悪魔の借り物競走

ろくろわ

悪魔のお題は如何に


 位置につく前に走り出すのが悪魔の運動会。


 ルールは契約の範囲内であればでも解釈される。リレーなら次の悪魔にバトンさえ繋げればよい。二人三脚なら足さえ縛っていれば良い。綱引きなら綱さえ引いていれば良い。

 だから、空を飛ぼうが相手を妨害しようが裏切って相手チームに入ろうが何をしようと構わない。


 だって相手を騙してこその悪魔なんだから。


 そんな悪魔に人気の競技が借り物競走だ。

 お題に一番あったものを持ってくるだけのルール。

如何にお題に合ったモノを持ってこれるか、悪魔の品格を問われる競技である。


 午後一番の種目。

 例のごとく、誰もスタートの合図など守らず競技が始まる。

 既にお題の入った箱の回りには悪魔が群がっており、早い悪魔はお題を引き当てて人間界へ向かっている奴もいた。


 さてそんな中、一際ひときわ大きな悪魔がお題の書かれている箱の中へと手を伸ばした。何度も人間界へと出向き、言葉巧みに多くの人を惑わし騙してきた優秀な彼にはどんなお題がだろうと答える自信があった。

 そして彼は一枚の指令書を引き当てる。

 その瞬間、優秀な悪魔の表情が大きく歪んだ。


 彼が引いた指示書にはこう記されていた。


「嘘をつかない人間」


 優秀な悪魔が困り果てる様子に、多くの悪魔達が嘲笑あざわらい騒ぎ立てていた。



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