第7話 寂しがり屋のピアレイ
「これは……ほっとけませんねぇ」
シエルがそう言うと、ウンディーネはガシッとシエルの手を取った。
「本当!?ありがとう!私はマリーっていうの!親友の名前はララ。さっそくピアレイの住みかに向かいましょう!」
マリーはシエルとカナリーの手を取り湖の中に潜ろうとした。
しかし……
『ちょっと待った!!私、泳げないの!!』
シエルとカナリーは同時にそう言った。
3人は目をパチパチとさせた。
「え、シエルさん泳げないんですか!?」
「それはこっちのセリフだよぉ!!カナリーさんも泳げないのぉ!?」
「えぇ?2人とも泳げないの?」
これは困った……と頭を抱えたシエルとカナリーだったが、マリーがある提案をした。
「1人だけなら、私、水中でも呼吸できる魔法をかけてあげられるわ」
「1人だけ……なら、シエルさんが行ってください」
「え?私?」
カナリーは頷く。そして、何やら呪文を唱えたと思ったら、魔方陣から鳥が何羽か召喚される。
マリーとシエルは首を傾げた。
「オナガカモ、そして潜水が得意なカイツブリとキンクロハジロ、鵜です。もし何かあったらこの子達を使ってください。シエルさんは妖精だから、動物と意志疎通できる魔法が使えますよね」
カナリーがそう言うと、シエルは「……わかった」と頷き、マリーに水中でも呼吸ができる魔法をかけてもらい湖へと潜った。
マリーと一緒にピアレイの住みかを向かうシエルは、水の精霊ピアレイ族の特徴について情報を整理していた。
「水の精霊ピアレイ族……半人半獣の見た目で基本的に単独行動。しかし、寂しがり屋の一面を持ち、孤独に耐えられなくなると、通りかかった人を水の中に引き込んだりする……中々めんどくさい性格をしてますねぇ」
「あ!見えてきたわ、アレがピアレイの住みかよ!」
マリーが指さした先には、岩と水草で出来た家があった。
さっそくマリーは岩の扉をノックした。
「お願いします、この扉を開けてください!私の話を聞いて欲しいんです!!」
扉が開く気配はなく、無反応である。
どうするべきか……と悩むシエルの側に小魚が寄ってきた。
『どうしたの?ここに住んでる精霊さんに用事?』
「そうなの~……でもこちらの呼び掛けに無反応だから困っちゃった……」
『ボクが何とかしてあげようか?』
「何とかできるの?」
『できるよ!!ちょっと待ってて!』
小魚は岩と岩の小さな隙間を通り、ピアレイの住みかに入る込むことが出来た。
しばらく待っていると、岩の扉が開き、姿を現したのは……
「え、ララ!?」
マリーの親友、ララである。
「マリー!!お願い、あの人を何とかして!」
マリーとシエルはララの案内でピアレイの家に入り、奥に向かう。
薄暗い部屋、そこにはうずくまる人物が1人。
手足は鋭い爪にモフモフとした毛に覆われ、ふさふさの尻尾……それ以外は人間と同じ姿。ピアレイで間違いないだろう。
ピアレイは泣いていた。
「うぅ……うぇえ……」
「え~っと……これは……」
シエルがそう言ってララを見るが、首を横に振られた。
「私、ここにいきなり連れてこられて、しばらく気を失ったんだけど……目を覚めてからはあの子、ずっとこんな感じで……」
シエルは泣いているピアレイの側に近づいた。
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