第12話 ハウステンボスデート


進は、奥さんと遅い朝食を取り、スーツに着替えて車で家を出た。待ち合せの午後3時まではまだ少し時間があったので、24時間営業のスーパーの駐車場の端に車をとめて、少し仮眠をとった。その駐車場に芽衣子の車を置いて行く予定であったが、芽衣子は、約束の時間よりも20分ほど遅れてやって来た。


――若い、可愛すぎる。どうしてあれで二人の子持ちなんだ。


  芽衣子は、先日のソパンでの日常の格好とはうって変わって、まばゆいばかりの格好で若さだけではなく、エレガントに現れた。進は、緊張してしまいそうになるのをこらえながら懸命に


「こんにちは、今日はいちだんと綺麗ですね」


とジャブを出した。


「あっ、はははは、何言ってるんですか、多摩野さん。私は、いつも綺麗ですよ」


芽衣子も何時ものようにジャブを返してきた。


――やった、リアスト通り行けそうだぞ。


「子どもさんたち大丈夫でしたか」


「はい、午前中のうちに元旦那に渡してきました。ほんとは、毎回あんまり気が進まないんだけど、今日は、しょうがありませんね」


――そうか、それからこんなに仕上げできたんだな。ぼく相手でもまんざらでもないのかもしれないなぁ。いや億円の力かな?


 芽衣子は、進の車に同乗し、ハウステンボスへと向かった。

進には、半身マヒがあったがオートマチック車の運転には何不自由なかった。車の中では、今日の子どもたちの様子や別れ際、兄のゆうやが少し悲しそうにしていたという話などをした。



  ハウステンボスの駐車場に着いた二人はホテルラムステルダムが園内にあるため、一応園内に入るパスポートをそれぞれの分購入し、中に入った。進の身体障害者手帳を使えば二人共、多少の割引きがあることを進は知っていたが、今日は、あえてそれをせずリアストに書いたストーリーに沿って進めた。


ハウステンボスは、バブル期に入る前にここ西海の地に長期滞在も可能なテーマパークということでオランダの街並みを再現している。入国ゲートをくぐるとそこから先は、まるでオランダのようだ。進は右手で杖をついて歩き、芽衣子がホテルの場所を地図で確認しながら並んで歩いた。ホテルラムステルダムまでは入園してからやや長い距離があったが芽衣子は文句一つ言わず、進のゆっくりとした歩きに合わせた。そして時折、左足がひっかかり倒れそうになる進を常に気遣っていた。


――こんな細かいところまではリアストに書いてないが、芽衣子さん、優しくてあったかいなぁ。惚れるなぁ。いや既に惚れてるからこんなことをしているんだった。


 進は、引っかかって芽衣子に支えられる度に「すみません、すみません」と言いながら歩いた。芽衣子と二人で緊張していることもあってかレンガ道は、進の足をいつもり余計につまずかせた。

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