第5話


 坂道を下って、バスに乗って。


 通りすぎたはずの景色を追いながら、また、夏が来る。


 きっとそれは偶然じゃないかとさえ思う。


 明日どうなるかなんてわからない。


 …だから、今日がまた、知らない空の向こうでやってくるんじゃないのか?って、性懲りも無く。



 「次は、岩崎病院、岩崎病院です」



 私にはミッションがある。


 ミッションと言うとへんに聞こえてしまうかもしれないが、過去に戻ってきたのには「理由」があるんだ。


 本当は、こんなことするべきじゃないのかもしれない。


 “何しに戻ってきたんだ”って、怒られるかも。


 だけどもうどうしたって、立ち止まれない。


 立ち止まっちゃいけない。


 そう思う自分がここにいて、神戸市内の喧騒がすぐそばまでやってくる。



 本音を言うとさ、ここに来るとき迷ったんだ。


 結局何も変えられないんじゃないのかって。


 簡単じゃないことはわかってた。


 多分、もう間に合わないかもしれないこと。


 “同じ時間にはいられない“こと。


 だけど、何もしないよりはマシだって思えた。


 もしもまだ変えられる未来があるなら、どうにかしてそこに辿り着きたいと思った。


 だってずるいんだ。


 アイツは。


 私に相談もしないで、勝手に突っ走って。


 …いい迷惑だよ、ほんと。


 人の気なんて知りもしないで、“世界を救ってやる”って、ただそれだけでさ?

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