内南洋伏撃作戦
第二次マリアナ沖海戦(前)
昭和十九年六月、カルカッタやポート・モレスビーを始め主要な拠点が大日本帝国の手に帰したことによって間に挟まれた数十万もの連合軍は
一方の連合軍は焦燥に駆られた。無理もない、まさか蛙飛び作戦を補給が稚拙なはずの敵に真似されるとは思っていなかったこともあって、急ぎ補給手段の回復と共に逆撃の作戦を練り直すこととした。だが、それこそが高松宮の罠であった。高松宮が二ヶ月じっくりと練り上げた防衛戦略は、まず「負けない」こと、そして同じ負けるにしても「善く負ける」ことを作戦の骨子とした攻勢作戦などに比して派手さに欠けるものであったが、故に非常に堅牢なものであった。
……斯くて、昭和十九年七月十八日、今度は主導権が高松宮に存在したままのマリアナ沖に
その、作戦結果は次回に纏めるとして、今回は科白が存在しない都合上締めとして高松宮が防衛戦略を説明する際に使った発言を引用して終わることとしたい。
「とにかく寄せ来る敵をすべて叩き潰すことしか考えていなかった。いくら蛆のごとく沸いて出る敵とはいえ無限ではない。
ならばとにかく敵を敲いて、殺いで、ひたすら擂り潰して、怯んだところに和議を申し込む。
その和議が決裂した場合は、一合戦やって敵に力を見せ付ける。幸いにも先達が資源地帯だけは確保してくれたのでその気になれば五年かそこらは戦えるはずだ。
元来、城とは最も防御力の高い地形、そして篭城戦とは最も敵に出血を強いる戦だ。後詰めがない篭城戦は死に戦だが、敵だってこちらに全兵力を貼り付けているわけじゃない。
ドイツが降伏するまでは只管防戦に努める。そして愈々ドイツが降伏するかといったところで致命的な一撃を放つ。
そしてドイツの降伏を急ぎたい連合国に対して、講和会議、せめて停戦だけは結びつける。
とにかく負けないこと、それのみを主軸においた。水際作戦や玉砕など以ての外。
物資は海軍が責任を持って運び、制海権は必ず固持する。陸軍の皆さんには力の限り、敵に出血を強いて耐えて篭もって只管嫌がらせをして欲しいと思った次第」
……すなわち、高松宮の意図はとにかく内南洋や南ビルマといった「内線作戦」に拘ったことだ。つまり内線まで敵を誘い出し、勝手知ったる場所で伏撃し、ぎったんぎったんに叩きのめして決して生かして帰さない。かくして、ニューギニア中部とビルマ北部の連合軍は先程述べたとおりまさかの補給途絶、飢餓状態に陥った。
救援のため急ぎ作戦を練る連合軍。まずはニューギニア(というより、モレスビー)を救い出すため合衆国軍が動いた。
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