「嘘をつかない人間」

　このお題が「正直者の人間」なら幾らでも居たであろう。だが「嘘をつかない人間」等この世に存在しない。そしてそれを優秀な悪魔は見つけなければならない事に絶望した。

　優秀な悪魔は知っている。

　人間は自分の私利私欲の為に嘘をつくことを。

　優秀な悪魔は知っている。

　人間は自分を守るために嘘をつく。

　自分自身に嘘をつき、気持ちに蓋をしてやり過ごす。

　優秀な悪魔は知っている。

　人間は感情に嘘をつく。嫌いなのに好きだと言い、泣きたいのに笑う。

　人間は嘘をつく。

　他人に嘘をつき、自分に嘘をつき、感情に嘘をつく。悪意も善意も憎しみも優しさも含めた嘘をつく。

　それは時に、悪魔にさえ嘘をつき騙してくる。

　優秀な悪魔はそんな人間に嘘をつかれ騙された悪魔を何体も見てきている。

　そんな嘘をつく人間の中から、嘘をつかない人間を借りてくる等、答えの存在しないお題には答えられないのだった。

そして、そんなお題を出してくるあたり、流石悪魔だと周囲で嘲笑っている仲間達を軽蔑の眼で見るのであった。

　了

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