第9話 ゴブリン


 ダンジョンの中に入る。


【埋蔵金ダンジョン――F1】


 ダンジョンに入ったとたん、俺の肉体が以前とは違うことに気づく。

 なんだか以前よりも、身体が軽い。

 さっきまでよりも身体能力が向上しているような気がする。

 どういうことだ。

 試しに俺は自分のステータスを確認してみることにする。


「ステータスオープン!」


 すると、そこにはレベル25と記されていた。


「あれ……? 俺、いつの間にレベルアップしてたんだ?」


 どうやら俺はレベルアップしていたらしい。

 この前チュートリアルで倒したスライムのせいだろうか。

 それにしても、スライムを一匹倒しただけでこんなにもレベルが上がるものだろうか。

 ちょっと不思議な気もする。

 まあ、これも埋蔵金ダンジョンによる、先祖からのプレゼントの一部なのかもしれないと納得する。

 スキルだって、なにもせずにもらえたわけだしな。

 快適なスタートダッシュを決めるために、レベルをおまけしてもらえたのかもしれない。


 ダンジョンの中は、外観とは違っていて、まったく別の空間に飛ばされたような感じになっている。

 この第一階層は、草原のようなエリアが、延々と広がっている。

 おそらく、ダンジョンの外観とはまったく別の空間に、ポータルで飛ばされているのだろう。

 ダンジョンの中のことはまだまだ謎だらけで、学会でも意見が割れているそうだ。

 ダンジョンの次の階層に進むには、その階層のどこかにあるポータルをみつければいいらしい。

 一部の階層では、エリアボスがポータルをまもっていることもあるんだとか。

 ダンジョンに疎い俺でも、このくらいは一般常識として知っている。


「とりあえず、ポータルを探すか」


 ポータルを探して、あてもなく歩いてみる。

 途中でモンスターに出くわしたら、倒してみよう。

 モンスターを倒すのはいい金になる。

 しばらく歩いていると、ゴブリンの一団に出くわした。


「おっと、さっそく接敵だな……」


 ゴブリンはざっと見た感じで15対ほどいる。

 やつらは俺をみつけると、扇形にフォーメーションをつくって対峙してきた。

 ゴブリンはそれぞれ、ナイフや石斧、弓などの武器を手にもっている。

 俺はさっそく弱点調査のスキルをつかった。


「弱点調査……!」


 すると、ゴブリンの額の部分が赤くハイライト表示される。


「そこか……!」


 俺はさっそく、MP5を手に取り、ゴブリンに向けて射撃。

 ――ダダダダダダダダ!!!!

 しかし、ゴブリンによけられ、肩の部分に当たる。

 一応、ゴブリンの肩から出血し、ダメージは入っているようだった。


「ゴブゴブ……!」


 今度はゴブリンたちが俺を一斉にとりかこんで、襲ってくる。

 四方をゴブリンに囲まれ、間一髪。

 俺は転移スキルでその場を逃れた。


「はぁ……はぁ……」


 死ぬかと思った……。

 とりあえず、ゴブリンたちから離れた場所に転移してきた。

 さすがにあの数は大変だな……。

 いったん戦線離脱だ。


 作戦をたてよう。

 さすがにあの数はやばい。

 こうなったら、スキルをつかうしかない。

 ビーストモードとネメシスフィールドは、一日に一回が限度だ。

 だからなるべくつかわないで攻略したかった。

 だけど、そうも言ってられないな。


「よし、ネメシスフィールドで時間を止めているあいだに、ゴブリンの頭蓋を打ち抜く……!」


 俺は弾をリロードした。

 覚悟をきめて、再びゴブリンたちのもとへ。


「うおおおおおお!!!! ネメシスフィールド発動!」


 先手必勝だ。

 転移で目の前に現れて、接敵と同時に、ネメシスフィールドを発動させる。

 これでゴブリンたちの動きがもっさりになった。

 そこをすかさず、俺はゆっくりと狙いを定めて額を撃っていく。

 ――ダダ。ダダ。ダダ。

 指切りをして、精度を高める。

 つぎつぎとゴブリンをやっつける。


「よし……!」


 そうこうしているうちに、ネメシスフィールドの効果が切れた。

 だが、まだゴブリンは一体残っている。


「死ね……!」


 俺はゴブリンに向けてサブマシンガンを連射する。

 ――ダダダダ!

 しかし、残ったゴブリンは優秀な個体だったようで、避けられてしまう。


「なに……!?」


 ゴブリンはナイフを片手に、俺に突っ込んできた。

 っく……どうする?

 また避けるか……?

 いや――。


「ビーストモード!」


 俺はビーストモードを発動させた。

 そして、突っ込んできたゴブリンの頭をわしづかみにして受け止める。


「ゴブ……!?」


 そしてそのまま、力任せにゴブリンの頭蓋を手で握りつぶした。

 ――グチャァ!!!!


「はぁ……はぁ……」


 なんとかゴブリンを全部倒すことができたな。

 ようし、次は剥ぎ取りだ。

 本屋で買ってきた剝ぎ取り辞典を、アイテムボックスから取り出す。

 剝ぎ取り辞典には、どんなモンスターのどこをはぎとればいいのかが書かれていた。

 ゴブリンの場合は、耳や鼻をはぎとればいいらしい。


「よし……これでいいかな」


 魔石を拾うのも忘れずに。

 それにしても、ゴブリンなんていう下級モンスターにかなり苦戦してしまったなぁ。

 もっと楽にいけると思ってたんだが。

 やはりけっこうダンジョンは厳しい世界のようだ。

 俺のような初心者が、よくやってるほうだと思う。

 ダンジョン妖精は初心者向けのダンジョンだとかって言ってたよな。

 まあ、実際俺でもこうやってやれてるんだから、そうなのかもな。


「さて、一度戻るか……」


 ネメシスフィールドも、ビーストモードもつかってしまった。

 このままでは、さらなる強敵が現れたときに対応できないだろう。

 俺はいちど家に戻って、日をあらためることにした。

 ゴブリン戦はなかなかにハラハラするものだったから、これで取れ高は十分だろう。

 一度今日録画したものを編集して、動画サイトにアップしよう。

 これでなんとかうちのダンジョンの知名度があがってくれればいいのだが……。


 俺は家に戻り、美玖と動画を編集して動画サイトにアップロードした。


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