第8話 上を向いて鳥を見て

シエルは泣いているピアレイの側に近づいた。


「どうして泣いているのかな~?」

「う、うぅうぇえ……」

ピアレイはまだ下を向いて泣いている。


「私が、何が目的で連れてきたのかとか、何で泣いているのか聞いてもずっと下を向いて泣いているんですよ……」

ララは困ったようにそう言った。


シエルはしばし悩んだのち、ピアレイにこう声をかける。


「あぁ~!!上を見て!!」


シエル以外の全員がバッと上を見た。


すかさずシエルはピアレイの頬を手で包んだ。


「や~っと顔を上げてくれたね~」


ピアレイはダバダバと涙を流した。

「う、うぇえ!!み、見ないでください!こんな、こんな醜い私なんてぇえ!!」

そんな風にピアレイは言うが、手足を覆うモフモフとした毛は綺麗なクリーム色だし、髪はサラサラの銀髪。瞳は綺麗な水色だ。

「醜い要素は何一つないと思うよ~?」

シエルはそう言うが、ピアレイはブンブンと首を横に降る。

「うぅ……わ、私なんて……1人で過ごすのが好きなのに、時々、無償に寂しくなってこの湖を通りかかった人を拐ったりしても……結局、何を話したらいいのかわかんなくて……うぇえ~泣くしかできない~!!私のばかぁ!!バカバカ~!!」

ピアレイはぽかぽかと自分の頭を叩く。


「なるほど、なるほど~。話はわかった~」

シエルは頷く。そしてこう言う。


「アナタは今~自己嫌悪のぐるぐるループに囚われていますね~。まず~上を向きましょう~!そして、前向きなろ~う!さぁ!マリーさんとララさん!彼女を褒めまくる準備をしてくださ~い!」

いきなり話をふられたマリー達は目を丸くした。

「わ、私達がやるんですか!?」

シエルは「そうですよ~」とにこやかに言った。

「そして~ピアレイさん、思ってること、この際~全部吐き出しましょう~!!スッキリするまで!!大丈夫~私が全部受け止めますから~!!」


数時間後……


「もう……言いたいことは全部吐き出しました……」

そう言うピアレイはもう泣いてなかった。


マリーとララは「疲れたー」と言って床に座り込んだ。


「スッキリしましたか~ピアレイさん?」

シエルがそう聞けば、ピアレイは首を縦に振った。

「その……喋ったらすごく気が楽になりました……!あの、長時間……私の話を聞いてくれてありがとうございました。それと、ウンディーネさん達、その……たくさん、私のことを褒めてくれてありがとうございました……!何だか心が晴れやかです」

「それなら良かった。ここであったのも何かの縁だし、私達、時々会いに来るよ。ね、ララ?」

マリーがそう聞けば、ララも力強く頷いた。


「そうだ~もう1人、私の可愛い後輩ちゃんからもアドバイスをもらいに行きましょ~!」

シエルはそう言ってピアレイの手を取った。





ザバァアと湖から姿を現した、シエル、マリー、ララ、ピアレイ。

カナリーはカモ達と戯れていた。

「あ!シエルさん!マリーさん!良かった~お友達、無事だったんですね!」


シエルはこれまでのあらましをカナリーに説明し、ピアレイに何かアドバイスがないか聞いた。


「そうですね……ここ、公園ですし、鳥を見てほしいですね!!」

カナリーがそう言うとピアレイは首を傾げる。

「鳥……?」

「はい!カモにカラスにスズメにハト!!他にもハクセキレイにヒヨドリ、シジュウカラ……是非とも、いろんな鳥達の鳴き声に耳を傾けてみて下さい!きっと心が安らぐと思います!!」

カナリーが今こうやって喋っている最中も鳥達は鳴いて飛んでいる。


「確かに……なんだか鳥の声っていいですね……」

ピアレイの表情はとても穏やかだった。





マリー、ララ、ピアレイと別れ、シエルとカナリーは夕日で橙色に染まった空を見ながら帰っていた。

「せっかくの休日を潰すことになっちゃってごめんねぇ……」

「いえ!!とっても充実した休日でした!」

カナリーが元気いっぱいにそう答えればシエルはクスクス笑った。

「それなら良かった~。では、明日の仕事もその調子で頑張って下さいね~!」

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