呂宋沖殲滅作戦
呂宋沖殲滅戦・足踏み
「な、なんだこの艦隊の数は?!」
チャック・イェーガーは眼下にそびえる敵艦隊の数に思わず天を仰いだ。それは、明らかに
「間違いねえ、隊長!!」
「あ、ああ。行くぞ!!」
確かに、眼前の艦隊を撃沈すればおそらく敵国は再起不能になるはずだからだ。
一方で、「敵国」こと
「殿下、来ます!」
「ああ、構わんさ。覚悟はできている。それより、撒き餌の回収は済んだか?」
「ははっ、前衛艦隊旗艦「超甲巡」を初め総員轟沈艦なし!」
「よし来た!!」
一方、「
「……全く、こんなことのために
「はい、各部署ともに無事、喪失艦皆無!本艦に至っては傷一つついていません!」
「さすがに雪風のほかに佐世保の時雨まで投入したら、そうなるか。
それでは、転進!!」
超甲巡、正式名称は超大型甲巡洋艦。つまりは、非常に大型の重巡洋艦のことなのだが、本来ミッドウェー海戦の結果によって計画が中断されたはずのこの艦艇は、秘密裡にある筋より急遽再設計の指示が出されて戦場に投入された。それは想定された役割である水雷艦隊の指揮のための艦ではなく、最新式の電探や水中探を初めとした数々の最新技術が詰まった、大艦隊の総指揮を専門とする艦艇となっていた。
無論、身を守るための武装はきちんと装備されていたが、それとて対空砲が主であり、砲撃能力に関しては速射機能を持つ単装砲が数基備えられているだけであった。それは、対空巡などの装備を揃えることが国力の関係上困難である大日本帝国なりの答えであった。さすがに敵側が艦艇に搭載するような電子計算機などを搭載はしていないものの、高信頼性通信機能などの完備や専門の演算員の存在などによりこの時期合衆国などが開発している初期型の電子計算機を上回る能力を備えていた。
ただしそれは、この巡洋艦がほかの艦艇で替えの効かない代物とも言え、同時にその事実は大日本帝国の限界を示してもいた。
そして、超甲巡が引き払い始めて合衆国軍機が飛来し始めた。雲霞の如く襲い来る攻撃部隊、一見、命運は尽きたかに見えた。だが……。
「どうだ、航空隊の様子は」
「はっ、士気は旺盛のようです。開きっぱなしの無線からも、特に誰それがやられたという声は聞こえておらず、想定通り墜落した機体はいないと思われます。ですが……」
「ん? どうした。何なりと言って見なさい」
……なんと、雲霞の如く襲いかかった敵機を、迎撃部隊は捌ききった! この時点で、それだけでも合衆国軍にとっては脅威的な結果にも拘わらず、更に彼達は戦果を拡大しようと試みた。つまりは、敵艦隊の制空権を奪取する部隊に加わろうとしたのだ。
「……とのことで御座います。さすがに、止めた方が宜しいでしょうか」
さすがに、止めた方がいいのではないか。それは高松宮の作戦を素直に受け止めている者の感想であった。だが、眼前の宮様将校は、高松宮よりも戦を知っており、故にこう指示した。
「何、戦は機も大事、水物ならば構うまい」
「し、しかし……」
「念のため、高松宮の事前指令には従うように、「無線で」伝えてやれ」
一応、事前指令に従うように「無線で」伝えよと言った、その訳とは。様々な理由が考えられるが、第一に無線が生きていることを伝えることは、次のような効果を期待していた。
「は……ははっ!!」
「……こちら大和司令部……、全迎撃機に告ぐ、追撃は一定の範囲内でのみ許可する……、深追いを禁ずる……」
多少、
「なっ、む、無線が生きてやがったか?!
こちら菅野直、追撃の追認許可ありがたし、指定区域には近づかないよう厳守する!
行くぞ、手前等!!」
……デストロイヤーの異名を持つ彼が、「制空部隊」ではなく「迎撃部隊」に回されていることに疑念を持つ方もいらっしゃるかも知れない。だが、その謎はもうすぐ解ける。
「「「ははっ!!」」」
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