定打にはならない。


「くそ……今日で4層くらいには行きたかったんだけどな……」


 だってこのペースじゃ、とうていダンジョンの頂上までたどり着くには、時間がかかりすぎる。

 このままじゃ、俺がダンジョンの一番上にいくまでに、家がつぶされてしまうよ。

 俺はこれまで、ビーストモードを温存してきた。

 だが、ここでゴーレムさえたおせないではだめだろう。

 俺は、しかたなくビーストモードを使うことにした。

 なに、まだネメシスフィールドがあるから大丈夫だろう。


「うおおおおおおおおおお!!!! ビーストモード!!!!」


 俺はビーストモードを発動させる。


「ゴゴゴゴゴゴゴ!!!!」


 ゴーレムの攻撃!

 俺はそれを瞬間移動で避ける。

 攻撃のあとに、一瞬の隙ができる。

 俺はそれを見逃さない。

 俺は瞬間移動で、ゴーレムの後ろ側に移動する。

 そして、ゴーレムのうなじの部分めがけて、思い切りパンチした!!!!


 ――ズドーン!!!!


 俺のビーストモードでの全力パンチは、ゴーレムの肉体を貫通。

 ゴーレムはその場に倒れた。


 ――ドシーン!!!!


「やった……!!!!」


 ゴーレムから剥ぎ取り――


 って、


「これ、どこはぎとればいいんだ……?」


 ゴーレムは、ほぼただのでかい岩の塊だった。


 俺がゴーレムの扱いに、手をやいていると――。


 遠くのほうから、なにやら声がきこえてきた。



「きゃああああああああああああああ!!!!」


 この声は……!!!!?


あやめさん……!?」

 

 俺は声のする方へ、急いで走っていった。

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